練習 性欲興奮拳
「ハンズカバー人の感性ではここらが限界かもしれなイ」
テブクは猿を敷物のように尻で踏みながら座っていた。うつ伏せの猿はテブクに座られながらもエロ漫画を読んでいる。
「好色一代の描いたアヘ顔を想像したときが一番効果的だたけど、ワタシじゃこれ以上は無理ぽネ」
テブクは猿の頭を上からごついた。尻尾がしおれるが、すぐにふりふりと揺れる。
「猿自体は弱いし、和太郎のサンドバッグにでもするカ。そもそも、和太郎を止める目的と、発情ギツネに腹が立たから出てきただけだしネ」
テブクはまぶたを閉じた。頭がかくんと落ちる。その後、頭はゆっくりと持ち上がり、まぶたは開いた。
「あれ? 俺 寝てたのか」
猿の尻尾が和太郎の腕に触れた。
「おわっ! どうなってんだ。猿に座ってる! リリィさんは!」
和太郎は辺りを見回す。横向きに倒れている裸のリリィに目が留まる。
「和太郎! リリィはワタシが倒しといたネ」
「倒した? 今どういう状況なんだ?」
「まあ、ちょと説明するヨ」
テブクは和太郎に説明を始めた。
「――というわけヨ」
「つまり、リリィさんをやっつけたあとに、猿に色々試して今に至ると」
「その通りネ。そして、和太郎はこの猿で性欲興奮拳の練習するアル」
テブクが言うと和太郎は唇を尖らせた。
「断る」
「なんでヨ」
「だってエロ漫画読まねえといけねえだろ」
「ああ、なるほド。でも、安心するヨ。エロい空想をすればそれが原動力になて、発動するネ。エロ漫画の内容でなくともいいアル」
「そうなのか。でも、他に倒し方ないのかよ」
「うーム」
テブクは唸るような声を上げ、黙ってしまった。しばしの沈黙の後、再び声を上げる。
「あるかもしれないけど、模索する形になるから時間がかかるアル。裸のレディたちの負担が増えるヨ。それでもいいカ?」
「言われてみればそうかもな。仕方ねえ。やるか」
和太郎は拳を掌にぶつけた。
「すずゆのHな姿を想像してみたらどうカ」
「だな。モデル体型ですっげえ美人だからなあ。それで歌って踊れるとか神がかってる」
「性欲興奮拳を習得すれば、すずゆとムフフになるのに近づくヨ」
「やる気がわいてきた」
「まあ、そのままでは使えないんだけどネ。性欲を暴走させてダメージを与える技だかラ」
和太郎は「ま、近づくならいいんじゃね」と猿から立ち上がる。
猿は和太郎が立つと、エロ漫画を読みながら二足歩行で逃げていく。表彰状を授与されるときのように腕をぴんと伸ばした体勢でエロ漫画を読みつつ部屋の隅へ走っていった。
和太郎は走って猿を追いかけた。
「殴りや蹴りを命中させるときにエロを想像すりゃいいんだよな」
「そうヨ。発気はワタシがやるからそれだけやればいいネ」
和太郎は猿に追いつき、蹴り上げを試みた。猿は方向転換して和太郎をジャンプで飛び越えようとする。和太郎は猿の尻尾を捕らえて床に投げつけた。床にべちんと貼りついた猿に上から拳を下ろす。一撃入った。
「どうだ! すずゆを裸エプロンにしてみたぞ!」
和太郎は嬉々として言った。
猿はすぐに起き上がり、エロ漫画を拾って走り去る。
「効いたのか?」
「全然 ダメネ。でも、技は成功ヨ。なかなかの威力があたはずなんだけド」
テブクの声は尻すぼみだった。
「仕方ねえ。次は保健室での仮病エッチを……」
「ぱっと浮かぶところが元気で若いアルねェ」
「仕方ねえだろ。男のロマンだ」
和太郎はそう言い残すと猿に突撃した。
体の主導権が和太郎に移り、性欲興奮拳を打てるように練習する話。
何考えながら殴ってんだお前って感じですね。




