プロローグ
「ねぇ……湊君は好きな人いる……?」
夕焼けの公園で黒髪をなびかせた女の子が、野良猫と遊びながら呟く。
「い、いないよ。そういうのは大人になってからだよ」
僕は、真っ赤になりそうな顔を隠しながら答える。
「そういうのってどういうの……?」
女の子が、僕の顔を覗く。
意地悪気な顔をしているが、彼女も顔を赤らめていた。
「な、なんでもないよ!」
僕は恥ずかしくなって勢いよく立ち上がる。
「にゃあ!!」
僕の急な動作に驚いた野良猫が、道路に向かって飛び出していく。
「あ、あぶない!!」
女の子が野良猫を追いかけるて道路に向かう。
そして小学生の僕らの目にも、とても大きく映るトラックが走ってきて……
ーー
ーー
スマホのアラームと共に起床する。
またこの夢を見てしまった。忘れたいけど、忘れてはいけない過去だ。
母親が作ってくれた朝ご飯を食べ、いつものように高校へ向かう。
「おっす!!湊!!」
朝っぱらから元気な声が聞こえる。
「竜。おはよ」
いつものように挨拶を返す。
こいつの名前は筑波竜。図体も声もでかい。一応俺の友達だ。
「今日の課題やって来たか?俺全然手付けてないぜ~」
「いつもやってないだろ……」
そんな会話をしながら学校に向かう。
ーー
「おはおは!!今日もお二人さんは仲いいね!!」
教室へ入ると、小柄なツインテール娘が声をかけてくる。
こいつの名前は、最上愛花。高校生なのに見た目は完全に小学生だ。
「み、湊君おはようございます……」
艶々とした黒髪の女の子が蚊の鳴くような声で呟く。
この子の名前は、姫野加恋。
The・清楚といった見た目で、おそらく大半の男子は彼女に好意を抱いているだろう。
「お、おっす!かれん……」
こいつ(竜)も例外ではなく、加恋に好意を抱いている……
「今のは竜じゃなくて、湊に挨拶したんだよねぇ」
愛花が意地悪な笑い方をしながら、竜を貶す。
「う、うるせえ!!分かってるわ!!」
竜が声を少し荒げる。
「ふふふ……」
「ははは……」
僕たちは笑いあう。一応仲良し4人組だ。
「あれ?なにこれ……」
「ん?突然床が光りだしたぞ?」
教室の隅で話してた僕たちの足元に違和感を感じる。
ざわついていた教室が静まり返り、俺たちに注目する。
「え?待って。足が無くなっていく!?」
「た、たすけて!!」
4人の足元がどんどん床に吸い込まれていき、クラスメイトはその様子を唖然と眺めるだけだった。