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毒巫女32

<生存第一>ギルド内にある俺とちーちゃんの部屋に戻った後、ベットに座りなさいと言われた後に、ちーちゃんに、ぷんすか怒られた。

 暫く説教されて、漸くちーちゃんの怒りが鎮まってから、俺はギルド職員について勧誘してみる。

 詳細な内容を話した訳ではなく、大雑把に説明しただけなのだが、ちーちゃんはやりたいという意思を表明した。


「ギルドの大きさに比べて、ギルド職員が少ないから、仕事が増えると思うのですが、それでもいいのですか? 給料に見合わないかも知れませんよ?」

「それは困るけど、私も働き口が欲しかったし、ミラちゃんがいるなら心強いよ」

「嬉しいことを言ってくれますね! ちーちゃん、大好きです!」

 ひしっ、と抱き着く俺は、女の子特有の柔らかさを感じながら、幸せを感じる。

 しかし、俺のあしらい方を覚えたちーちゃんは、俺の頭を撫でた後、聖母の笑みを浮かべながら、「はいはい」と俺の腕を振りほどく。

 本当に一体、最初の動揺していたちーちゃんはどこに行ってしまったのか。

 まあ、ベッドの上でイチャイチャするという恋人のような絡み方が出来たので満足ではある。


「ねえねえ、ミラちゃん。この後、何をしたらいいのかな? 拠点に来ることが出来たから、このままここに引きこもった方がいいのかな?」

「うーん。とりあえず、まだ他陣営が戦力を揃えきれていない内に、私達はレベル上げに(いそ)しみたいですね。ただ、単独行動は禁止されているので、少なくとも三人は共に行動しなければならないらしいです。そういうわけで、ネズ先輩やフワさん、ついでにベトも誘いましょう」

「萌奈ちゃんは誘わなくていいの?」

「あの薬っ()ですか。ちーちゃんがそう提案するのは珍しいですね」

「私よりも年下みたいだから、接しやすいの。えへへ」

 萌奈に対しての壁がいつの間にか消えている。

 萌奈を要注意人物として見た方が良さそうだ。

 それにしても俺に対して、人見知りを発動することが無くなったのは、懐かれていると言うよりも、年下だからというオチじゃないだろうな。

 もしそうなら、好意を持たれていると思っていたのは勘違いということになってしまう。

 俺は、信頼しているからねっ♪ っという視線をちーちゃんにじーっと注ぐ。


「どうしたの?」

 それに対し、こてんと首を傾げたちーちゃんの姿に俺は撃沈した。

 やっぱりちーちゃんは最強なり。




 ※※※




 ミラ=ジョーカーが浅川千愛とベッドでじゃれ合っていた頃、同ギルド内部<生存第一>の七階、ホールや会議室が設備されている階層で、会議室に六人が集まっていた。

 その中の一人である森松剛士が現在のギルドの問題や今後の方針をどうするかと、議題を投げかけ、それに対し、六人が意見を交わし合うというのが、この会議室で行われるいつもの風景だった。

 そしていつもの様に、今日もギルドマスターから議題が投げかけられる。


「今回はミラ=ジョーカーをこの会議に参加させるかどうかを話し合ってもらいたい。とはいえ、突然見知らぬ名前を出されても困るだろうから、映像を用意した。ギュルダーブ」

「御意」

 黒ローブを羽織った鋭い眼光の若い男は、会議室の端に用意されているスクリーンに映像を映す。

 ミラ=ジョーカーの頭上から撮った、音声入りの動画が流れた。

 これは『巨大迷路』の遊戯終了後、ギュルダーブが同ギルド全員に、超小型カメラを飛ばし、髪の上に潜り込ませ、このギルドに入るまでの長時間の録画を一旦編集したものである。

