自宅に迫る影
夜の闇が町になじんだ頃、和太郎の自宅には明かりが灯っていた。加えて、階段用の照明がパッと点灯し、足音が聞こえてくる。
階段からは未散が下りてきた。未散はリビングへの扉を開け、キッチンに顔を向ける。
「お母さーん、兄貴はー?」
母はグリルの前で身をかがめていた。
「和太くん? ロビンくんの家に行くって言ってたけどまだ帰ってないわね。そろそろ帰ると思うけど」
母は焼いた鰆をグリルから皿へ移す。
「えー。借りてたブルーレイ 返却期限が明日だから回収しようと思ったのにー。部屋に勝手に入っちゃおうかな~。やっぱやめとこー」
未散は庭につながる戸へ歩いていく。戸を開けるとサンダルをはき、尻尾を振っているストロンガーVマックスに近寄った。しゃがんで首元をくすぐる。
ストロンガーVマックスは舌を垂らしながら犬独特の弾むような息を繰り返していた。しばらくは未散の指と戯れていたが、鼻をひくつかせると玄関の方角を振り向いてしまう。
「グルル……」
毛を逆立て唸り声を上げる。
「どうしたのVマ」
未散はストロンガーVマックスが唸る先を見やった。
そこには一匹の猿がいた。リビングからの薄れゆく光をかすかにまとい、闇から猿は未散を眺めていた。瞬き一つせず、口の両端が引き上がり、黄色い歯がむきだしになる。
「お猿さん……?」
未散はゆっくりと立ち上がった。
猿が構えた拳銃の銃口は未散に向かって上がりつつあった。
和太郎のプライベート空間に被害が拡大することをそれとなく ほのめかす話。
ここまでくれば今後の話の流れは読者にも想像できると思います。




