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第4話 古龍ディフィド

ドオオオオオオオオオオオオオオオン!

「な、なんだ!?地震か!?」

突然の轟音と衝撃で、寝ていた俺の体が地面から浮き上がった。


グオオオオオオオオオオオオオオオ!

すさまじいうなり声で、木々が。

大地が、震える。

おかげで、一瞬で目が覚めてしまった。

「うるせえぞ!俺の眠りを邪魔する奴は誰だ!」

俺は音のした方向に怒鳴り返す。

全く、天使とやらが夜中に来たせいで、こっちは寝不足だっていうのに。

その犯人を目視すべく、俺は音がした方向に顔を向ける。


目の前に、巨大なドラゴンがいた。

俺と目が合う。


グオオオオオオオオオオオオオオオ!

もう一度吠えると、なぜか俺を放り出して遠くへ飛んで行った。

昨日の夜に引き続き、羽の生えた存在にたたき起こされた様だ。

天使の次はドラゴンか。

千客万来だな。


―様子がおかしいぞ。

まるで、何かと戦っているような・・・

俺は野営していた場所から、街道に出る。

―崖が無いぞ?

昨日は確かにあったのに。

あの龍が吹き飛ばしたのか。


「….う…う….」

足元からうめき声がした。

「今度は何だ?」

どうやら、人間らしいな。

俺は急いで積み重なっている石を退けた。

「せ、聖女マリサ!?」

酷い怪我をしている。

至る所から出血し、既に顔にも正気が無い。

と言うか、おそらく医者の力では、もう・・・

「あなた様は・・・、昨日の・・・。」

マリサは弱弱しい声で、目を見開く。

「あれは・・・地底の龍ディフィドです・・・!神に与するものを、好んで殺すと・・・伝えられて・・・います。・・・おそらく・・・狙いは・・・わたし・・・。」

「いや、もう喋らない方がいい。傷口が開くぞ!」

「いえ・・・見ての通り、わたしは・・・致命傷です。どんな回復魔法でも、もう手遅れ・・・あなただけでも・・・早く・・・逃げて!!」

「何言ってるんだ。そんな薄情なことが出来るか!」


言いながら、ふと、思いつく。

―早速だけど、あれを使ってみるか。

俺は天使の魔導書を開く。


白紙だった魔導書に。

「文字が、浮かび上がった・・・!?」

見たことが無い文字だ。

だが。

「何故か知らないが・・・この文字、読めるぞ!」

頭の中に、唱えるべき呪文が入ってくる。

≪この者の傷を癒し、身体を元の状態に回復せよ!≫

マリサに向かって手をかざす。

『完全治癒!』


まばゆい光が、マリサを包み込んだ。

見る見るうちに傷口がふさがり、顔色に正気が戻ってくる。

「・・・あ、あれ?わたし・・・動ける?」

「まだ痛むか?」

「い、いえ。全然。・・・え?どう言うことですか!?わたし、回復魔法を使ったとしても、助からない重症だったはず・・・?」

自分に起きたことが信じられないのか、辺りをきょろきょろと見回す。

そう言えば、天使と言うからには、この聖女様は何か知っているかもしれない。

・・・だが、どうやらそれは、後回しになりそうだ。

グオオオオオオオオオオオオオオオ!

―戻って来たか。


「ところで、護衛がついていたと思うんだけど、そいつらはどこ行った?」

「古龍に襲われるまでは一緒だったのですが、いつの間にか、姿が見えなくなってしまいました。」

「さては、マリサを囮にして逃げたな。」

つくづくとんでもない奴らだ。


「気を付けてください。あの古龍には、物理魔法も含めて、通常の攻撃は通用しません。」

「物理魔法?」

「通常の攻撃だけでなく、魔法で炎や水、風などを作り出しても同じと言う意味です。」

―なるほどな。


「ま、何とかして見せるさ!」

俺は古龍に向き合う。

「なあデカいの、マリサの回復を待っていてくれてありがとな。今度は俺が相手だ!」

再び魔導書を開く。

天使リエラ曰く、慣れてくれば自在に魔法が使えるらしいが、今は攻撃さえできれば何でもいい。

先ほどとは別の、とげとげしい文字が並び、頭の中に入ってきた呪文を唱える。

≪我に力を。仇なす物に、魔力の鉄槌を!≫


古龍に向け、手をかざす。

『魔力・・・収束!』

ゴオオオオオオオオ!

巨大な水色の光の束が現れ、古龍を直撃した。

ガオオオオオオオオオオオオオ!


古龍が吠え、動きが激しくなる。

「これは・・・?」

「効いています!あの古龍相手に!」

マリサが驚いているようだ。


グオオオオオオオオ!

古龍の口元が光る。

詠唱は間に合わない。

「伏せて!」

マリサを地面に押し倒してかばう。

―しゃあない。一撃食らって後で自分を回復するか!

グワアアアアアア!

「・・・攻撃が来ない?外した?」

空一面に半透明の幕が広がっている。

古龍のブレスはその外側を伝って消えてしまったようだ。


「なんだこれは?」

良くわからないが、やるべきことは一つ。

―隙あり!

『魔力収束!』

ゴオオオオオオオオ!

再び水色の光の筋が、古龍を撃ちぬく。

ガオオオオオオオオオオオオオ!

古龍は苦しそうにのた打ち回っている。


「古龍相手に、攻撃が効いている・・・?これは一体何なのですか?」

横で見ているマリサは驚いているようだ。

「あれは、魔力その物を撃ち込んでいるんだ・・・と、俺は思う。」

原理は良くわからないが、仕組みは詠唱した時に頭に流れ込んできた。

とにかく、アレは倒せそうだ。

「さあ、次でとどめだ!」

体勢を立て直そうとしている古龍に向け。

『魔力収束!』

ゴオオオオオオオオオオオオオオオ!

ひときわ太い魔力の束が、古龍の全身を貫き、砕いていく。

ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!

断末魔を響かせ。

ドオオオオオオオオオオオオオン!


ついに古龍は倒れた。



「やっと倒れたか。」

「ああ、アドレル様。助けていただいてありがとうございます!アドレル様に神の祝福を。」

マリサがなぜか俺に祈りをささげる。

「おいおい、俺は神じゃないぞ。」

「いえ。神に仇なす物を倒してくださったのです。アドレル様はあがめるに値します。」

「そ、そうか。」

マリサは目を輝かせて身を乗り出す。


「もしあれを放置していれば、無辜の民にも多くの犠牲者が出たでしょう。アドレル様は、悪の古龍を倒し、わたしを救って下さりました。貴方様は、わたしの、わたし達の救済者です。」

俺は神でもなければ救済者でもない・・・と思う。

そう、俺はただの人間のはずだ。

「少なくとも、わたしを救って下さりました。わたしにとっては救済者様です。」

「・・・ありがと。」

あまり賞賛されたことが無かった俺にとっては、中々こそばゆい言葉だ。




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