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Act Amplify ONLINE-加速する意識の先へ-  作者: 孤雪
一章-そして世界は開かれる-
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1-03.チュートリアル

ログイン二日目

箒星は一日目に続きアバターの動きに慣れる為に準備運動を行っていた。


「うん、だいぶ動けるようになったかしら。

でもまさかゲーム内で風を切って走るって感覚が味わえるなんて。

そろそろチュートリアルを進めても問題無いかな……と、その前に」


何かを思い出したのか箒星は一度空を仰ぎ、そして宣言する


「SystemCall AssistDevice 松葉杖TypeC」


その宣言に合わせて、箒星の目の前に松葉杖が顕現する。


「よし、やっぱりシステムは一々コンソールを操作しなくても音声入力でショートカットできるわね」


そう呟きつつ箒星は顕現した松葉杖を手に取り……


「えいっ★」


思い切り振り下ろし地面に叩きつけた。

しかし松葉杖は一切の傷や歪みも無く残っている。


「……おっとぉ? これは最強のツールの出現かしら?

いやいや…… そんな都合がいい訳……

とりあえずもっと色々検証しないと」


箒星は松葉杖を振り回し幾度も地面や木に叩き付け、さらには上空へ放り投げる、遠くへ投げる、逆に松葉杖を置いたまま自分が遠くへ行く等、思いつく限りの事を試して行く。


「破壊不能……一切の傷が付かない、私から五メートル離れると消失。

今分かる事はこれだけかしら…… 地形でなくオブジェクトやモンスター、NPCにプレイヤー相手ではどうなるか……それはさっさとチュートリアル終わらせないと検証できないわね……」


空を仰ぎ、少し考えた素振りを見せた後、箒星の顔に迷いは浮かんでいなかった。


「とりあえずチュートリアルを進めましょう」


―――――――――――――――

[チュートリアル進行

クエストの受注と確認]


森の道へと歩みを進めて十数歩、システムアナウンスが鳴り響き、そして脇道から焦燥した女性が現れる。


「冒険者の方ですよね!? お願いします! 魔物に襲われている主人を助けてください! 」


女性の懇願の声と共に箒星の目の前にクエストウィンドウが表示される。


「ほいほい、えー報酬が2000ガルド……これが通貨単位なのね、受領っと……。

わかったわ、これから助けに行くから、貴方は安全な所にいてね」


「ありがとうございます! 敵へと挑む前は装備とアイテムの確認を忘れないようにきをつけてください!」


「あ……あー装備 何か持ってたかしら……SystemCall」


箒星は目の前に現れたコンソールを弄り、装備画面を表示させる。


「今の装備品が狐人の軽装 胴と脚……未装備で古びた小手とくすんだ脛当て

武器類が最初から未装備って!? いや危機感を煽るには良い方法ね、装備装備……

アイテムの確認……経験値ブーストの飴が三つ、まぁ今は使わないわねっと……よし!


腕と脚に小手と脛当てが出現し、箒星は走り出す。

そして馬車と馬車を守ろうとしている男の元へ辿り着く。


「おお冒険者か!魔物を撃退するのを手伝ってくれ!」


「今助けるわ!」


[チュートリアル進行 : 戦闘の心得

AAOにおいての戦闘は通常攻撃とアーツに別れています。

現在使えるアーツは有りません、所有武器で自由に攻撃してください。]


「SystemCall AssistDevice 松葉杖TypeC! まずは近付く前に先制攻撃!」


目の前に出現した松葉杖を魔物<狼>へと投げるが、松葉杖は狼の体を透過して地面へ転がる。


「流石に当たり判定は無いか、まぁ想定内

近付いて殴るまで」


箒星は即座に狼へと近付き素早い蹴りを放ち、狼の攻撃は丁寧に避けて脳天に鋭い突きを放ちトドメをさす。


「うん、初戦はちゃんと動けたわね」


[チュートリアル進行

クエストの達成と報告]


クエストの報告ボタンを押し、夫婦からの感謝と報酬を貰う。


「ああそうだ、冒険者さん。ここで会ったのも何かの縁、私達は行商を生業としている者でね、何か買っていかないか?

命の恩人相手だし盛大に割引もするよ」


「じゃあお願いしようかしら」


[チュートリアル進行

アイテムの売買]


目の前に、商品 価格 所持金が記載されている売買専用ウィンドウが表示されるのを見て、箒星は傷薬を二つ購入する事にした。


[チュートリアル進行

チュートリアルを終了しました

達成報酬としてステータスポイントを30点

スキル取得のオーブを2個付与しました

最寄りの町はそのまま道を直進した所にあります、貴方の旅路に幸あらんことを]


「これでチュートリアルは終わり……かぁ

じゃぁ行商人さん、またね。私は先に行くから」


「ああ、魔物を倒してくれて助かったよ。また機会があったらその時はちゃんと取引しよう、定価でな!」


行商人の言葉を背に受けながら、箒星は町へと駆けて行く。


「えぇ……なにあのNPC、逞し過ぎない?

普通、次は定価で取引しようってわざわざ言う……?

