魔法研究室
「勇者様、とてもお強いんですね。騎士団長はお下品な感じですが、この国の中でも指に入るほどの強さを持っているんですよ」
リアが僕にヒソヒソと言う。
「そうなんですね」
そうは見えなかったけどな……。
「勇者様なら、この世界を救ってくれるでしょうね」
リアが眩しい笑顔を向けてきて、思わず赤面してしまう。
「「ん〜！！！」」
そんな僕たちの間に愛佳と加恋が無理やり入り込んできた。
「なに二人だけの世界つくっちゃってんのよ〜！！」
「み、湊さん……！！離れてください……！！」
愛佳と加恋が僕を引き離す。な、なんなんだ……
ーー
「ここは、魔法研究室です」
リアが案内してくれる。僕たちは中へ入る。
すると奥から、紫色の長い髪を三つ編みおさげにした、小さな女の子が出て来る。
「ん……。見ない顔だねぇ」
頭には体に合ってないほどの大きさの、三角帽子を被っている。魔法使いとかがよく被ってるアレだ。
「マリー様、こちらが例の……」
「ああ！！君たちが……！！」
女の子は大量に持っていた本を机の上に置き、僕たちの前に近づく。
「初めまして私はマリーだ。この王宮で魔法の研究をしている」
女の子が丁寧に言う。僕たちも順番に挨拶をする。
挨拶を終えると、マリーが口を開く。
「王宮が異世界から勇者を召喚するっていう無謀な事を言い出したのは何年前だったかなぁ。私はね、無理だってなんども反対したんだよ。それでもウチの王は頑固だからさぁ、言う事を聞かなくて……」
と言いながら椅子に腰掛ける。
「数年間何度も何度も召喚の儀をおこなったけど、失敗続きてさぁ、誰もが諦めかけてたんだよねぇ」
マリーはそのままコーヒーを入れる。
「しかしウチの王は諦めずに続けて、昨日やっと君たちが召喚されたわけだ」
注いだコーヒーを僕たちに渡してくれる。
「4人も召喚されるとは驚きだったよ。で、君が勇者だったよね？」
マリーは最後に自分のコーヒーを注ぎながら、僕を指差す。
僕は頷く。
「黒髪なんて珍しいねぇ……。気に入ったよ……」
コーヒーを置いて、僕にゆっくりと近づく。
そしてマリーは僕の頭の後ろに手を回して……。
ブチッ！！
「痛え！！」
僕は髪の毛を何本か抜かれた。
「ししし！！すまんねぇ。勇者の髪の毛は貴重なサンプルになるからねぇ。思わずいただいちゃったよ。あ、でも安心してねぇ。悪いことには使わないからさ」
な、何なんだこの人……。
ーー
僕たちはコーヒーを飲み終わって、魔法について色々と教えてもらった。
時間もかなり過ぎ、断りを入れて出て行こうとした時。
「ちょっとそこのロングのお姉ちゃん」
とマリーが引き止めた。
「わ、私ですか……？」
加恋が慌てながら言う。
「そうそう。君だよ。君」
マリーがニヤッとして言う。
「君は膨大な魔力を持っているねぇ。私に匹敵するかもしれないよ」
マリーが加恋のほっぺをムニムニしながら言う。
「ほ、ほうなんですか……？」
加恋がムニムニされながら言う。
「うん。君は将来が楽しみだ。何かあったら言ってくれたまえ。もちろん他のみんなもだよ」
マリーがそのままほっぺから手を離し、再度ニヤッとした。
「では俺たちはこの辺で……」
と言い残し、僕たちは魔法研究室をあとにした。
