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funk  作者: 彩華
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ようこそ

「改めて!ようこそfunkへ!」


こうして私と、あと流れでモネさんも。ここにしばらくお邪魔する事になった。


「で。予算の厳しい我が拠点にはだ。各自室、それから風呂、食堂兼会議室、あと執務室とこの申し訳程度の応接室しか、ない!」

「おう」

「あたしの部屋とトロイアの部屋に狭いけど入ってもらうしか現状ないね……眼前の問題としては寝床だけど」

「そんなのは床で寝れば……!」

「あ゛?」


自分に言ってるのか、とルート姉さんが睨みつけると黙り込むカテーナくん。どうやらやっぱり序列としてカテーナくんはルート姉さんに敵わないらしい。


「流石にカイちゃんや神官のモネちゃんをソファとかに寝かすのもなーかと言ってオレのベットで寝かすのも……なぁ?」

「断固!拒否だ!!俺が認めん」


どうやら思ったより余裕はないらしい。その様子を見ていたトロイアちゃんが閃いたように口を開く。


「複製魔法、カテーナさん使えましたよね?」

「あっ」


と、言うことで少し部屋が狭くなってしまうけど魔法の力でベットを複製してくれた。三日ほどで消えてしまうらしいけどこの魔法そのものは凄いらしい。


「えっ凄い凄い!カテーナくん凄い!」

「有難き幸せ!」


なんだかカテーナくんのキャラがブレブレな気がするけど大丈夫なんだろうか。私に対しての気合が空回って見えるんだけど。


「ぼ!ぼくは魔道士としてモネさんと同室がいいなっ」

「ん?意外だね。まぁいいけど。よろしく、カイ」

「姉さんよろしく」


とまあ、部屋割りが決まった。すごいカテーナくん。もちろんお金の複製は違法だそうだ。


お風呂にコンロなんかは魔法を使った製品で魔法具ってモノを使ってるらしい。素人目にはエネルギーの問題で捻ると水は出るし火も出るし、さして前の世界と変わらない。シャワーが主流で湯船にはあまり入る習慣がないみたいだけど。因みに一番風呂を頂いたこの後私の入った湯船に入ると美肌効果があったとか疲労回復したとか言われるようになるのだけれどそれは少し先の話。私は出汁じゃないぞ!


「明日は服を買いに行かないとね」


大きめのベットを並べてツインのように寝る。風呂上がりの姉さんの毛並みはふわふわだ。


「…………」

「そう気にしなくていい。あたしたちはお人好しで好きでやってるんだ。たとえあんたに加護なんてなくても……ここに居てもいい。それがバカが四人揃って出した答え。それにほら、拾ったら最後まで面倒見ないとじゃん?」

「……ふふっ、拾ったら……そうだね。自然には帰れないし」

「そう!あたしらは問題児異端児バカの集まり!そこに1人イレギュラーが増えようと神官1人増えようと構わない!がははははは!!」

「姉さん痛い痛い」


ばしばし叩かれてなかなかどうして力加減されてても痛い。因みに寝巻きは姉さんの古着を彼シャツの如くお借りした。


「あんたほんと脆そう……」

「エルフも儚いと思うけど……」

「エルフはあれで結構頑丈でしたたかなんだよ。こんなに柔らかそうじゃないからね」

「………普通転生モノって強くなると思うんだけどそうは上手くいかないね」

「あんたはもう群れの仲間だ。そんな端に行かなくていい」


大きな体に後ろから腕が伸びてきてもふもふの体に抱き寄せられる。あ、やばいタイプのやつだ。


「たとえ天上人でも何歳でもこの世界においては子犬みたいなもんだ。子犬は黙って大人にくっついてりゃいいんだよ」

「………兄弟とかいたり」

「しない。でもここに来たチビはこうすると黙る」

「トロイアちゃん?」

「あれもな」


頭を大きい手のひらでぽふぽふたたかれる。これ、惚れそうなレベルで破壊力高い。姉さん恐るべし。男前ならぬ女前。でも、ふわふわの毛並みに包まれて目を閉じると本当に子犬になったような気がして。慣れない石鹸の匂いも気にならないほど、ぐっすりと。その意識は落ちていった。


夢の中、私は久々に思い出す。

誰がやったのか木に括り付けられていたヘプタを助けて、それで悩みながらも手を差し伸べた以上は面倒を見るべきだと。ユニの隣にもう一つ、住処を用意してヘプタと名付けた蛇の世話をする事にした。衰弱していたヘプタ。私の手から餌を食べてくれたヘプタ。ヘプタの最後は、どんなものだったんだらう。ヘプタの毎日は幸せだっただろうか。


『幸せでしたよ、主人』


そんな声が、微睡みの波に呑まれて消えた。


「……ふぅ」


小さな、柔らかい生き物の眠りを確認する。この爪でうっかり切り裂いてしまいそうな肌。引っかかったらすぐに取れそうな爪。真っ黒な髪。


これは寝返りうったら潰しそうだ。


「今日は徹夜かね……」


溜息ですら、この人間を吹き飛ばさないか不安になる。言い伝え通りならば、人間とはもっと強固な個体のはず。勇者という役割をあてがうに適した、そんな存在。だが眼前の彼女はどうだ。どちらかといえば守られる側の印象を受ける。頭の固いダリュウのバカ共に見せてやりたいぐらいだ。嗅ぎ慣れぬ匂いから再度種族の違いを感じながら、金の瞳を閉じた。バカに見つかる前にせめて彼女には常識を与えなければならないと、胸に改めて刻みながら。

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