第3話 【勇者クヴァルサイド】 古龍出現
【勇者クヴァルサイド】
俺こと勇者クヴァル率いるパーティーは、聖女を護衛して隣の国の教会まで送り届けることになった。
途中までは慣れた道だ。スキルがよく分かっていなかった今まででも、出現するモンスターは十分蹴散らせた。
俺のスキルは強い。他のメンバーも俺には劣るだろうが、中々のスキルを持っているようだ。
ましては、お荷物のアドレルも追っ払った後だ。
これからは、より楽にクエストをこなせるだろう。
「今回も楽勝だな。」
「そうだな。足手まといがいないと戦いがより楽だ。」
「最高のオチだったわね。アドレルの奴、普段から暗いと思っていたら、あんな使えなくて気持ち悪い力の持ち主だったなんて。ね、聖女様もそう思うでしょ?」
魔法使いウルザの問いに、聖女なぜか少し間を空けて答える。
「・・・そう思う・・・おこがましいと思いますが。」
小声でとぎれとぎれにしか聞き取れなかったが、どうやら思っているらしい。
「奴のスキルがヘボすぎて、存在がおこがましいとは!聖女様も言ってくれるな!」
道中、時々モンスターと出くわすが、難なく倒していく。
あえて気になる点と言えば、今日は少し敵のレベルが高そうと言う点か。
「それにしても、さっきのモンスターはいつもと一足違う奴だったな。」
「全くだよ。普段当たる攻撃がなかなか当たらないんだもんな。」
「多分新種か何かね。まあ、ちょこまかと小賢しいだけで、全然強くは無かったけど。」
おかげでいつも一撃で済む相手に今日は数発必要としたが、まあ当たってしまえばどうと言うことは無い。
俺達は強い。
いつも通りの戦いをすればいいだけだ。
そんな戦いを、数回繰り返す。
「他の雑魚共も、いつもより手がかかるな。今日は上位のモンスターが多い日なのか。」
「素早さが高いモンスターが集まっている様だな。」
「なんかもうイライラする!中々攻撃が当たらないんだもの!」
たまたまだろうが、今日は敵がやたら攻撃を避ける。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
突然地響きがした。
「な、なんだ?」
「揺れてる・・・?」
「一体何なの?」
他のメンバーも異変に気付いたようだ。
ドオオオオオオーン!
目の前の山が、突然吹き飛んだ。
グオオオオオオオオオオオオオオオ!
「なっ!これは、古龍ディフィド!なぜこんな所に!」
「そんな!この国の近くには、そもそもドラゴンなんているはずないのに!」
「うそ!どうしてこんな!」
いるはずのない奴がなぜ。
「と、とにかく全員攻撃だ!!」
『劫火の柱!』
『水の豪流!』
『竜巻!』
ゴオオオ!
ザアアア!
ドドドドド!
俺達パーティの強力な魔法が、一斉に古龍を襲う。
「やったか!」
「倒しただろう。」
「びっくりしたー。」
―ふん、俺のパーティは強い。ドラゴンなんてひとたまりも無いさ。
そう思っていたのだが。
グオオオオオオオオオオオオオオオ!
「外した!?お前ら何やってるんだよ!」
「クヴァルの攻撃も外れてるじゃないか!」
「なんで!私の攻撃が外れるなんて!」
グオオオオオオオオオオオオオオオ!
奴が吠え、周りの木々が震える。
「当たり所が良かっただけだろう。攻撃を続けろ!」
『劫火の柱!』
『水の豪流!』
『竜巻!』
ゴオオオ!
ザアアア!
ドドドドド!
再びの土煙に包まれる。
―今度こそ命中だ。確実に仕留めただろう。
しばらく経ち。
「や、やはり無傷だ!攻撃が効いてない・・・だと!」
「そんな馬鹿な!」
「え!うそ!ありえない!」
俺はとても強力なスキルを持っている。
優秀な俺がまとめ上げたパーティーの皆も、それぞれ強力なスキル持ちだ。
それが、全く通用しないなんて。
一体こいつは何者なんだ。
古龍が、すさまじい勢いで、迫り。
「・・・え?」
少し遅れて歩いていた聖女様の脇の崖にブレスを吐いた。
ドオオオオン!!
「うわっ!」
崖が、一撃で砕け散り。
俺達の上に降り注いだ。
ダメージは受けたが、致命傷ではないようだ。
「こんな一方的にやられるなんて・・・」
土ぼこりが晴れかけて、ふと気付く。
―あれ、聖女様がいないぞ?
「おい、クヴァル。聖女様はどこだ?」
「本当だ。見当たらないわ。」
皆で辺りを見回すが、どこにも見当たらない。
「おーい、聖女様―!」
返事はない。
グオオオオオオオオ!
そうこうしているうちに、古龍が攻撃態勢を整える。
聖女様の居た場所は、砕け散った岩に埋もれてしまっている。
―これはもう、手の打ちようがないな。
こうなってしまったのだから、仕方ないじゃないか。
そうだ。
神に仕えると言うなら、これも神の思し召しなんだ。
―聖女様には、囮になってもらおう。
どの道あの様子では助かるまい。
俺達みたいな優秀なパーティの為に犠牲になるんだ。
さぞかし、天国で喜ばれになるだろう。
「皆逃げるぞ!」
「仕方ないな!」
「そうね!」
俺達は、聖女様を置き去りにしてその場から逃げ出した。
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