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八木の冒険シリーズ

「竹の世界?」

作者: MUMU

八木裕民やぎゆうみんの冒険シリーズ第二弾

以前におーぷん2chに立てた 彡(゜)(゜)「竹の世界?」というSSスレのリメイクです

元スレの方には私のHNつきのトリップがあります


パラレルワールドですので、八木裕民の設定は作品によってコロコロ変わります

第三弾とかあるのかな



登場人物

八木裕民・・・20代前半、大学の遺伝子工学研究所に通う大学院生

竹仙人・・・竹に詳しい





-県立○○大学 遺伝子工学研究所-






八木「うう…しんどいわ、もう深夜の二時かいな」


八木「朝までに遺伝子組み換えの竹のデータ取って、レポート書かんと…」


八木「……おや? このナンバー23のヨシダ君……なんやこの数値は」


八木「こんな数値になるはずが……うわ、これ完全に手順間違えてるやんけ」


八木「あああああ、全部やり直しやああああぁ……」


八木「あれ? でも異常に良い数値になってる……」


老人「おい」


八木「ほみゃっ!?」





八木「ビックリしたやんけ! 変な声出たわ!!」


老人「ワイは竹仙人や」


八木「はい?」


竹仙人「お前が作った竹な、それめっちゃスゴい」


八木「なんや急に、いや、確かにすごい数値やから植えてみようかと思たけど」


竹仙人「すごすぎて地球がエラいことになるんや」


八木「は?」


竹仙人「なので、植えたらどうなるか見せたるわ、ちょっと1年後まで行くで」


八木「えっ、うわなんや眼の前がチカチカする! 頭めっちゃ痛い!」


八木「ぎゃああああああああ」





竹仙人「ついたで、お前の大学の1年後や」


八木「ま、まだ頭がクラクラするわ、ちょっと待ってくれ……」


八木「え……外やないか、それに太陽が出て……」


八木「なんやこれ、敷地がほとんど竹で埋まってるで」


八木「大学の裏山も、道も、コンクリートも突き破ってニョキニョキ生えてる!?」


竹仙人「あの竹、ヨシダ君の生命力はすさまじい」


竹仙人「竹は早く成長する、マダケなど最大で一日120センチも成長するが、ヨシダ君はそれを遥かに超える」


竹仙人「厚さ10センチのコンクリートもぶち割って突き出てくるんや、生えてきたと思ったら昼には人の背丈になっとる」


八木「パないなあ」





八木「せやけど竹は地下茎で周辺の個体がつながってるからな、農薬で簡単に枯らせるはずや」


竹仙人「知られてる全ての農薬に耐性を持っとるんや」


八木「ファッ!?」


竹仙人「しかも強力な薬を使うと、地下茎が自切してその個体を切り離しよる、もはや枯らすことは不可能なんや」


八木「な、なんちゅう……」


竹仙人「これだけやないで、次は10年後ぐらいに行ってみよか」


竹仙人「どこか見てみたい場所はあるか?」


八木「え? んー、ほんなら群馬あたりで」





竹仙人「ついたで、10年後の群馬や」


八木「この目がチカチカするの慣れへんなあ」


八木「おや、なんか硫黄くさいで」


竹仙人「ここはあの有名な草津温泉や、温泉街が竹で埋まっとるやろ」


竹仙人「草津の豊富な湯量によって、ここのヨシダ君はきわめて元気に成長しとる」


八木「硫黄にも負けずに育ってるなあ」


八木「建物も竹が刺さりまくっとる……人もおらんようやし」


竹仙人「人がおらん理由はやな、ほれ、地面を見てみ」


八木「ん? 地面を大蛇みたいに竹の地下茎が這っとるで」


八木「なんかえらい太いな……」





竹仙人「ちょっとこのナタで切ってみよか」スパーン


ドババババ


