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ひーろーっぽいの  作者: 武ナガト
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ゴミ捨場

 和太郎は学生服に着替え、身支度を終えて自宅から出発すると、紐で縛ってある新聞紙の束を提げながら道を歩いた。

「親父さんはエロ漫画家ネ?」

 テブクの囁くような声に和太郎は顔を縦に下ろした。

「和太郎は親父さんの仕事嫌てるあるカ?」

「嫌いだな。小学生の頃、そのせいで俺も未散もクラスメイトから いじめられたからな」

「未散と話してた件かネ」

「親父はその筋では名の知れたエロ漫画家なんだよ。好色(こうしよく)(いち)(だい)ってペンネームで活動してる」

 和太郎はゴミ捨場に到着すると、提げていた新聞紙を置いた。

 すると、ゴミ捨場にすでに置かれてある本に視線が移る。

「こういうの描いてる」

 和太郎が示すように顎を上げる。示された先には紐でとじられた書籍類があった。その頂上にはコミックが収められている。そこには はだけた胸を両腕で挟みこんだ女性キャラクターが描かれていた。チアガール服での前屈み、白い液体が舌からは垂れている。タイトルと共に好色一代と表記がある。

「初めて見たときは捨てられてるじゃねえかと思ったけど、時折見かけるから、買うやつが結構いるんだなって苦々しくなった」

「親父さんは和太郎が仕事を嫌てると知てるのカ」

「知ってる。直接面と向かって言ったからな。未散と二人で父さんに談判した。漫画はやめなくていいから普通の漫画を描いてくれって」

「そしたらなんて言たアル」

「やめないと断られた。お前たち二人とエロ漫画のどちらかを選ぶなら、俺はエロ漫画を選ぶとまで言い切られたよ」

「そのとき、お袋さんはどうだたカ」

「母さんはなにも言わなかった。元々が父さんの大ファンだったらしいし、父さんを支持してるんじゃねえかな」

「そうカ」

「といっても、エロ漫画を選ぶってのは究極の択一の場合であって、父さんも母さんも俺らをぞんざいに扱ってるわけじゃないってのは分かってんだ。父さんは俺が大怪我したときに漫画の表彰式を直前で抜け出して加護の病院に駆けつけたらしいし」

「ただ単に病院のナースに美人がいるか確認したかただけと違うカ。あとネタ探しアル」

「そうかもな」

「真面目に返されると言葉に困るヨ」

「いや、有り得そうだ。あっ」

 和太郎は歩みを止めた。後ろを振り返る。

「どうしたヨ」

「家の鍵 忘れた。今日は父さんも母さんも夕方以降はいねえんだった」

 和太郎は走り出す。ゴミ捨場を過ぎ、自宅の方角へ学生鞄を振りながら駆けていった。


 十分後……。

 再び和太郎はゴミ捨場周辺へ足を進ませていた。

「ん」

 和太郎が前方を見つめると、ゴミ捨場には若い男子の姿があった。廃棄された本を引き抜いて補助バッグへ収めている。

 彼は襟詰めの学生服を着ていた。

「中坊か」

 和太郎が片眉を上げて呟くように言う。

 視線の先にいた学生服の男子は和太郎に顔が向くと身じろぎしてからゴミ捨場から走り去った。

「なに慌ててんだ あいつ」

 和太郎は手持ちの学生鞄を肩に背負うような姿勢でゴミ捨場の横を通りかかる。それから、ゴミ捨場を見続ける形で和太郎は通り過ぎていった。

「なくなてたネ。エロ漫画。さきの男が回収したのカ」

「だろうな」

「親父さんの漫画の下は実写のエロ本だたのになぜ手にしなかたんだろうネ」

「知らねえよ。好みじゃなかったんじゃね」

「親父さんの漫画は好みだたわけカ」

 和太郎は眉がぴくりと動く。

「エロ漫画ならなんでもよかったんだろ。聞くところによると、二次元のキャラクターじゃないと使えないやつもいるらしいしな」

「ふーむ。そういうものカ」

 和太郎は相づちを打つことなくそのまま歩き続けた。学生服を着た女子に自転車で追い抜かれ、背広姿の男性とすれ違う。

 しばらくすると、うな垂れて頭をかいた。

「あー、学校行きたくねえ。闘気装の姿を見られたの なんて言訳(いいわけ)すっか」

「趣味だと公言してはどうアル」

「お前はどうしてそんなに俺の立場を(おとし)めたいのか。しょうがねえ。ロビンに頼み込んでテレビゲームに負けた罰ってことにしてもらうか」

「ロビン?」

友達(ダチ)だよ」

「ロビンにはなんて説明するヨ」

「理由は話したくないって俺が()やあ、あいつはそれ以上は追求しねえと思う」

「衣装まで用意してずいぶんと大がかりな罰ゲームネ」

「あいつなら有り得るんだよ。コスプレ好きってことは自己紹介の時にクラスの連中に明かしてたからよ。そうだな、先手を打っとくか」

 和太郎は学生服のポケットから携帯電話を取り出すと指を動かしてボタンを次々と押した。携帯電話を耳に当てる。

 携帯電話からは甲高いアニメ調の歌が奏でられた。

「朝早く悪い、滝だが――」

 和太郎は歩きながら通話を開始した。

 和太郎が父の職業を嫌っていることを読者に説明する場面です。

 未熟ではありますが、場面場面で読者に何を伝えたいかというのを意識して書いてます。

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