2-03.成し遂げるは偉業か異形か
一応言っておくと主人公と敵との相性が良かっただけです
今後大型化していったり普通に固くなっていくとあっという間にダメージを与えられなくなるのがSTR無振りの宿命となります
戦闘開始から2時間が経過、リミリアside――――――
小休憩の間にログを確認していた麦茶とリミリアは雑談を重ねる
落葉とゼノは二人でも狩りを続けると元気に飛び出してしまったようだ
「システムログを見る限り、箒星は玉兎だけを狩っている……か
分配された経験値や金額を見る限り私たちの方が寄生だと言われても否定出来ないな
流石ボーナスMOBか」
「んー、まぁ纏雷をしっかり使えるだけの機動力があるなら索敵効率も良いはずだしねぇ
それに玉兎は紋章術やアイテム系と相性が良いし」
「ああ、これは本当に組み合わせが良かったというやつだな
しかし、あの速度下でのよく周囲の把握をできるよな」
「まぁWLOの方でも把握管理能力はずば抜けてたしね?」
「……まて、鉄華の司令塔ってあれはパーティの仲間がそれぞれ情報を提供して纏めあげていたって事ではないのか?」
「うん、確かにパーティは組んでたけどそういう話は無いよ
クランでも箒星が指揮は良くあることだったし……
あれ!? クランでの攻略ならまだメンバー全員のステータスを知っているからそこから予測っていうので見ずの指揮は分かるけどあれ野良レイドだったよね!?」
「少なくとも、あの話は確かに野良だったな」
「……玉兎狩りの話のついでに聞いてみようか
えぇと……会話対象を一般からパーティに変更っと」
PTメンバー同士であれば離れていても問題なく会話ができるモードに切り替える
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リ「PTメンバー一同聞こえてるかな、点呼!」
麦「麦茶」
落「落葉だよ、何か問題とか起きた? 集合するー?」
カ「俺だ、倒し終わるまでもう少し待ってくれると嬉しいけど」
箒「箒星、です」
リ「用があるのは箒星ちゃんだけだからゼノも落葉もまだ好きに動いてていいよー」
カ「わかった」
箒「私です……?」
リ「そうそう、箒星ちゃん
ログ見る限り玉兎だけを狙ってるみたいだけど、やっぱり攻撃アイテムと索敵力があると狩りやすい?」
箒「……? 普通に見つけたら蹴り倒してるの」
リ「……??? ごめんもう一度お願い」
箒「見つけたら、こう……ドリブルする感じで?」
リ「……そう、ちょっと想定外というか……
ごめん麦茶さん、少し変わってくれる?」
麦「嗚呼……玉兎は素早いから中々追い付けないし当然攻撃が当たらなくてな
主に取られる方法が、爆弾等の攻撃アイテムを一箇所に纏めて置き、そこに追い込んで爆殺する方法なんだ」
リ「そうそう、だから紋章術持ってさらに素早い箒星なら相性は良いかなって思ってたんだけど……格闘も取ってたんだね?」
箒「追いつける、蹴れるからそのまま……
それに、紋章書くのに止まると千里疾走切れちゃう、です……」
リ「まぁ……出費無しで狩れるならいい事なのかな?
それだけ速く動いてよく周りを把握できるよね、WLOでも把握能力がすば抜けてるのは分かってたけど」
箒「? できる人は普通に出来ると思う……です
リア姉も似たようなことしてたし……」
リ「まって
流石に私はそこまでできない、なんでそう思ったの?」
箒「似たようなことはしてるもん
えっと……リア姉
ゲーム始める時の利用規約とか、普通にスクロールバー掴んで一気に下持って行って同意にチェックいれてるから」
リ「まって他の人がいる所でそれは言わないで!?
それは読むのが面倒で読み飛ばしてただけなの!」
カ「あー、あるある
俺も面倒であれ読み飛ばすんだよな」
リ「まって、箒星あれちゃんと全文読んでるの!?
私と同じように一気にスクロールしてたよね?」
箒「内容を読んで同意するなら同意にチェックしてって書いてある……読まないの……?」
落「あぁぁルールを守らないダメな大人でほんとゴメンなさい!
こんな小さな子がちゃんと守ってるのに……」
麦「俺はちゃんと読んでいるが……やはり長いだけあって数分かかって面倒な気持ちは分かる」
リ「なんか想定外な所にも被弾してる……」
箒「えっと……倒した後、立ち止まらずに戦利品を回収するのがちょっと手間で、何か楽な方法、ないです……?」
麦「嗚呼……剥ぎ取りナイフは投げて刺してもちゃんと機能するぞ
いつのまにかちゃんと戻ってくるから気にせず投げるといい
ダメージを与える行動でもないから投擲スキルはいらない」
箒「ありがとう、です
狩りに集中します……」
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PT会話モードが終了して数分、沈黙を破ったのはレミナ
「……どうしよう麦茶さん、私の妹がニュータイプだった」
「WLOでのパリィシールド時に90度だけ回転すればいいのに態々一回転してたのは、そのタイミングで戦況を把握していた、という事なのだろうな」
「スティックを切り返して戻すのが面倒で、どうせ最終的に相手の方向けばいいやって倒し続けてた訳じゃなかったんだね……」
「落ち込む必要は無いと思うが
あの子は足が不自由だったのだろう、動けない分何かを見るのが好きで気が付いたらああなってただけかもしれないし、本人も周りと違うという自覚が無かったのだから尚更気付けなくても仕方ない
……それにしてもそれだけの精度を持つなら完全に特異技能だが」
「わかってますよー……気付けなくても可笑しくない理解はできますよー……それでも家族として、なんかさー……」
「ダル絡みするな、鬱陶しい
休憩は充分だろう、もうそろそろ戦闘参加しないと本当にただの寄生プレイヤーになるぞ」
「はぁーい……」
そうしてレミナ・麦茶は落葉・ゼノ組と合流し
時折ログに流れる大量の経験値とお金に乾いた笑みを浮かべつつ狩りを続けるのだった