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オーナーの名はシャララ~


今日は無理やり定時に仕事を終わらせて待ち合わせの駅に向かう。誰かとこうやって待ち合わせして家に帰るのも久しぶりだ。いつぶりだったけ・・・。


今日の夕飯は手軽にカレーでも作って食べよう。きっと二人はカレーを見て驚くだろうな。


駅につく頃に向こうからこっちに気づいたのかやつはもう一人誰かを連れて向かってきた。


「アナタが田中ちゃんね~」

「え」


このオカマはどなただ。本物のオカマ初めてみたんだけど、意外と肌きめ細かいな。おい。大丈夫なの子の人?


「あの、うちの者が何か失礼を?」


私はやつの腕を掴み、自分の背より後ろに引っ張り込む。


「いやね~失礼なんてしてないわよ~」

「じゃあ。なんですか。・・・。はっ・・・」


もしかして・・・。


「もしかして、他人の借金肩代わりさせるためにサインさせました!?」

「アナタも私を成金呼ばわり!?もぉぉお!怒ったわぷんぷん」


ぷんぷんとか実際言う人初めて見たけど、この人違和感ないな。


「じゃあ・・・なにか」

「もう、そんなに警戒しないで頂戴な。私はこういう者よ」


するとオカマは名刺を一枚出して渡した。

『執事喫茶アニマルロゼ オーナー シャララ』


「シャララ・・・えっと。独特なお名前してますね~」

「偽名よ~。シャララっていう効果音あるでしょ~。そこから取ったのよ。背景に星とか花とか見えそうでしょう?しゃらら~~」

「ええ。まあ」

「執事喫茶をしてるんだけど、偶然彼を見つけてスカウトしたのよ。でも彼ったら、田中ちゃんが紙にサインするなって言うんだもん。アナタに直接許可貰いに来たのよ~」

「執事喫茶って・・・うちの者は役に立つか分かりかねます。それに、執事喫茶ってあまりイメージ良くないんですよね。最近じゃあ、風俗と大差ないって不評が多いみたいですし。うちの者にボディータッチとか、ストーキングとかされたら困るんですよね」


やつはあまりボディータッチが好きじゃなさそうだし。昨日寝る前の事だ。皆お風呂もすまして、寛いでいたら、部屋のあちこちに動物の黒い毛が落ちていてなんだこれと思ったのだ。やつが人間の姿を解いて獣化すると私とレオの寝る場所がないのでしょうがなく人間の姿で過ごしてもらう事になった。しかし、完全に尻尾と耳を隠すのは、結構窮屈なんだそうだ。


「猫耳と猫尻尾+人間の時と何が違うのさ」

「その時は、ぴちぴちの水着来ている感覚なんだよ。分かるだろ。ケツに食い込む感じ。慣れればどうってことないけどな。で、完全に人間の姿は全身に着ぐるみ来てるみたいで窮屈。若干息苦しい」

「着ぐるみか・・・。なんか悪いわね。こんな小さい部屋で」

「別にいい。住まわして貰ってるしな」


水着着たことあるのかよって突っ込みたくなったけど、あっちの世界にも水着あるのかなと自己完結した。たしかし、全身着ぐるみを一日着てるのは大変そうだな。でも、この毛はいただけないな。

そう思って、寝る前にコロコロで部屋中コロコロしたあと、自分の家かのように布団の上で弟とじゃれているやつの太くて長い尻尾がくねくね、ゆるゆると宙をさまよっている。なんだこれ・・・ちょっと癖になりそう。ていうかこの尻尾から脱毛してね?


櫛を持ってきて、やつの尻尾に通してみる。根元から尻尾の先へスルリと櫛を通すと、ビクッと尻尾か天井めがけて立ち、毛が静電気を帯びたように八方を向く。お、なんだこれ。尻尾は別の生物みたい。


「お、おい。なんだよ。びっくりした」

「あ。ごめん。いや、毛が落ちるから、だったらムダ毛は先にすいてしまおうかと思ったんだけど、嫌だったんだね。悪いわ。次からしないから」


そう言ってさっさと櫛を片づけた。やつは私をじっと見て再び弟と遊ぶ。


こういう事があったので、やつは他人に触られるのは好きじゃないのかなと思った。レオは率先して私に甘えてくる。小さいレオは虎の姿で家中を駆け回り、櫛を通すと気持ちいみたいで喉を鳴らしたりもする。虎も虎で好き嫌いが違うようだ。




―――――――――。



「失礼ね!!うちは正統派執事喫茶なの。今時、萌えだけを追求するバカみたいなメイド、執事カフェとは天と地の差よ!!ついてらっしゃいな!」

「え、ちょ、痛いんですけど。って、あんたも後ろから押さないで!歩くから歩くから。躓くってば」


オカマに右腕を掴まれて強引に連れてかれ、後ろからはやつに両肩をしっかりホールドされて押される。






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