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僕と私の異世界革命  作者: 空原琉火
第一章 波乱の胎動
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第四話 願いの為に

 「おい、ディエル……。本気で言ってるのか!?」


 ディエルの話を聞いた僕は思わず怒鳴っていた。それだけディエルの放った言葉は思いがけない、衝撃的なものだった。


「ゲートは開かない。だからヨシノを論文のメインに据えようと思う。ヨシノが異世界人だということを証明すれば異世界の存在も同時に証明されるはずだ」


 耳を疑い、ディエルに言い寄る声が思わず大きくなる。


「ヨシノを論文の題材にすればそりゃあ証明は簡単にできる。だが本当にそんなことをしたらヨシノはどうなる!? きっと国に貴重なサンプルだと言って拉致監禁されてしまうぞ! もう僕らのために誰かを失うなんてできない!!」


 ヨシノは何てことない、普通の人間だ。ただ住んでる世界が違うというだけ。僕らはよくわかっていることだ。だけど国は違う。異世界に住む人間だ、きっと何かあるに違いない。そういってヨシノに対して何をしでかすかわからない。当然、そんなことさせるわけにはいかない。


「そんなことはわかってるさ。だけど、俺たちはやらなきゃいけない。この国を変え、故郷を取り戻し、そしてシャノンを取り戻す。それが俺たちの目的なんだ」


「そりゃあそうだけど……っ!」


 ディエルは焦っていた。その理由は僕も知っている。今度の弁論大会を最後に、異世界研究室に対する国からの研究資金の提供が終了するからだ。

 なぜか、そんなの簡単だ。結果を残せていないから。異世界研究の最盛期は国が学者たちに提供する研究資金のおよそ四割もが充てられていた。研究している人数が多かったことに加え、それだけ期待がかかっていた証拠だ。だが例の一件、異世界の存在否定以降、資金額も人員も右肩下がり。そして今回、ついに資金提供打ち切りが決定されたのだ。

 資金提供なしという事は事実上研究室の取り壊しと同じことを意味する。だからこそ、このチャンスを無駄にするわけにはいかないのだ。あ、だからといってヨシノを国に売るような行為はさすがにどうかと思うが。


「俺だってこんな手段取りたくはないさ。……わかってる。できる限りヨシノに迷惑はかけないようにする。この作戦はあくまで最終手段。一か月後の論文提出期限までに何とかゲートを開く方法を模索してみるよ」


「本当に、頼んだからな……!」


 僕が何度も念を押すとディエルもうんとしっかり頷いてくれた。もうこの男を信じることしか僕にはできないのだ。


「……それでヨシノには話すのか?」


「ああ、ヨシノを論文に持ち出すと決まったらな。それまでは決して言わないさ」



 ――――――



 ディエルと話を終えた僕が研究室に戻ると、ヨシノはピールとミコのじゃれあいを眺めてにこにこしていた。


「お、おかえりリオン! 突然なんじゃけど、ピールって喋ることができるんじゃね!」


 さっきまで君絡みの大事な話をしてたっていうのに、呑気なもんだ。まあ元気な方がヨシノらしい。少しばかり後ろめたい気持ちもあるが、知らないでいてくれた方が僕らもやりやすいかもしれないな。


「ああ、ピールは魔法生物って言ってね、普通の生き物とはちょっと違う。魔法生物はそれぞれ、何かしらの特別な力を持っているんだ。こいつの場合は人間の言葉を話すことができるって力だな」


 ピールは元々僕の妹、シャノンが飼っていた小鳥だ。シャノンにものすごく懐いていて、友達のような、家族のような不思議な存在だった。そんなシャノンがいなくなってもう二年になる。ピールもシャノンがいなくなってからは目に見えて元気が無くなってしまった。

 だが、ヨシノとミコとはウマが合うらしい。久々に元気そうにしている。元気がないことを少し心配していたのだが、ひと安心だ。


「全く、リオンはいつもボクのことを子供のように扱う。ボクの方が年上なんだからな!」


「また偉そうに……。自分で食べるものも調達できないくせによく言うよ」


 魔法生物の寿命はかなり長い。僕よりも年上、というのは事実だ。だがどうも生意気なのが気にくわない。


「わー! カワイイなぁ。ピールちゃん、よろしくな。ウチのミコとも仲良う頼むけ!」


「ぴ、ピールちゃん!? そ、そうかよろしくな! リオンよりも良くできた子だな!」


 ちゃんづけされて浮かれている変態鳥を一瞥しながら僕はヨシノにある提案をした。


「そういえばヨシノ。この世界に来てから外に出たことってまだ無いよな」


 ヨシノがキョトンとしてこちらを見る。


「外? ……そういえばそうじゃね。外か、考えてもみんかった!」


「じゃあとりあえずそのセーラー服? とかいう服じゃ目立ってしょうがないから服でも買いに行こうか。……明日にでもどうかな」


 今日までヨシノには寝間着としてシャノンの服を貸していたが普段着は相変わらずセーラー服とかいうかわいらしい服を着ていた。この格好で街をふらつかせるわけにはいかないから、とりあえずシャノンの服を着させて買い物に行こう。

 ヨシノも嬉しそうにピョンピョンと飛び跳ねている。……それをやられるとちょっと見えそうだからやめてもらいたい。かわいいのだが。



 こうして話はまとまり、明日は街へ出かけることにした。ミコは珍しい動物だからあまり人目につけるわけにはいかないのでお留守番ということになるが、ピールがいるからまあ大丈夫だろう。鳥だけど一応頼りにはなる、一応。鳥だけど。

 そういえば僕自身も街に行くのは久しぶりかもしれない。昔は僕とシャノンとディエルの三人でよく出かけたものだ。あの頃が懐かしい。

 ……この論文が上手くいけばまたあの頃のように気兼ねなく三人で歩けるのだろうか。そうなって欲しいと思うとともに、僕の脳裏には一抹の不安もまた浮かんでいた。

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