激怒の商人
全員に指示しヤマトは掴まってもらう
「触れていれば良いだけですが、離してしまうと
吹っ飛ぶんで、絶対に離さないで下さい」
地味に怖い事を言うヤマトだが、
本当の所は、転移中に離すと元の場所に戻され
数メートル吹っ飛ぶだけで済む
まぁ怪我はするだろう
皆が、しっかり掴まった事を確認し
「それでは行きますよ!」
宣言するヤマト
【 転移魔法 閃雷陣! 】
全員の体が光に包まれると、稲妻の様に空に登り
ほぼ、そのままの格好で
街道の街の転移門の上に辿り着いた
魔法力でブレーキを掛け、
ゆっくりと丁寧に着地するヤマト
「へ〜転移魔法ってこうなるのか」
「私も初めてだけど、あっという間に着くのね」
感心げな商人2人
「凄いでしょ〜」
なぜかエッヘンと胸を張るなごみさん
「別に凄くないよ、飛翔鳥の翼でも同じやん」
「あれだと、時間は少し掛かるけど」
ちょっとだけ なごに抗議の目を向けるヤマト
「飛翔鳥の翼は、ドスンって落ちるよ?」
ねっねっと周りに同意を求めるなごみ
「そうね〜飛翔鳥の翼だと、
重い荷物の時は、苦労するのよね〜」
「便利よね〜アイテムいらないし」
「翼は地味にレアアイテムだからちょっと高いし」
サクラさんに同意されてしまった
まぁなって感じで肩をすくめるキャラバンさん
ヤマトの耳が少し紅い、褒められなれてないようだ
「もぉ 先に行くからね!」
とっとと先に街の中に向かうヤマト
「あっ 待ってよ〜 ヤマト〜」
慌てて追いかけるなご
後ろから付いて行く商人2人
少し和やかな雰囲気すらあった、商人達だったが
すぐに激怒する事になる
街の中に入り、
さらに店の中や露店を見て周り、値段を見て
品物を確認すると震えだすキャラバンとサクラ
そして広場の方へ来ると2人は咆えた
「ふっざけるなぁ!」
「なんですか! アレは!」
とにかく もう何もかもが異常
リンゴ一個が1,000ゴールド
卵一つ100ゴールドとかする
普通の相場だったなら
リンゴなら1個1ゴールドだと安い
3個で4ゴールドなら適正かな?
卵は8個で3ゴールド位かな?
普通の宿屋なら1泊100ゴールドなのだ
相場的には1ゴールド≒60円位
価格の異常さが伝わっただろうか?
武器防具屋なんかも相場の5倍とか普通
10倍も並んでる
ブチ切れまくりの商人2人
「街道封鎖の魔王の力の影響は、有るだろう大きい
でもこの相場はありえん」
「精々3倍が良いところ」
とキャラバンさん
「と言うか食料は、みんな傷んでました!
食べの? アレを???」
サクラさんも呆れてる
結論
ルート上に魔物の拠点があるだけではなく
相場も操作されてる可能性が高い
どうやらヤマトの読みは当たったらしい
「改善をお願い出来ますか?」
勇者の問に 商人の二人は気合十分
「商人に対する冒涜だ」
「適正価格ってもんをみせてやるよ」
指を鳴らすキャラバンさん
「もちろん、血が騒ぐわよ」
サクラさんもヤル気十分
その後は、ヤマトが大変やった
【 転移魔法 閃雷陣 】使い過ぎ
「マジですか〜 しむ〜」
ぐったり気味のヤマト
「企画者が、文句言わないの!」
サクラさんに発破をかけられた
「兎に角、物資」
キャラバンさんも同意する
「荷物満載の僕と商人さん二人を、
ルート輸送とか本当に大変なんですよ〜」
さすがに文句を言うヤマトだが
消費する魔法力は、地味にヤバイ
実は、いい訓練かも? とか思うヤマトはマゾい
1日目は7往復とかした
2日目から露店を、サクラさんとなごに任せて
ガンガン売って貰う
【 商人の証 】を見せられれば特権もあり、
領主も許可を出すしかない
「とにかく食料をなんとかしよう」
もちろん相場操作が本当なら、
いつかは妨害があるはず
露店の様子を見ながら仕入れを行う
仕入れの3倍
相場の2倍ほどの価格でも行列が出来る
鮮度が高く物がしっかりしている為
仕入れ即完売が続く
予定されていた妨害は、
予想通りというか当然と言うか領主の手下だった
想定外だったのは、露店を壊されるよりも速く
商人二人がブチのめした所
「てめら〜か! この相場は!」
「待っていました! 遅過ぎです」
領主の手下程度で、勝てるはずが無い
ニ人とも余裕でレベル100超えなんだ
メッチャ切れの商人二人
対してヤマト、全く出番なし良いとこ無し
3回来たが、3回とも
キャラバン、サクラニ人組が、吹き飛ばした
