006
「おじゃまします」
「いらっしゃい」
そう、渋い声とともにかなり強面のおじさんが出てきた。
「ひっ!」
「ひっ!とは、ひでぇじゃあねぇか?客か?」
すごい力で肩をつかまれた!逃げられない!
「は、はい…。」
「お!そうか!うちの嫁さんの仕立てた服は、どれも一級品だぞ!」
「でも、俺お金があまりないので…。」
「大丈夫だ!どれも古着を仕立て直してあるものばかりだから値段も安い!」
「じゃあ、キメの細かい布ってありますか?」
「あるけど、そんなものどう使うんだ?」
「自分は、薬師なもので水薬を濾すのに必要なんです。」
「へぇ、お前薬師か!おう!わかった。それなら切れ端があるからいくつかやろう!」
「おぉい!マリア!」
「はぁい!」
大きな声とともに奥から若いというより幼い娘が出てきた。
「どうしたのマイク?大きな声で呼んで」
「この、薬師のお客さんが布の切れ端が欲しいそうでな、何か余って無いか?」
「切れ端ねぇ?」
考えるような素振りをしだした。
「あ、あの、なければ別に構いませんが…。」
「いやね?有るんだけどどれぐらい必要かな?って思って。」
「3、4枚貰えればありがたいです。」
「わかったは、いくつか持ってくるわね?」
そう言うと、あわただしく奥に入っていった。
「おう、お客さんよぉ。なんか品物も買ってくれると、ありがてぇんだがなぁ?」
忘れてた…。
「そ、そうですね。なにか、マントのような強い外装は、無いですか?」
「おう!マントだな?だったらこれだな!」
そう言うと、棚から黒い布の様なものと茶色革の様なものを出してきた。
「こっちの茶色い方は、ブラウニーウルフっていう魔物の革で出来ている外装だ!かなりの丈夫たが水に弱い。濡れたらふく必要がある。だが、そこいらの魔物の牙ぐらいじゃあびくともしねぇ。」
「で、こっちは、ブラックスパイダーっていう蜘蛛の糸から、編んだマントだ。こっちもかなり丈夫たが、こっちは、火に弱い。だから火を吐く魔物には、あまり意味はねぇな。だが、そこいらの魔物の牙や、槍や剣じゃあ貫けてねぇな。」
ふむ、水に弱い革製品か火に弱い布製品かだな。後は、値段次第だな。
「あのぉ、お値段は?」
「値段?値段は、ブラウニーウルフの外装が100G、ブラックスパイダーのマントが70Gだな。」
うん、ブラックスパイダーのマントだな、お金がねぇわ…。
「じゃあ、ブラックスパイダーのマントを頂けますか?」
「毎度あり!丈も直せるが一応着てみるか?」
「はい、着させていただきます。」
着てみると少し丈が長いが寝る時に布団代わりになりそうなぐらいに暖かいが、重くなくちょうどよかった。
「これ、いいですね!暖かいし、それに丈夫そうだ。」
「そうだろう!かなりいいやつだし、本来高いやつだしな」
「えっ!本当にこの値段でいいんですか?」
今さらダメとか嫌すぎる、これは、良いものだ。
「だから言っただろ?70Gだって。うちの嫁さんが冒険者から、買い取ったボロを、直したのがそれだ。」
これが、古着!?嘘だろ。
「すごい、腕ですね。」
「ふふ、ありがとうございます。」
声の方をみるといくつか布を持ってマリアさんが立っていた。
「いえ、本当に素晴らしい腕ですよ。」
「いくらおだてたってこれ以上は、お安くできませんよ?そのお値段には、この布のお代も入っているんですから。」
「いえ、これだけの品質でこの値段ならかなり安いですよ!」
「がはは!そうだろう!うちの嫁さんの腕はこの、トレルの街で一番よ!」
今さらだが、この街ってトレルって言うのか。
「そうですか、というよりこの街ってトレルって言うんですね?」
「お?お前よそ者だったのか?」
「はい、飢餓の大草原で迷ってしまいここにたどり着きました…。」
「そうか、それは大変だったな。あの、草原は食うものが何もねぇからな。」
「いえ、自分はスゴ草を食べて何とかのりきれました。」
「おい!お前体は、なんともないか!?」
いきなり肩をつかまれ心配された。
「は、はい大丈夫ですし、この街についたのは昨日です。」
「お前本当に運がよかったな…。スゴ草には、よく似たシニ草って毒草があるからな。飢餓の大草原では、毒草が色々生えてるから食っちゃあいけねぇよ。」
「だ、大丈夫です。自分は、薬師ですので毒草と薬草の見分けはつきます。」
「お前、いい腕してるんだな。」
「そうね、確かにすごいわ。」
「そうですか?薬師なら誰でもできると思いますけど。」
「いや、その見分けが出来ねぇから皆死ぬから飢餓の大草原って言うんだよ。あそこにはホーンラビットやスライムすらいねぇ。皆、間違えて毒草くって死ぬからな。」
「だから、魔物と一度も会わなかったんですね?」
「そうだな。よし!飢餓の大草原を越えて来た英雄に餞別だ!これを着けて100Gでどうだ!?」
そう言うと、マイクさんはマントと同じ様な色の服を取り出してきた。
「これは、そのマントの残りの布とブラックシープって魔物の毛から作った服だ。」
確かによさそうな服だか、これを買うと完全に赤字だし門番さんから50Gを返してもらっても24Gしか残らなくなる。しかし、良いものには間違い無さそうだ。