 それに合わせ、フォックス狐が資料を配っていく。


「御手元の資料はミラ=ジョーカーの鑑定結果です」

「毒に特化とはまた奇特な」

「どうやら暗殺業にも手を出しているようですね」

「それにしてもさっきからやたらと浅川千愛という者の顔が映るのたが、カットしなかったのか?」

「いえ、これでもだいぶ削ってます」

「こんなやつをここに呼ぶのは不味くないか?」

「面白そうでもあるわよね」

 森松剛士が客観的に状況が把握できると判断した五人の意見が会議中に飛び交う。

 しかし、これらの意見はただの感想である。


「で、ミラ=ジョーカーの議席を確保するのは必要か不要か、自分の中でまとまったか?」

 森松剛士が言葉を発した途端、好き勝手に言っていた五人の口が止まる。

 ただ、これは森松剛士の言葉が鶴の一声であるのではなく、この後に続く多数決のためだけに黙っているに過ぎない。


「では、賛成の者は?」

 四人の手が挙がる。


「反対の者は?」

 二人の手が挙がる。


 その結果を見た森松剛士は、「次回からミラ=ジョーカーに参加してもらうことに決定した」と告げた後、反対派二人の意見を求めた。

 すぐさま、反対派のフォックス狐から意見を述べられる。


「私は完全に反対という訳ではないのですが、少なくとも浅川千愛が関わっている議題が出る場合にのみ、不参加にした方が良いと愚考しました」

「なるほど。では、葉亜嵐(はあらん)は何故反対だ?」

 眼光が鋭く、雰囲気が荒々しい野生の狼のような男は不機嫌そうに話し出す。


「一つはそこの狐野郎の言う通りだ。もう一つは単純に戦闘力が雑魚だからだ。俺らは少なくともこのギルドのトップ10には入る実力を有している。だが、このミラ=ジョーカーとやらはまともな攻撃手段が毒しかねえ」

「あら? それなら私は戦闘力ゼロですよ?」

 マイクロビキニに透き通る布を纏っただけの露出度の高い少女が、上品に笑う。

 外見は清廉潔白という言葉が相応しいにも関わらず、纏っている服は娼婦用であるということに底知れぬアンバランスさがある。


「うるせえ、腐れビッチが。お前は『蘇生』が使えるからいいんだよ!むしろ俺達はお前を全力で守らなくちゃいけないんだからな。ミラ=ジョーカーは違うだろ?」

「私はホーラって名前がちゃんとあるんですよ、野蛮人さん。決して腐れビッチとかではありません」

「あ? なんだと?」

「まあ待て、葉亜嵐。それに落ち着け、ホーラ。毒にも使いようは様々だろう。特に大量虐殺時には使える。人、魔物関係なくな」

「確かに雑魚ならミラ=ジョーカーはうってつけだろうよ。だがこの議会は公表した直後、失墜するだろうがな」

「ほおっほっほ。武力がある者こそ上に立つべきだと考えるやつもいるかも知れませんのう」

「まあ、それはその時考えましょう。そもそもこの議会を<生存第一>のメンバーに(おおやけ)にするかどうかもまだ決めてないのですから」

 ひとまず、葉亜嵐は不機嫌そうな表情を隠しもせずに押し黙る。

 フォックス狐はそれを見て胡散臭そうな笑みを浮かべた後、森松剛士に先を促した。


「では、結論として、ミラ=ジョーカーを議会に参加させる。ただし、浅川千愛に関する議題になった場合は不参加。そして、出来るならば武力も上達させていくということで相違ないだろうか?」