八木「うお!? 熱湯が吹き出してきたで!」


竹仙人「草津温泉の源泉は50度から90度に達する」


竹仙人「この竹の地下茎は魔法瓶みたいな断熱構造をしとってな、しかも内部に節がなく、熱湯をポンプのように吸い上げるんや」


竹仙人「竹に侵略されるだけでなく、切ったら熱湯が出てくるようでは、人は住んでられんわけやな」


八木「ほへー」


竹仙人「そしてこの竹は熱をほとんど減衰させへんまま、北海道あたりまで熱湯を届けるんや」


八木「なんやて!?」


竹仙人「この仕組みのせいで、寒冷地でもまったく問題なく竹が育つ」


竹仙人「さあ、仕組みがわかったところで、次の時代に行ってみよか」


竹仙人「行きたい国を選ぶとええで」


八木「えーと、ほんならインドあたりで」






竹仙人「ついたで、50年後のインド、ニューデリー付近やな」


八木「前から一度来てみたかったんや」


八木「おや、なんか光が」


竹仙人「!? バリヤー!」



ド ッ ゴ オ オ オ オ オ オ オ オ ン ン ン



八木「ほげえええええええええ」


八木「な、なんや今の爆風は」


竹仙人「お、驚いたやろ、ここは竹との戦いが最も激しかった辺りや」


八木「……いまバリヤー張るのギリギリやなかったか?」


竹仙人「そんなことより見てみい、爆撃機が大量に爆弾を落としたせいで、地面は穴だらけや」


竹仙人「核兵器も打ち尽くした、今は残り少ない爆弾で笹を散らした後、人海戦術で竹を伐採してるんやな」


八木「ほんまや、チェーンソー持った兵士たちが竹に立ち向かってるで」


八木「よく見たら普通のおばちゃんや子供もいるな、みんなでっかいナタを持ってるわ」


竹仙人「しかし皮肉なことに、この戦いが竹の進化を促したんや」


バキーン


八木「うお!? ナタのほうが割れたで!?」





竹仙人「地中から鉄分を吸い上げて、表皮に硫化鉄として纏ってるんや」


竹仙人「ウロコフネタマガイという貝類は同じように殻に硫化鉄を含んどるが、竹も同じ進化を身に着けたわけやな」


竹仙人「しかも、あっちを見てみ」


八木「……おお、戦車が竹に突き上げられてる……」


竹仙人「インド陸軍のアージュンMk3や」





竹仙人「2030年ごろに就役した最新鋭戦車やが、滑空砲や火炎放射をいくら繰り返しても竹を殲滅でけんかった」


竹仙人「最後にはこうして竹に突き上げられたわけやな、ちなみに戦車の重量は50トンある」


竹仙人「もはや戦車ですら勝たれへんちゅうことやな」


八木「じゃあ人類は絶滅するんか……」


竹仙人「さあ、そこで次の時代に行こか」


竹仙人「今度はワイが選ぼうか、イギリスに連れてったるで」





竹仙人「ついたで、ここは150年後、イギリスは北海の洋上や」


八木「なんや海の上かいな。ストーンヘンジとかコッツウォルズとか見たかったのに」


八木「おや、あの突き出たモノは何や? 石油の洋上プラントかな」


八木「ん!? いやめちゃくちゃデカい! 空港よりデカい!」


竹仙人「イギリスが持てる財産を全て吐き出して建てた、超巨大洋上ステーションや」


竹仙人「面積はディズニーランド10個分、居住者は15万人」


竹仙人「北海油田から石油を、ウラン捕獲網によって海水から原子力燃料を集めて、自給自足を実現しとる」


八木「すごい設備やな……」





八木「……あれ? なんか、対空ミサイルとか機関砲なんかがゴチャゴチャ生えてんねんけど」


竹仙人「イージス艦も常駐させとるで、守りを固めとるんやな」


八木「そうやなあ……きっと、この設備に入りたい人らがボートかなんかで近づいてくるんで、排除するために」


竹仙人「その程度やったら巡視船で十分や」


八木「?」