「これは、ほぼ原価だから、これ以上安く出来ねぇからな!」
今の服もボロボロだしちょうどいいか、
「わかりました。買います。でも、いまお金ないので明日まで残しておいてもらってもいいですか?」
「おう!いいぞ!なら、そのマントだけでも持ってけ!」
「なら、マントの分の70Gは、置いて行きますね。」
「おう、ありがとうよ、じゃあ明日こいよ!」
74g→4G
宿に戻ったら、また、薬作らなきゃ…。お金がマジでねぇ…。
あ、マントの鑑定してなかったな
"鑑定"
ブラックスパイダーのマント
製作者 マリア・ロー
防御200 魔法防御150
弱点 火
特に切る、刺すに強い。ブラックスパイダーの糸から編まれた布の為保温性が高く、暑いときは涼しく、寒いときは、暖かい。
「すげぇ、性能面だけど防御とか、魔法防御とか、わからんな。」
宿につくと、メリッサさんに夕食の時に呼ぶように頼み部屋に戻った。
「あい!わかった!ゆっくり休みな!」
とりあえず、売るようの丸薬を作るか。
回復の粉薬は、出来た。
ここからが昨日までと違うな。
「部屋に干していた、カタマリ草を薬研で細かく砕くと…。」
コシュコシュコシュコシュコシュ
「でこれを回復の粉薬と混ぜて乳鉢、乳棒ですると。」
ゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリ
「あれ?かたまらない?」
いくらすってもすってもかたまる気配がない。
「間違えたか?」
"鑑定"
未完の回復の丸薬
高品質の回復の丸薬の元。しかし、水分が無いのでカタマリ草がかたまらない。
「あぁ、なるほど確かにな。」
"作水"
チョロチョロ
「これを手でこねてと。」
コネコネコネコネ
「べちゃべちゃだな。」
"鑑定"
回復の軟膏(下級)
水分量が多過ぎて軟膏としては、使いにくく垂れてくる。
飲んでも効果がある。
「違うものができた上に失敗したな。水が多かったか。」
ストレージから、試験管を取り出した。
「色々試してみるか。」
試験管は、3つしかない。それぞれの試験管に1:1の割合でナオリ草とカタマリ草の粉末を半分まで入れた。今までは、大体の目分量でいれていたが、今回は実験なのできっちりとしようと思う。これで、品質が上がれば今後も計ろうと思う。
一つめの試験管には、
ナオリ草:カタマリ草:水
3:3:1
で混ぜよう
二つめの試験管には、
2:2:1
三つめの試験管には、
1:1:1
これで、一つづつ乳鉢、乳棒で混ぜてみよう。
コネコネコネコネコネコネコネコネ
できた。
これを手でこねる。
コネコネコネコネ
「そうだ、大きさも揃えてみるか。」
天秤を使って大きさを揃えた。
重さを1G銅貨を元に合わせた
大きさが直径1㎝ぐらいになった。
「よし、これで、いいかな?二つ目、三つ目は、多分ダメだな…。一応鑑定するか。」
"鑑定"×3
回復の丸薬 濃茶(高品質)
かなり品質のいい丸薬。効果も高い。
しかし、味は苦く不味い。まだ、水分が多いので保存には、むかない。
止血作用(高)痛み止め(高)回復促進
回復の軟膏 (かたまり)(下級)
回復の軟膏だが、水分が少なく塗りにくい。だが、薬効が高くよく効く。
止血作用(やや高)痛み止め(やや高)回復促進
回復の軟膏 (やや高品質)
傷口に塗りつかう薬。傷口に塗ると染みるが血が止まり早く治る。
止血作用 痛み止め(やや高)回復促進
「とりあえず、一つ目と三つ目は、使おうかな?一つ目の丸薬は、名前変わってるな。」
乾燥が終わったナオリ草とカタマリ草をすべて下ろし新しいナオリ草とカタマリ草を干した。
そして、乾燥させた、ものをすべて丸薬にした。
「結構な量になったな。あ、水薬忘れてた!」
ストレージから、水薬の入ったビーカーを出した。
「これを今日もらった布で濾そうかな?」
もう一つのビーカーをストレージから出し、口に目の細かい布を置いた。
そこに水薬をゆっくりゆっくり流し込んだ。
「よし、もう2、3回濾すか。」
それから布を変えて3回濾過した。
「よし、鑑定してみよう。」
"鑑定"
回復の水薬 緑 (高品質)
即効性のある回復薬。ある程度のケガは、治るが骨折や、内臓のケガには、効果が薄い。
痛み止め(やや高)止血作用 回復促進(高)
「おし!成功!でも、手間がかかるな…。一度に多く作れば時間短縮になるかな?」
作った薬をストレージに収納した。
「よし、じゃあこれからは少し戦闘用の薬を作るか」
ラリリ草×300
ナオリ草×100
ヤバ草×30
カタマリ草×416
ハッカ草×194
ホゾン草×124
スゴ草×9
シニ草×49
???×??
回復の丸薬 濃茶 (高品質)10個セット×50
回復の水薬 緑(高品質)×1
回復の軟膏(下級)×1
回復の軟膏(下級)×1
回復の軟膏(やや高品質)×1
回復の丸薬 (下級)×5
回復の丸薬 (最下級)×5
薬研
乳棒、乳鉢
天秤
ビーカー、試験管
ランプ
ガラス棒
スポイト
採取ナイフ
薬瓶×10
ブラックスパイダーのマント