別れ
ちゅんちゅん。
僕は目を覚ます。いつものように朝食を済ませ、大広間に向かう。
「では、勇者御一行のみなさま、今日で別れの日ですぞ」
キンガールが言う。
そう今日はいよいよ城から出て、冒険の旅へ出発する。
「勇者殿たちのステータスなら、冒険も余裕でしょうな。さっさと魔王を倒して、城で盛大にパーティーでもしようではないか」
楽観的にキンガールが笑う。他人事だと思いやがって……。
「あと、これを渡しておくぞ」
そう言って、キンガールが僕にバッジを渡す。
「これは何ですか?」
「これは、勇者に与えるバッジなのじゃ。これを付けていると勇者だと言うことを、周りに証明できるのじゃ」
「なるほど。大事なものですね」
「うむ。手始めに城下町のギルドへ行って、ギルドカードを作成すると良いぞ」
ギルドとか本当にあるんだな。
「では、出発するがよい!!勇者御一行に栄光あれ!!」
そう言って、キンガールが天に祈りを捧げる。
騎士達も跪く。そこまでやられると少し恥ずかしい気もする。
「行ってきます」
そう言い残し、大広間から出て行く。
「うおおおおお!!行かれるのですねえええ!!」
「ししし!今日はめでたい日じゃのお。」
騎士団長のゴライダが泣きながら、マリーが笑いながら見送ってくれる。
「おっさん!!見送りありがとな!!」
「ありがとうございます……!!」
そう言い残し、俺たちはエントランスに近づく。
後ろから「まだ20代ですぞおお!!」と聞こえるが無視する。
「行かれるのですね」
エントランスの玄関扉に前にはリアさんがいた。
「リアさあああん!!ありがとねえええ!!」
愛佳が泣きながら、言う。
「勇者様たちなら、必ず魔王を倒せるでしょう。」
そう言って、最初に会った時のような、眩しい笑顔を見せてくれる。
「ああ。ありがとう。行ってきます」
そう言い残し、扉を出る。
後ろを振り返ると、リアさんが肩を震わせていた。
泣いていた?
いや、リアさんが泣くわけないか……。
「よくよく考えると、外に出るの初めてだな」
「城下町ってどんな感じなんだろうな!」
「ひっく……。楽しみだね……」
「頑張りましょう……!!」
僕たち4人は希望と不安を残しながら、城を出て行った。