竹仙人「ちょうど来たようやわ」





八木「なんや……? 竹を編んだボートか? すごい速さや」


八木「乗り込んどるのは……竹の鎧を着て、竹の弓を持った男たち? 何やあれは」


竹仙人「竹の戦士たちや」


竹仙人「竹の実はビタミンやミネラルが豊富で、種類によっては糖分を多量に含む、栄養価の高い食品なことは知っとるやろ」


八木「まあ竹の研究してたし、その程度は」


竹仙人「ヨシダ君は色々な実をつけるが、ある種類の実には強い依存性と興奮作用があってな、人を戦士に変えるんや」


八木「……」


竹仙人「竹の実しか受け付けなくなり、竹の繁殖だけを考える、そういう人間を育てよる」


竹仙人「しかも強壮作用や鎮痛作用があり、ゴリラのような力も手に入るんや」


八木「せやけど、あんな竹の弓で」



ド バ ア ア ア ア ン



八木「ほげ!? 衝撃波の音が聞こえたで! 音速超えとる!!」





竹仙人「ヨシダ君の特に丈夫な種類で作った弓は、張力470ポンド、かるく5キロは飛ぶ」


竹仙人「さらにその竹の鎧はライフル弾も防ぐ、前に言ったとおり断熱性も抜群や」


竹仙人「防寒効果もあるし、火炎放射器も効かへん」


竹仙人「見てみ、竹のジャンプ台を構えたで、あれで人間を打ち上げて空から攻撃する気や」


バシュッッ


八木「めっさ跳んどる……50メートルは打ち上がったで」


八木「うおお……人間を機関砲で撃っとる」


八木「しかもけっこう耐えとる、あ、乗り込んだ」


竹仙人「さあ、どんどん行くで、次の時代や」





竹仙人「ついたで」


八木「今回のチカチカめっちゃ長かったなあ」


竹仙人「ここはお前の時代から5000年後、南アフリカのイシマンガリソ湿地公園や」


八木「なんか聞いたことあるな、世界遺産やったっけ」


八木「もう見渡す限り竹ばっかりやなあ」





竹仙人「すこし移動しよか」


八木「なんや? 竹がびっしりと円型に並んでるで」


八木「地下茎が地上に出てきてるな……竹の間を縫って伸びてる」


八木「それが網目状になってる、檻みたいやな」


竹仙人「そうや、これは円型のオリや」


八木「中にいるのはゾウかいな?」


竹仙人「そうや、アフリカゾウやな」


パオーン





竹仙人「南アフリカが、アフリカの中でも特に多様な生物が住んどることは知ってるか?」


竹仙人「動植物、魚も含めて、全世界の10%の種類がここにおるんや」


八木「ほーん」


八木「あれ? このオリを作ってる竹、透けてるで」


八木「中は……なんやこれ、魚が泳いでる……」


竹仙人「草津温泉で見たパイプ状の竹やな、この中は海水が流れとる」


竹仙人「オリの建材までも水槽として使ってるっちゅうことや、無駄がないな」


竹仙人「見てみ、円型の檻がどこまでも広がってるやろ」


八木「ほんまや……蜂の巣のようや」





八木「というか、これはもはや自然の仕組みとは思われへんで」


八木「竹が勝手にやってるんか? 知性があるみたいやないか」


竹仙人「ヨシダ君が、今さら知性ぐらい獲得してないと思うか?」


竹仙人「南アフリカだけやない、世界中に同じようなプラントがあって、生物を竹のオリで飼ってるんや」


竹仙人「ヨシダ君の実を食べ続けてれば病気にもならへん、寿命も凄まじく長くなる」


竹仙人「そうして、生物のDNAを取り込んで自分の進化にでも役立てる気なんやろう」


八木「そう」


竹仙人「リアクション薄いな!」


竹仙人「まあええわ、次が最後や、一気に10万年後まで行くで」





竹仙人「ついたで、10万年後の日本や」


八木「もう人類も滅んでもうたやろなあ」


八木「おや、人がいるで」


