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Act Amplify ONLINE-加速する意識の先へ-  作者: 孤雪
序章-斯くして雛は放たれた-
3/16

0-02.決意↔悪巧み-斯くして雛は放たれた-

海結莉姉妹が自宅へと帰り、時は流れて晩御飯


「父様、少しお願いがあって」


「どうしたんだい?」


「欲しいものがあるの」


「おや……凪が物をねだるなんて珍しい。言ってみなさい」


父、海結莉 圭は驚いたそぶりをし、話を促す


「Act Amplify ONLINEっていうゲームで、ハードも必要になってくるから合わせると結構高くなるけど……」


「ほう……これぐらいなら問題無いさ、そんな恐縮しなくていい。

どれ、幸い明日はお父さん仕事休みだからな。明日にでも買って……学校から帰ってきたらすぐにできるようにセッティングしておこう」


「うん、お願い。あと、ご馳走様。部屋に戻るね

……これで区切りを付けられる、それでいいんだよね……」


凪の言葉は途中から自身に聞こえればいいと言わんばかりに小さくなり、それを聞いた者はいなかった。

そして香織の悪巧みが始まる。


「ふっふっふー、おとーさん」


「な、なんだい? 香織」


「凪姉のお願いの事なんだけどさー

おとーさんは凪姉の願いって知ってるよね?」


「ああ……『感覚だけでも良いから自分の足で駆けるという事を楽しみたい』だったかな」


凪がいない場での香織のテンションに押されつつも、しっかりと答える圭。


「うんうん♪ それでね? その願いが初めて叶うのがこのゲームなワケ」


「それは……重要だが、かといってどうするんだ?」


「いやー、おとーさん物分り良くて大好き♪ 凪姉のハジメテなんだから、それはもう最高の物を用意してあげたいよねって、それでぇ……」


香織は自分の端末を弄り目的の画面を表示できたのか、それを圭の眼前に突きつけた。


「凪姉が言ったヘルメット型のVRギアじゃなくて、もっと高性能な病院でも導入されているベッド一体型にしようよ! 凪姉はラグとかそういうのとも無縁な完璧な世界へ御招待したい!」


「これは……価格とと消費電力量が高いなぁ……」


「それでも、私は凪姉の願いは全力で叶えてあげたいよ。おとーさんだって払えない額じゃないでしょ?」


「それはそうだが、しかし……」


「こんな高性能なギアって、欲を言えば私も欲しいけど、流石に凪姉へのお願いだけでも度が過ぎてるとは思ってるもん」


「自覚はしてるのか……はぁ、じゃあケジメだ

凪に買うギアをこっちに変えるが、その代わり香織、おまえのお小遣いは半年の間半減な」


「いいよ? むしろ一年全額カットって言わない分おとーさんは優しいよね。

一年全額でも思いっきり割に合わないのに」


「……そんな事言ったらお前だって困るだろう」


「んー? 別になんの問題も……いや、うん、困るね、実に困る」


「まだ稼いだことがないから分からないかもしれないが、金は大事だぞ」


「それに関してはまた確かによく分からないけど……、お小遣い無いって凪姉に気付かれたら気を使わせちゃうからね」


「……そうか、それでとりあえず相談事はこれで終わりか?

お父さんは少し疲れたぞ……」


「うんうん、無事お願いも通ったしこれで万事オッケーかな、ありがとーおとーさん

じゃあ私も部屋に戻るねぇ」


「まったく、あの子は……」


凪に続いて香織も自室へと戻っていき、圭はワインセラーからボトルを一本取り出し、ワインを一杯煽る。


「年頃の娘が考えてる事なんてお父さんにはよく分からないよ……」


弱気な圭の発言を聞く者は誰一人として居なかった。

そして夜は明け行く……。


―――――――――――――――


放課後。

凪が緊張しているのが見て分かり、香織もいつものように語りかけるのが躊躇われたのか、この日は最初から口数が少なく会話が弾まない。


「凪姉、いよいよだね……」


「そうね、帰ったら……」


「ねぇ、帰ったら一緒に遊ぼう?」


「やめておくわ。いくらゲーム内とはいえ、ちゃんと立って歩けるようになるまで時間がかかるだろうし、その間ずっと香織を引き止めておくのも違うもの」


「……分かった、でも待ってるから」


「ええ、ちゃんとプレイできるようになって、自信をもって横に並べるようになったら」


まるで死地へ赴く兵のように悲壮な顔をしながらも、凪たちは着実に家へと近づいて行く。


―――――――――――――――


自宅に辿り着き、まず視界に入った物は……。

凪から見て想定外、そして香織から見て当然と言えるモノ。


「父様、香織、何、この……、何?」


「何って、凪姉が御所望してたVRマシンだよ」


「えっ……、ヘルメット型、だよね? ……これベッドだよね!?」


「あー……、詳しくは香織から聞きなさい。

設置の為の業者さんが来たり色々大変で、お父さんはもう疲れたよ」


「香織? 香織!? 何したの?? ねぇ!!!」


凪は取り乱し、香織は姉の質問を流し、圭は欠伸をしながら自室へ戻る。


「まあまあ、そんな取り乱してたら楽しむ物も楽しめないよ、移動させるからちょっと私に掴まってねー、マニュアルは……」


「香織! 私知ってるよ!? これすごく高いやつだよね!? VRマシン紹介サイトに乗ってたよ!!!」


「……っと、成程ね。ソフトはもうインストール済みなのか……じゃあ」


香織は凪を抱え起こしながらマニュアルを流し読みし、読み終わるとVRマシンの寝台へ凪を押し倒し、諸々の作業を進めていく。


「冷たっ……! 香織! ねぇ! 聞いてるの!? 答えてよ!」


「んー? 聞こえてるよー 聞いた上でスルーしてるだけ……

よっし、これで準備完了かな」


「ひどい!?」


「それじゃ凪姉、ぉゃすみぃ~

ゆっくり楽しんで来てね」


その言葉を聴くと共に凪の意識は闇へと落ちていった。


「さて私は……どうしようかなっと」


香織の独り言を聴く者は此処には居ない。


海結莉 圭 -ウミユリ ケイ-

海結莉家の入婿

「お父さんは疲れたよ」が口癖となっている

割と高給取り

妻には事故で先立たれている

海結莉姉妹の父

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