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はじまりの界

「おっはよー‼︎‼︎朝か〜ら〜おっはよ〜うのキス♪い〜ま〜から〜さぁ、出かけ…バン‼︎‼︎‼︎」

「おっはよー‼︎‼︎朝か〜…バン‼︎‼︎‼︎」

「おっは…バン‼︎‼︎‼︎」

「お…バンバンバンバン……」

「うっるせぇぇぇぇぇぇよ‼︎‼︎‼︎」


美少女目覚ましフィギュア、アリスちゃん、計4体、俺の手によりバラバラとなり他界。


「あ、やべ‼︎やっちまった‼︎ごめんよ、アリスちゃん‼︎朝はアイドルの声に囲まれて起きるのが幸せかと思ったら、やっぱ朝はアイドルでもムカついちゃったわ!」


あー…このアリスちゃん目覚ましは限定版で5体集めるのにどれだけ苦労したことか……ん?そうか‼︎

ベッドから起き上がり、部屋においてある漫画、ゲーム、フィギュア、抱き枕etc…の山を掻き分けながらパソコンの置いてある机まで進む。


「やったー‼︎‼︎生き残っていたんだね、5号‼︎‼︎‼︎パソコン側にも置いといてほんと良かったわ。あは、あはははは‼︎」

「おっはよー‼︎‼︎朝か〜ら〜おっはよ〜うのバン‼︎‼︎‼︎」


……………5号、他界。


「勇太〜、朝ご飯できたから下りておいでー。」

「………………………うん。」


俺はゴミ袋に先程までアリスちゃんだった残骸と食べ散らかしていた大量のお菓子を入れ、階段を下りて、顔洗い、歯磨き諸々を済ませて朝食へ赴く。


キッチンでは、母さんが器用に片手で卵を割りながら、目玉焼きを作っていた。


「おはよー、ちょっと皿をテーブルに並べといて。」

「おーう、あ、ゴミが出たんだけど。」

「じゃあ、ゴミ袋からそこのゴミ箱に中身移しといて。」

「あいよー。」


そして、元アリスちゃんを含めたものをゴミ箱に移していく。


「勇太、よく聞きなさい。私は、別にあなたがオタクになったときもあんなことの後だったし、気にしなかったけど……女の子をバラバラにするような子に育っちゃダメよ。」

「そ、育ってないわぁ‼︎‼︎あと、それ、言い方が誤解されるやつだから‼︎‼︎」


軽快にツッコミを入れつつ、母さんと朝食を食べ終える。


「ごちそうさま。じゃあ、学校行ってくるよ。」

「……今日もお父さんの仏壇にお線香あげないの?」

「………あげねーよ、んなもん。」

「そっか…。じゃあ、とっつぁんにも朝ごはんあげといてねー。」

「あいよー。」

「行ってらっしゃーい。あ、学校で女の子をバラバラに…」

「しねぇーよ。行ってきまーす。」


外に出て、毎朝庭でちりとりを咥えて走り回るドーベルマンのとっつぁんにも朝ごはんをあげようと庭にいく。確かとっつぁんが住みついたのは親父が死んで1年くらいしたときだったなぁ。

こいつを住みつかせることになって名前を決めようと、たろーとかむさしとか色々呼んでみたのに一向に反応しなくて、なのにルパンが大好きな母さんがとっつぁんって呼んだら急にすごい反応して…

そっからとっつぁんになったんだよなぁ………痛って‼︎痛ててててて‼︎‼︎‼︎

ごはんを持ったままとっつぁんの前でおあずけしていたせいでとっつぁんがマイハンドにガブッ。


「テメェー‼︎‼︎‼︎このクソ犬が‼︎‼︎‼︎1年も無銭飲食と無銭宿泊しやがって‼︎‼︎食費と宿泊費をよこせぇぇぇぇ‼︎‼︎‼︎」

「ハッハッハッハッ、ワンワン‼︎‼︎」


ほうきでしばいてやろうと追いかけるがやはり犬は速い、というか、特にこのクソ犬は知力が他の犬より低い分、犬一倍速い。もう家の前の道路まで逃げてやがる。俺も道路に飛び出て、ほうきを振りかぶる。


「クリティカルヒットさせてやるぜ、クソ犬‼︎‼︎‼︎」


バサッとほうきは虚しく空振りし、アスファルトに当たる。バカ犬は上手く避けて、ハッハ、ハッハと言う。

そのとき、ビィッビィーーー‼︎‼︎‼︎‼︎とクラクションを鳴らしながら大型のトラックが突進してくる。


ヤバイヤバイヤバイ‼︎‼︎


「うわぁぁぁぁぁー‼︎‼︎‼︎‼︎」


とっつぁんが俺の制服の襟首を引っ張り、衝突直前で間一髪助かった。流石はうちのドーベルマン、やれば出来る子じゃないか。


「ありがとな、とっつぁん‼︎‼︎‼︎ありがとぉぉぉぉ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎あと、ごめんな。元はと言えば俺がぼーっとしておあずけしたのが悪いよな。」

「ハッハッハッハッ、ワンワン‼︎‼︎」

「よし‼︎じゃあ、庭に置いてきたお前のごはん腹いっぱいに食わせてやるよ‼︎‼︎お、なんだ?俺の袖を引いたりして。可愛い奴だな、誘導しなくても、怪我もしてないし、一人で歩けるぞ、とっつぁん。」


笑顔で庭に戻ろうと踏み出すとーーグニッ。


……………えっ、グニッ?


