episode5 奇妙な一致
退屈な授業。いつもなら居眠りでもして怒られるのだが、寝るといつもの夢……もしくは昨夜の夢の続きを見そうで無駄に冴えてしまっているのだ。リアルな血の香り、非人間的な笑い声、そして周囲に転がっていた…
「…上、犬上!!」
呼ばれたような気がしてふと周囲を見渡してみると、先生とクラスメート全員が俺を見つめていた。
「珍しく寝ていないから誉めようと思ったら今度は開眼したまま眠る技術を会得したのか。そんなに私の授業がつまらないならさぞかしテストで満点とれるのであろうなぁ?」と、嫌味を言われたものの、いつものように曖昧な返事で流しておく。さて、数学はケイに習った方が何倍も効率的だが、せめて聞いてるフリはしておいてやろう。
「今日、お前が数学で起きていたことも驚きだが、あそこまで考えに耽っていたのも珍しい。何回呼ばれたと思っているんだ?」
放課後、ケイに今日習った範囲と今週習うであろう範囲全てを教えてもらっているとその様なことを言われた。
「いや、実はだな…」
そう言って俺は昨晩の内容を抽象的に話した。いつものような現実的で、しかしながらありえない光景で恐怖してしまった、と。
笑われるかと思ったが、ケイは至極真面目に話を聞いて、ポツリと呟いた。
「その部屋には、鮮血が飛び散り、死んだ俺、若しくは死体が転がっていなかったか?」
寒気が全身を駆け巡った。そんなことは一言も言ってないはずなのに何故、全てを見透かしたようなことを…
するとケイは少しずつ語り出した。
「俺は昨晩、夢で地面と接した視点にいた。声を出そうにも体を動かそうにも金縛りにあっているようでな…そして驚いたことに俺の服を着た体が近くに転がっていたんだ。やけにリアルでお前の話してた内容とも合致するだろ?」
ここまで聞いて俺は一つの最悪な仮説を思い付いてしまった…
昨夜、全員が同じ夢を見ており、あれは予知夢なのではないか…