八木「あれは竹の住居やな、平屋でなかなか立派なもんもあるわ」


竹仙人「最後に生き残ったのは、竹と和解できた人々だけやった」


竹仙人「日本では家具も道具も、建物さえも竹で作れんものはないと言われとる」


竹仙人「竹を切るノコギリさえも竹で作れるからな」





八木「服も竹の皮なんやなあ、竹以外の植物はないんか?」


竹仙人「竹は消毒作用があり、竹以外の植物を枯らしてしまう」


竹仙人「いまや地球上で、ヨシダ君以外の植物は皆無に等しい」


竹仙人「食べ物といえば竹ぐらいになるわけやが……」


竹仙人「竹の子の他に、笹や樹皮などをかろうじて消化できたのは、長い腸を持つ日本人だけやった」


八木「動物はおらへんのか?」


竹仙人「南アフリカのプラントも消えてもうたからな」


竹仙人「今は哺乳類といえばネズミのような小動物と、鳥と、パンダが五億頭ほどおるぐらいや」


八木「パンダすげええええええええ」





カーン カーン カーン


竹仙人「ここで住居を作ってるな、道具も建材もすべて竹や」


八木「昔ながらの日本って感じやなあ、悪くない風景に思えるけど」


竹仙人「しかし、この生活に至るまでに、人間は全ての文化を捨てんといかんかった」


竹仙人「しかもヨシダ君の進化も止まってしもうたんや」


竹仙人「見てみ、もう硫化鉄の表皮もない、温水の通った地下茎もない」


竹仙人「特殊な実をつけることもない、ただのマダケ同然やな」


八木「ほんまや……」





竹仙人「おだやかな環境では進化も必要ないからな」


竹仙人「ヨシダ君は考えた、進化のために万物の霊長である人間と戦ったが、勝った後には何も残らへんかった」


八木「?」


竹仙人「自分はもはや地球に等しい存在になったが、ただそれだけや、何でもできるけど、何もする必要がない」


八木「何を言うてるんや?」





竹仙人「ひとつの植物が地球を埋め尽くしたら、それは地球がマリモになるだけではないか」


竹仙人「だからすべての力を振り絞って、最後の進化を行った。地球規模のサイクロトロンを作り、重金属流体を加速させ」


竹仙人「さらに人間以上の知性を持つ人形を作り、自分の発祥へと遡る旅を」


八木「……」


竹仙人「しかし、人間が万物の霊長であったままでも、行き着く先は似たようなものかも知れん」


竹仙人「よう考えてくれや、頼むで……」


八木「ま、まさか、おっさん……」





八木「はっ!?」


チュンチュン


八木「朝……?」


八木「ここは、大学の研究室やないか……」


八木「今までのは、すべて夢……?」


八木「いや……」


八木「ナンバー23、ヨシダ君、これは間違いなく存在してる」


八木「数値も異様なことは間違いない、やはり、あれは現実……」


八木「……どうする? ワイは、この竹の苗を植えるべきなんやろか……」





八木「何日か考えた後」


八木「ワイはその苗を、大学の裏庭にひっそりと植えた」


八木「ヨシダ君は、人間よりも優れた生物かもしれん」


八木「ワイだけの判断で、その存在を握りつぶすことはでけんかった」





八木「大丈夫や、ワイは匿名で、世界中の大学にヨシダ君のデータを送った、すでに未来は変化している」


八木「ヨシダ君にとって人間が進化の糧であったように、人間にとってもヨシダ君は糧になるはずや」


八木「ヨシダ君の強さをも取り込んで、人間はさらに進化できるはずや」




八木「次は負けへんで! ヨシダ君!」









八木「まあそれはそれとして」


八木「どうりであのおっさん、吉田義男に似てると思うたわ」




(おしまい)




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