ってもう町が見える、意外と近い……いや、このアバターの速度じゃないともっとかかっちゃうものね。それにチュートリアル地点が街から遠すぎるのも良くないわ」


考え事を呟いきながら減速し町へ入ると、人の多さに声を漏らす。


「……まだリリースして半月も経ってないものね……嗚呼、せっかくだしロールプレイしましょう。私は子供、無邪気な子供……」


そんな事を考えていると一人の男性に声をかけられる。


「嬢ちゃん、そっから入ってきたって事はチュートリアル終わった直後だよな? ああっと名乗り忘れてたな、俺は革細工職人のマルクだ」


「えと……箒星、です。

スピードファイター……軽戦士? 志望で…… チュートリアル終わったばかり、です……」


「そうかそうか、ところで他の人と組んだり待ち合わせの予定はあるか? それだったら長時間拘束のは良くないしな」


「そういう予定は無い、です……

その、マルクさんは、なんで私に声を……?」


「ならよかった。

声を掛けた理由な、いや簡単な事で、嬢ちゃんの装備からして取得した攻撃スキルは格闘なんだろ? 格闘を選ぶヤツが重い金属鎧に手を出すとも思えなくてな」


「革鎧の売り込み……スキル上げ、です?」


「おうよ! そういうこった」


「でも、お金とか素材……何も持ってないです……」


「ああ、気にするな。生産系……特に装備品類になってくるとな、ランクの低い生産物なんて売れずに赤字になるの覚悟で量産してスキルを上げなきゃいけないんだわ。

でも無心で量産してゴミ箱に放り込むのは流石に堪えてな。それならリターンが無くともチュートリアル終わった奴らの為に設えた方がマシってもんだ」


「なるほど、です。

サービス開始早々のプレイヤーって、トップを掴む為に、置いていかれない為に、殺気立ってるイメージがあったので……

そういう支援って、凄く良いと思う、です」


「そう言って貰えると助かるよ

まぁ確かに最前線は殺気立ってるけどなぁ……嬢ちゃんって他ゲーとかでトップの経験者か? 数日遅れてきたり早々に脱落した奴らは基本的に俺みたいのもチラホラいるはずだが……」


「はい、です

VRMMOは初めてだけど、MMOは何度かやった事があって……開始日に即乗り込んで先頭の人に頑張って付いていって……」


「そうかそうか、まぁそれだと短くても開始一ヶ月ぐらいは余裕も無いもんなぁ。

まぁそんなんでアレだ、品質は保証しないが装備作るか?」


「えと……それじゃあ、お願いします……」


「おうよ! 承ったぜ! このゲーム、サイズの自動調整なんてねぇから嬢ちゃんのサイズだと結構な調整……って言ってもスキルと派生アーツもあるし五から十分ぐらいか、ちぃと時間かかるからその間にステータスの割り振りとかスキルの取得は済ませておきな」


「はーい」


箒星の返事を聞きマルクは近場の作業台まで走っていった。

それを見届けた箒星はシステムコンソールを開いて弄りながら呟く。


「たまにはのんびりやるのも良いものかも……

それにこのゲームでは「トップを走る」んじゃなくて「思い通りに走る」事をしたいんだし……

さてステータス振り! もっと速度上限上がっても付いていけそう……だけど千里疾走みたいなスキルは他のステータスにもあるだろうし、強くなるなら他のステ……思い通りに走るって言ったばかりだし全AGIで良いかな」


「あとはスキル、オーブは二つかぁ……

習得可能スキル一覧、追加されたのは<風切り羽>……おー、これは良い、今の最大速度で走ったら風強くて鬱陶しかったし……これは確定。

あとは<緊急制動>とか、使い方次第で面白いよね……?」


「……設定可能スキルスロット五枠のうち使ってるスロットが2つだけって、適当にMOB狩りしたらスキルオーブの獲得クエストやらないと……?でも今の所格闘さえあれば生きていけそうな気もするのよね」


ステータスの振り分けが終わり、アバターへと慣れる為に逆立ちやバク転をやっていると、マルクが戻ってくる。


「……嬢ちゃん、なにやってるんだ?」


「あ、マルクさん。

私生まれつき体が不自由だったから、初のVRMMOで体を動かすのにまだ慣れなくて……」


「体が不自由とか重い話をサラッと流すな……

いや嬢ちゃん十分に動けてるからな? なんだその軽業師みたいな動き……」


「そう、ですか?

ちゃんと動けてる方なら良かったです」


「動けてるよ、問題ねぇ。

……そいや嬢ちゃんは格闘以外だとどんなスキル取ってんだ? 場合によっては他の生産スキル持ちも呼ぶが」


「格闘以外だと……、水泳、千里疾走、緊急制動、風切り羽、の四つ、です」


「ん?風切り羽だと……? ちょっと掲示板見るから少し待っててくれ」


その言葉と共にマルクはシステムコンソールを表示させ、そして苦い顔を浮かべる。


「やっぱりか……嬢ちゃん、AGIに全振りしたな? どれぐらいの速度で動ける?」


「えと……チュートリアル終わってからのポイントは振ったばっかりで……だからAGI40のアバタースペック上限と、あと千里疾走の拡張分含めた上限までなら……」


「……てこたぁ6倍までは問題無く動けてるってことか。

こりゃ革鎧ですら相性悪そうだな、あー俺の確認ミスだ、これは俺が悪い……

嬢ちゃん、ついてきな。裁縫屋んとこ行くぞ」


「えっと……? どういう事です……?」


「後で説明すっから今はついてこい!」


「は、はいです!」

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