回り道
時は流れ、朝が終わった。昼も過ぎ、夕方でありながらも日光が夕焼けをもたらさない時間になる。
神守高等学校と刻まれたプレートの前を若い男女がぞろぞろと横切っていく。
「バイバーイ。また来週ー」
校内の敷地から現れる彼らはブレザーの学生服に身を包み、一人で足早に歩く者 複数人で談笑しながら歩く者と様々な形で学校を後にしていた。
校外へ歩く群衆の一人に和太郎がいた。ロビンと一緒に運動場の砂を踏みしめて校外へ歩んでいく。
「今度、新しく描いた漫画を読めって?」
横に並んで歩くロビンに和太郎は顔を向けた。ロビンは数回頷く。
「新作、今まで見せなジャンル、感想、聞かせ!」
「どんなジャンルなんだ」
「秘密んだ」
ロビンは頬を指でかいた。二人は門を出ると、同じ方角へ曲がった。
「まあ、俺は今日 助けてもらったし、いいぞ。どこで読めばいい」
「我が家、ご招待! 明日、滝タロ、暇る?」
「明日は土曜だし、暇だな。午後二時くらいでいいか」
「よろよろ、よろず屋大繁盛!」
ロビンは白い歯を覗かせた。
二人はしばらく歩くと、信号機がある交差点に差しかかった。
「じゃあな。明日の二時にお前ん家だな」
「ばいばいキング」
ロビンは顔の近くで手を振り、二人は別れた。
和太郎は横断歩道を渡り、大通りを外れ、小道に入った。幅は二台の普通乗用車が行き違えるかどうかの広さである。周囲は民家が建ち並んでいて、今のところ人通りはない。
「和太郎、朝も思たけど、どうしてこの道を通るアル? 自宅には先ほどまでと同じく大通りを歩いた方が早くないカ」
和太郎はただ黙々と歩き続け、なにも答えない。
「聞いてるカ」
「聞いてるよ。通りたくねえんだよ。あの道は」
「どうしてアル」
和太郎は眉根を寄せる。一つため息をつき、口を開いた。
「父さんの仕事場があるんだよ」
「仕事場? 漫画を描いている場所カ? なんで通りたくないヨ」
「通るとムカつくからに決まってんだろ」
「ふーん」
「なんだよ」
「なら、ぶ壊してみたらどうアル? 今の和太郎ならできるネ。条件によては協力してもいイ」
「ぶっ壊すってお前、そんなことしたら父さんが困るじゃねえか。根本的な解決にならねえしよ」
「そのくらいの筋道だった考えは持ち合わせているカ」
「お前、俺をなんだと思ってんだ」
「一人で立てない小便小僧」
「なっ! て、テメエ!」
和太郎は立ち止まった。身体がわなないている。
「職場の前を通るぐらいは差し障りない気がするアル」
「うるせえよ。お前じゃなく俺の気持ちの問題だ。お前にとやかく言われる筋合いはねえ」
「おお怖い怖イ。まあ、なんにせよ親父さんが仕事を続けるおかげで支持者の男性諸氏はきと大喜びヨ」
和太郎は再度歩み始めた。角を曲がり、しばらく進むと道をそれた。大通りへ帰ってくる。
「戻てくるなら、直進すればいいのにネ」
「人に聞かれるぞ。黙れ」
和太郎の言葉以降、自宅までテブクはなにも話さなかった。
父の仕事に対する拒否感をわかりやすい形で読者に提示すべきであると考え、この場面を用意しました。