「行商には良くある事だ」
「あら〜 街でもありますよ?」
「腕も無ければ生きていけない」
商人二人の意見は揃った
ここでのヤマト、本当になんの役にも立たない
「【 転移魔法 閃雷陣 】使い過ぎて立てんし」
むしろ膝に来てる、ガクガクだった
「ちょっと、かっこ悪いよ」
なごに言われてしまった
「ほっといて! 荷が重いと消費増えるの!」
余り構う余裕の無いヤマトだった
それでも、1週間もすると露店も落ち着いて来た
食料も行き渡ってきたらしい
地味に治安も回復してるかもしれない
食料の力は偉大だ
「次は外だな」
ヤマトでは無く、キャラバンだ
誰が主役かだんだん判らなくなって来た
街道沿いでも魔族の影響はあっても
そんなに大きくはない街
許可した手前 おおっぴらに襲えず
相場も破壊され、(元に戻っただけやん)
私腹はもう肥やせない
3回目の撃退で手札がなくなり
領主折れた
領主曰く、街道から離れた所に
魔物の砦が2つある
その砦のお陰で、物流停止
相場弄って私腹肥やしてすいませんとの事
ヤマトは、戦士達を呼び戻そうとしたのだが
商人2人が止めた
というかメッチャ燃えている
売上的には、もう十分だし
今の領主なら品物をまかせても大丈夫そうだし
砦攻略開始
勇者 僧侶 商人 商人とか
バランス悪くね?
と思ったのに
それぞれの武器がトンデモなかった
キャラバンさんのメイン武器は大戦斧
サクラさんの武器は火炎鞭だった
「そんなの商人の武器じゃないです」
呆れ果てるヤマト
二人とも戦士魔法使いコンビより遥かに強かった
桁が違いすぎます、化物ですか?
サクラさんの火炎鞭がヤバイ
振るったムチで切り裂け
鞭から舞い上がった火の粉で火焔ダメージが発生
これの攻撃を見たヤマト
「魔法使い居なくて良かった立場ないですよ」
「ウフフッ 儲けで買ったんですよ」
サクラさんは、にこやかに言っていたけど
一体どれだけ儲けたら買えるんだろう?
鞭を一度振るう度に、炎が舞い踊り見惚れるほど
あっという間に魔物全滅とか普通なのだ、強すぎ
そして鞭を装備できる事は、スルーなのか?
聞こうとはした【 したが 】かな、
すっごい笑顔で返された
「笑顔が怖かった」ヤマト 後に語る
結果的には最初の砦は1週間
2つ目の砦は即日
一週間で攻略できた
今度は、キャラバンさんの仕事
行商ルートを確保しないと、この仕事終わらない
コレに1ヶ月掛かってしまう
実は、第3の砦もあった為
砦を落とすのに、死ぬほど時間が掛かったのだ
街に戻ると大歓迎される
食料不足解消と治安の回復がメッチャクチャ
喜ばれているようだ
想定内だがショックな事が起きる
商人二人がこの街に残るとの事
是非にと領主にも頼まれ
何より二人が乗り気である事が決定的
何より避難させた元のメンバー2人
戦士と魔法使いも気がかりだし快諾した
商人二人はこの街をどんどん大きくして行き
この街は、【 陸の都 】と呼ばれ栄える事になる
さて、ヤマトとなごみは、
戦士と魔法使いを迎えに行く事になるのだが
結論から言うと、
二人と合流する事は二度となかった
なごは浮かれ気味に
「二ヶ月位掛けちゃたし結婚してたりして」
なんてご機嫌だったし
「あるかもなぁ」
ヤマト自身は、そこまで仲が良かった訳ではないが
仲間に会えるのは嬉しくもあった
「ウフフッ」
とか言ってなごは、久しぶりに
二人に会えることが嬉しそうだったのに
現実は想像のナナメ上の、はるか先を行っていた
なんと 魔法使いがっ
妊娠してた
ちょっ マジかよ!
二人とも嬉しそうにしてんじゃね〜よ
あっけにとられ何も言えない二人
戦士がパーティ復帰しようか?
と言い出したが
軽くボコッて
「お前が魔法使い守らなくて誰が守るンだよボケ」
この言葉を聞いた時の
魔法使いの笑顔ったらヤバかった
ちょっと惚れそう
「この笑顔を曇らせたらマジ殺す」
宣言だけして別れる事に
なごだけは、何とも言えない表情をしていた
この日、ヤマトパーティー 一行は完全崩壊した
(これを言いたかっただけ)
とは言え、流石にこれは、想定外である
どうしよう?
途方に暮れる、ヤマト達
なんとなく手を繋いて来る なご
いい雰囲気になっている場合では無い
こんなの、どうにもならないので
陸の都(仮)に戻り
キャラバンさん達と相談して
パーティを募集してみる事にした
続く