召喚
いつの間にか意識を失っていた俺は、少しずつ目を覚ます。
周りを見渡すとさっきまで教室にいたはずなのに、見慣れない場所にいた。
「てか、なんだここは………!?」
大広間と言うべきだろうか。いや、そんなものには到底及ばない広さだ。
辺りには数十人の騎士のような人達が、槍を天井に向けて、綺麗に整列している。
「う、う〜ん…」
「な、なんなんだ……。一体…」
「何が……あったんですか……?」
そこには、さっきまで一緒にいた幼馴染の3人がいた。
「みんな!!」
僕は、思わず大声で叫んでしまう。
「ひ、広いです……」
「どこだ此処……」
「さっきまで教室にいたのに……?」
みんなも僕もあまりに突然のことで、何が何だか分かっていない。
そこに、低い偉そうな声が響く。
「ようこそおいでくださいました!!勇者さま!!む、複数おるのぉ……」
そこには王がいた。格好や言葉遣い、ゲームなどに出てくる王そのものがいた。
「申し遅れたな。わしはキンガール・ラハム。この国ラハムを治める国王である」
僕たちは、状況を飲み込めないまま、唖然としている。
「驚くのも無理はない……。ここはあなた達が住む世界とは別の世界。いわゆる異世界と言うところである」
「い、異世界……!?」
僕たちは声を揃えて言う。
(異世界ってあれか?よく小説や漫画などに出てくるやつか?そんなのが実際するのか?)
色々考えて、頭がパンクしそうになる。
3人の顔を見ると、俺と同じで口を半開きに開けたまま、唖然としている。
王は続ける。
「今この世界は新たに誕生した魔王に支配されようとしている。そこで、異世界より勇者を召喚して、魔王を討伐してもらうことが決定し、君たちを召喚させてもらったのだ」
パンクしそうな頭を抑えて、一旦冷静になる。
僕たちは異世界に飛ばされた。そしてこの異世界は、魔王に支配されそうになっている。
頭の中を整理できたところで、愛佳が王に質問を投げかける。
「なんで私たちなんですか〜?」
確かになんで僕たちなんだ。別にわざわざ召喚しなくても、この世界だけで解決すればいいだろう。
「この世界の人々は弱すぎるのじゃ。勇者も存在せず、魔王に太刀打ちできるものがおらんのだ。しかし古来より、『勇者は異人を召喚することで誕生させられる』と言う言い伝えがあってな。国の総力をあげ召喚の義を行った結果、見事に君達が召喚されたと言うわけだ。かなりの年数がかかったがな」
「なるほど。事情は分かりました。しかし、勇者1人を呼べばよかったんじゃないんですか?俺たち4人も召喚する必要は無かったのでは?」
「本当は、勇者一人を召喚する予定じゃった。しかし、近くにいた他の3人も巻き込んでしまった。本当に申し訳ない。しかし異人である君達なら、ステータスも悪くないはずじゃし、この世界でも苦戦しないであろう。異人はこの世界の人よりも強いと言う言い伝えもある。おそらく大丈夫じゃろう」
「ありがとうございます。一度僕たちに整理する時間をいただけませんか?すいません、まだ理解が追い付いてなくて……」
他の3人も俺と同じ事を思っていたのか、深く頷く。
「そりゃ、そうじゃな。とりあえず当分はこの王宮でゆっくりするといい。衣食住全て、不自由なく提供するぞ」
王は優しく笑い、この広すぎる大広間から出て行った。