 全員が頷いたのを確認した森松剛士の「解散」という言葉で、議会は終わった。




 ※※※




 ちーちゃんとベッドでイチャイチャしてから1時間後、フワさん、ネズ先輩、ベト、萌奈を集め、早速魔物が湧き出てくる森に向かった俺達一行。

 太陽が真上を通り過ぎた頃に、薄暗い森の中へと足を踏み入れた。


「うーん。用がなかったらあんまり入りたくない場所っすねー」

「魔物はねー、暗いところを好むって聞いてるよー! でも明るい場所でも問題は無いらしいけどね」

「ベト、魔物としてはどんな感じなんですか?」

「そうだな。暗いと落ち着くとかそんなレベルだ。日光を避けるために暗闇を歩く吸血鬼のような大層なもんでもねえよ」

 じゃあ、ここに来たのは間違いではなかったということか。

 俺は前方の草木を気化させた毒で枯らしながら、道を作っていく。

 そうすると、枯らした道が出来るので遭難することは無いし、敵が来ても闘い安いだろうという俺の配慮である。

 まあ、本当は草木があるとちーちゃんが歩くのが大変そうだったからだが。


「森全体を枯らせないんすかー?」

「枯らせなくはないですけど、時間がかかりますし、居場所を無くした大量の魔物が街に降りていかれたら、街がもちませんから」

 フワさん、意外と過激だな。

 流石に危ないから止めようと思ったところ、フワさんからの提案は少し考えざるを得なかった。


「でもこの程度の森ならあたしらで対処できそうすっよね」

「……では枯らします?」

 全員を見回しても、意外と首を横に振っている人はいない。

 普段怖がりなちーちゃんでさえ、肯定はしていないが、否定もしていなかった。

 本当に大丈夫かよと内心思いながら、俺は毒を大量に気化させて、森を囲むように毒をばら撒く。

 その間、俺達は森を抜けて、失敗しても街の方に魔物が行かないように、俺たちの背後が街にならないように、場所を移動する。

 そして、俺たちのいる方向にだけ、魔物が一気にここに駆け込んでくるように、毒霧に穴を開ける。

 ここまでに既に1時間はかかっている。

 というか俺の負担が大きすぎる。

 いくらノーリスクで使えるスキルだからと言っても、流石に操作する集中力が補われる訳では無い。

 しかも傍から見れば俺が棒立ちして、むむむと唸って居るようにしか見えないだろう。

 実際は見られるまでもなく、ネズ先輩は剣を素振りしていたり、萌奈とフワさんはみかん当てゲームをしていたり、ベトは身体を延ばして日向ぼっこを楽しんでいる。

 応援してくれているのはちーちゃんだけだ。マジ天使。


「そろそろ戦闘準備してくれると助かります」

 全員からオッケーという返事を貰った瞬間、森を囲んでいた毒霧の範囲を狭めていく。

 一応、地図に載る程度には大きな森なので、じわりじわりと狭めていっているだけだが、感覚の鋭い魔物なら、十分パニックを起こして、不自然に毒霧がない所に向かうはずだ。

 ぶっちゃけ、俺が毒で森を覆っても良かったのだが、それだと俺以外に経験値が入らない。


 ★★★

『毒制御Lv.9』→『毒制御Lv.MAX』

 レベルが上がりました。


『毒制御Lv.MAX』を媒体に新たなスキルへと進化しました。

『毒制御Lv.MAX』→『猛毒精密制御Lv.1』


『猛毒分泌器官Lv.7』→『猛毒分泌器官Lv.8』

 レベルが上がりました。


『猛毒精製Lv.6』→『猛毒精製Lv.7』

 レベルが上がりました。

 ★★★


 だから、こう遠回りの戦法にとっているわけで、漸く成果が(あらわ)れ出した。

 まずは四足歩行であり素早い魔物から。

 土埃を巻き上げながらやってくる魔物に対し、相対するのはフワさんとちーちゃん。

 フワさんが地面と並行に『風魔法』である刃に(かたど)られた風を大量に放つ。

 そして、ちーちゃんも『水魔法』で、弾丸状に圧縮した水をマシンガンのように撃って敵を一掃。

 ちーちゃんにこんな感じでやってみたらと、イメージだけ伝えたのだが、意外とちゃんと出来るものだな。

 残りの打ち漏らしは、ネズ先輩とベトが確実に一匹一匹倒していく。


「こんなに一網打尽出来るのは爽快っすねー」

「うわわ。血がいっぱい出てる……」

 いい仕事をしたと一汗を拭う仕草をするフワさんと、自分がしたことに怯えるちーちゃん。


「でも、こんなことで挫けてたら、生きていけないよね。ミラちゃんにも迷惑かかるし……」

 こっそりと健気に気合を入れ直しているちーちゃんを見ると、応援してあげたくなる。


「ちーちゃんー!! 頑張ってくださーい!」

 聞こえるように、珍しく俺は声を張り上げる。


「……恥ずかしいよぉ。でもありがとう」

 うぬぬ。子供の運動会で懸命に応援する母親のようなものか。

 親にとっては子供の頑張りが嬉しいのだが、応援される子供にとっては気恥ずかしさが増すのだろう。

 ちーちゃんに、恥ずかしい思いをさせたくない俺は、あまり大声で応援しない方がいいのだろうか。

 今度、耳元で囁くように応援してみよう。


 よし、そろそろ魔物の大群の本部隊が到着である。

 ゴブリンやオーガ、オーク、ワイバーンやハーピィなどが中心となっている。

 というかここに魔物の大半が含まれている。

 先程と対応は大した違いはないが、空を飛ぶ魔物に要注意だ。


「……毒霧で森の上空を蓋するの忘れていました」

 俺が自分のミスを少し悔いている間にも、状況は進んでいく。

 今更毒を上空に出しても、魔物の羽ばたきのせいで、どうしても拡散してしまう。

 俺は少しでも挽回できる手段がないかステータスを見た。


 ★★★

 名前:ミラ=ジョーカー

 性別:女

 種族:人間

 等級:109

 (陣営:遊戯神イルサーン)

 寿命:17/410

 条件スキル:『限界突破』(『猛毒分泌器官Lv.8』)

 固有スキル:なし

 特殊スキル:『陣営鑑定(固定)』『毒味覚』(『猛毒精製Lv.7』)『毒吸収Lv.1』『猛毒精密制御Lv.1』

 希少スキル:『テリトリー視覚化Lv.2』『猛毒耐性Lv.6』

 一般スキル:『逃げ足Lv.8』『毒耐性付与Lv.3』

 SUP:225

 ★★★

小説を書くのはやっぱり難しいですね。

状況とマッチした言い回しは自分の知識の中にないと書けないし、その状況を頭の中で想像できてないと情景描写が書けない。

だから調べるのだけど、どう調べたらいいのか分からなかったりする。

頭脳戦だって書きたいけど、筆者の頭の良さが上限だとも聞いたことがある。

つまり、何が言いたいのかと言うと。








賢くなりたいッ!


超スローペースにもかかわらず、読んでくださりありがとうございます。

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