国王からの勅令状
黒猫勇者の宅急便は、
各地で勇者ヤマトが仲間を護り増やしつつ
猫リュックや猫ポーチを背に、
交易の範囲を広げていくお話です
本人は、あんまり猫ぽくないんですけど
重度の猫好きではあります
一度訪れた街は、交易対象となり
毎朝転移魔法【 閃雷陣 】を駆使して訪れます
魔法の訓練も兼ねている為、量が多く重いです
商人2人とヤマトの3人で、荷物240kg前後
体重込で400kg超の量を一度に輸送します
それを複数回、各地に物資輸送し続ける
そんなストーリーであります
ただし、この世界では死者の蘇生はできませんし
回復薬は飲みすぎると中毒を起こしたり
中毒死したりしかねないので
例え回復薬でも飲む量に注意が必要となっています
ここは、王都ブロッサムの商人ギルド
人の勢力圏の中では、最大級の商会も兼ねている
本来くっそ弱い商人ギルドに、王の勅令状が届いた
勅令状曰く
【 街道が魔族に封鎖されているらしい 】
【 解除組に原因を調べて欲しい 】
解除組ってのは、俺キャラバンや
向かいの机に座っているサクラ
更に、その奥に座っているバムスターの様に
数は少ないが他の職業をカンスト99まで上げ
その職の装備および魔法の使用を全て解除した
レベルにすると100を超えた人間の事をさす
この世界では、一度転職したら
二度と元の職に戻る事は出来ない
取れなかった魔法やスキルは消えてなくなる
コレばっかりは取り返しがつかない
そう言う意味では、解除組は苦労の証とも言える
他の職を極めてから
わざわざ弱い商人になっている理由は、
商人特権が大きく影響している
商人特権とは、
各国での露店(商売)許可
通行証免除(厳しい国でも ほぼ懐の下で通れる)
資材の割引特権
商人に対する迫害は重罪(安全保証)
他にも細かい事はあるが、一手に受けられる
【 商人の証 】を手にする事が出来る
これを偽造すればどの国でも重罪、死刑もありうる
コレがあるので、どんな職を選んでも
その職を死ぬまで全うするので無ければ
最後は、商人を選ぶ
酔狂で商人をカンストしてから転職したとしても
転職した時点で、商人の証は消えてなくなる
最初の職に商人を選んだやつは、
大体戦えず死ぬ羽目になる
斧を装備出来ても振り回す力が無ければ意味がない
剣を装備しても同じ事、魔法もない
戦闘に関しては死に職なのだ
最後に商人はありえる だが 最初に商人は無い
これがそう言われる理由でもある
・・・・・
改めて勅令状を読んで見る、
実際の所、街道の話は商人ならみんな知っている
行商を行っていたバムスターの手の者も、
全滅したらしい
そんな事もあってか
国王様は、わざわざ数少ない解除組を集めてまで
こんな依頼が商人ギルドに来たのだろう
問題が出始めて3ヶ月ほどになるが
誰一人たどり着けたとも戻って来たとも聞かない
街道も街道の街も今どうなっているのか、
誰にも状況が判らないのだ
少なくとも魔族の襲撃は確定だろう
バムスターの手の者すら戻って来ない以上
馬で一週間の距離だ、命の保証も無い
王からの勅令である以上、報酬は保証されるが
さて一人は危険だが、仕方ない俺が行くか
そう手をあげようとした時
「おはようございま〜ス」
「誰が居ませんか〜〜」
入り口の方から、雰囲気をぶち壊すほど
やけに明るい声が響いてきた
まだ子供のようだが?
2人連れか?
なんの用だと見ていたが、入り口に居た商人が
「今、大事な話をしているから」
そう追い出しに行ったのだが、何を血迷ったか
その2人を連れて戻って来た
「すぐに行けるぞ、誰が行く?」
話を聞けば、この2人なんと街道から生きて戻った
勇者と回復魔法使いらしい
ただ話を聞けば聞くほど酷い惨状だ
街道では魔族の襲撃が絶えず
夜も寝ずの番を交代で一人だし警戒せねばならない
馬を護りながら戦うので手一杯
最後は馬を潰す覚悟で街に駆け込んだらしいが
街の中はかなりの荒れよう
食べ物がなく腐ったものを奪い合い
其れが元で殺し合いすら起こりかねない
治安の悪化がすさまじく物価もめちゃくちゃ
元々は4人パーティーだったが、あまりの惨劇に
2人は別の場所に避難させたと
今は、聖騎士のギルドがなんとか持たせているが
もう時間の問題らしい
ただ勇者、名前をヤマトと言うそうだが
転移魔法を使って直ぐに行けるらしい
助けて欲しい、力を貸して欲しいと、
食料と物価をなんとかしたいと駆け込んできた様だ
これは俺が行くしか無いな、そう手をあげた
「俺が行こう」
ほぼ同時に、
「私が行く!」
向かいの机からも手が上がった
サクラだった、アイツは強いらしいが、
あまり動かない事で有名なんだが
何か思う所でもあったのか目が違う
「どうかよろしくお願いします」
2人に丁寧に頭を下げられた
「任せろ 何とかしよう」
元戦士カンストの力を見せてやるさ
「貴方が勇者なのね? 苦労したでしょ」
「力になるから頼ってね」
サクラは今まで見た事のない顔をしている
あまり話はした事はなく
聞いた話だと20歳で同い年らしいが、
話に乗らず冷たいイメージしか無いのだが
少し印象と違うのだろうか
勇者の方はヤマト、レベルは46
回復魔法使い、彼女の名前は、なごみと言うらしい
レベルは38とか
話を聞く限りヤマトの方は戦えそうだ
なごみの方は、戦闘に関しては少し頼りないか
「回復魔法は任せて下さい」と言っている
「任せていいのかなぁ〜」
なんていたずら半分に言うヤマト
そのヤマトの頬にあったかすり傷を
そっとなぞるように手をやると、
うっすら手を白く光らせ傷を消してみせた
「ナルホドやるわね、なごみさん」
ちょっとだけ嬉しそうにくるっと回るなごみ
足がもつれて転びそうになる
さっと腕を取って止めるヤマト
「なご ソコで転んだら意味無いんだけど?」
やれやれだぜって顔をする
「ぶぅ 大丈夫ですよ〜だ」
口を尖らせるも少しだけ嬉しそうするなごみ
くすくす笑うサクラ
なるほどこんな感じなのか
正直良く街道の先まで行けたな
少し苦労するだろう、そう思ったキャラバンだった
続く