そう、それは紛れもないこのバカ犬がしたウ⚫︎コだった。俺の不注意で踏んだならまだ仕方ないが…

こいつ、このために誘導しやがったな‼︎


「ハッハッハッハッ、ワンワン‼︎‼︎……プッ」

「バカ犬のくせに笑いやがったなぁぁぁ‼︎‼︎‼︎なんで犬なのにそんな憎たらしい動作が可能なんだよ‼︎‼︎‼︎待ってろ、今ぶっ殺してやるから‼︎」


そんなやり取りをしていて遅刻は確定になった。


遅刻が確定して逆に晴れ晴れとした気持ちになったので、もう急ぐこともなく、ゆったりと歩いている。

なんて清々しい気分なんだ。

どこへでも行けそう、もう何も怖くない。


………いや、学校行くけど。担任の反応が怖いけど。


そんなことを考えてながら、向こう側から歩いてくるおじさんを何気なく目に留めた。スーツを着ているが、だらしなくネクタイは緩められ、足どりもフラフラとしている。


「だ、大丈夫か?あの人…今にも死にそうな感じだけど。」

「荷物持ってあげよーかなー。」


他の通行人もやはりそのおじさんに注目しているらしく、皆心配したりしているが、俺には何の関係もない。その人のためを思ってした行いでも、他の人からすればそれは偽善にも等しい行いかもしれない。

それは身をもって理解したことだ。

だから、俺は深く関わらない。


そして、そのおじさんとすれ違った直後、急に心臓が激しく脈打ち、全身から力が抜け、感覚も無くなっていき、視界も狭まり、そして、倒れながら、意識は完全に無くなった。


意識を取り戻すと、視界に入るのは今まで見たこともないような光景だった。


空は二分され、一方は星が光り輝く夜の空で、もう一方は雲ひとつない快晴の空。いや、雲のようなものならあるっちゃある。

俺の足元に。

今、俺は雲の上に立ち尽しながら、その天文学的にあり得ない空を口を開けて見ている。


それに、まだあり得ないことがもう一つ。

絹のような銀髪ロングを一つ結びにして、ちょっとお腹あたりの露出度が高い服装をした超が付くほどの色白な美少女が俺の目の前にいる。

いらっしゃる。

そして、俺は笑顔で語りかけられる。


「汝、天命を全うせし者、田中康夫よ。運命の歯車は…」

「違います。」

「…………汝、天命を全うせし者、田中康…」

「違います。」

「な!ん!じ!天命を‼︎‼︎全うせし‼︎‼︎‼︎‼︎」

「あの、違います。全然全うしてません。」

「………田中康夫さんよね?」

「有馬勇太です。」

「……………………」

「……………………」

「あー、ごめんなさいね。人違いだったようね。」

「いえいえ、気にすることないですよー。人違いってよく起こることですし。あはははは。」

「あ、そう言ってくれて助かったわ‼︎天に召される人を人違いしたなんて神様に知れたら、どうなることやら…」

「あはははは、は、は……え?それ、もちろん帰れるんですよね?」

「何言ってんのよ♪最初から帰してあげられるなら、神様怒るわけないでしょう⁇」

「帰せよぉぉぉぉぉぉぉ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎ふざけんなよ‼︎‼︎何で人違いで死ななきゃならねーんだよ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」


俺は思いっきりその銀髪女に掴みかかった。当然だよね?


「し、仕方ないじゃない‼︎‼︎‼︎‼︎目視で天に召される人を確認してるんだから、ときどき間違えることくらいあるわ‼︎」

「は?今、お前、目視って言ったか?目視で殺されるって理不尽すぎるだろーが‼︎‼︎‼︎‼︎それに、開き直ってんじゃねぇよ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」

「な、何よ‼︎‼︎‼︎やる気?いいわ。天使と戦おうなんていい度胸じゃない‼︎‼︎」


互いに距離をとり、ファイティングポーズをとる。


「何が天使だ‼︎‼︎やってること非人道的過ぎだろ‼︎‼︎かかってこいやー‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」


こうして、人違いで天に召されちゃった俺はこれから意味のわからないことにどんどん巻き込まれていく。

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