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かんぽう恋薬(こいやく)  作者: 神夏美樹
第五話:黒き少女の微笑み
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ACT-1

 幸は帰宅して自室に籠るとパソコンのモニターをじっと見詰めた。


 映し出されているのは製図用ソフトの画面。それをじっと見詰めながら一心不乱に何かを考えたが、妙案が浮かばず、思考はぐるぐるループするだけだった。


 長くその状態が続いたが、母親から夕食の準備が出来た旨の呼びかけが有り、食事の為に一旦席を空ける。


 そして戻って来た時の幸の表情は一変して嬉しそうな表情を見せ再び席に着くと不敵ににやりと嗤って見せる。


「気分転換は、やはり必要な物ですね」


 食事中に何かを思いついた様で、黙々と図面を描き続ける。そのまま図面に没頭し、御来光を拝む事になるのである。


          ★


 紀美代は何時もの様に、今日の課題をかたづけつつ、何時ものラジオパーソナリティの放送をBGMに小さな鼻歌交じりに課題を片付けて行く。


 そして、大きく伸びをして「終わり~」と嬉しそうに呟いてから席を立ち、明日使う教科書やガイドブックを鞄に詰めてから、パジャマに着替えてベッドに入る準備をする。


 その時、突然ガリガリとラジオにノイズが入り、全く放送が聞こえなくなってしまった。


 紀美代は不思議そうな表情でラジオを覗き込みゆっくりと耳元に当てたり、振ってみたり叩いて見たりしたのだが、相変わらず、ノイズは続き彼女は困った表情をする。


「電池無くなっちゃったのかな?」


 そう言って電池の残量表示を確かめたのだが、フル充電の表示がされていて、電源は問題ない様だった。


 このラジオは電池で聞く事も出来るのだが、コンセントからも電源は取れる。そのケーブルの行き先を見れば、ちゃんとコンセントにちゃんと差し込まれているので、電源がどうこう言う問題では無さそうだ。


 ダイヤルを回して周波数を変え、別の局を呼んでみたのだが、どの局も同じようなノイズで聞きとる事が出来ない。


「壊れちゃったかなぁ……」


 このラジオは紀美代が小学生の時に父に買って貰った物で彼女がとても大事にしている物だった。


 紀美代はラジオを元の場所に戻すと本体の電源を切った。


「あれ?」


 しかしノイズは止まらない。


 しょうがないのでコンセントからプラグを引っこ抜いて見たのだが、それでも音は止まらない。ならばと内蔵の電池を外して見たのだが、それでもノイズの音がする。


 紀美代は何となく気味が悪くなって、ラジオから一歩後づ去ると不審な表情でラジオを見詰め続けた。


 すると、ラジオが、かたかたっと動き出し、紀美代は「きゃっ!」小さく叫ぶ。それと同時にラジオから黒い霧がもくもくと湧き出した。異変を感じた紀美代は部屋から逃げようとしたのだが、霧が体に張り付いて来て、口を押さえ込まれて身動き出来ない。


 そして彼女の背筋を冷たい汗が流れ落ちる。


「おか、お母さん!」


 紀美代の最後の抵抗は儚く散って霧に全身を覆われ、間も無く紀美代は意識を失い黒い霧と同化してしまった。


 家族はその事に全く気付く事無く一晩を過ごす事になるのだ。


 そして、紀美代はぼんやりと夢を見る。


 額に一本の角を持つ漆黒の馬に跨り、黒いマントを靡かせながら自分を見詰める若い男の姿。そしてその夢は直ぐに消え、再び漆黒の世界に放り出された。

紀美代は再び感じ始める、このまま時間が止まってしまう様な孤独と言う監獄の中に居る恐怖を。

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