江角さん、バレンタインに小話が読みたいんですけど。
こんなバレンタインシーズンに駄文にお付き合い戴き、誠にありがとうございます。
「……って言うか、何なんでしょう。このタイトル」
私は溜息をつきそうになり、幸せを逃さまいと思いとどまった。
その結果、代わりに出て来たのが上記の台詞である。
「もはや、これは小説とは言えないわ。活動報告の延長線上よ」
「まぁ、良いんじゃないか?」
声のする方を向けば、ニヤニヤと笑う斎藤さん(仮)。
「昔、"バトンって小説化に出来るんだ!!"(N7647BD)なんて作品も投稿してたじゃねぇか」
「あぁ……あの、電式さんから戴いた軍人バトンね」
私は活動報告の長さの上限から、急遽小説として投稿する羽目になったバトンの存在を思い出した。
軍人バトンは江角の代表すべき問題作の一つ。
と言うか……江角の小説は問題作だらけなので、まともな作品を見たことがないのだが。
「何で斎藤さん(仮)がいるの?」
「作者一人じゃ寂しいだろ? "本格的なケイドロの夢"(N6855Z)も無事、この前の"1周年記念祭り"で完結したし、暇なんだよ」
「貴方の本来の仕事は、派生した小説じゃなくて"twilight world"(N6704X:絶賛更新中!!)の方でしょう?」
今度こそ、溜息混じりに言う。
あぁ、幸せが。
「しかも今、斎藤さん(仮)は死にかけてないっけ?(トワイワ:第十八話現在)」
「あ、あはは……そんなこともあったね。大丈夫だろ、江角の小説の死亡フラグは9割が回避出来る」
確かに、人が気絶したり意識を失ったりするのは多いが、大体は目を覚ましている。
だが、あまりにも彼が得意気に言うので、私は作者として釘を刺しておいた。
「言っておくけど……江角の作品は、死者が多いよ」
「……だ、大丈夫だろ。主人公は死なないってジンクスがあるから」
焦る彼に、追い討ちをかける。
「ねぇ斎藤さん(仮)。タブーを犯す時って、ゾクゾクして気持ち良いと思わない?」
もう駄目だ、江角の発言は背徳的である。
「……すみませんでした。殺さないで下さい」
「えー、どうしようかなー」
彼の人気を考えると、殺すのは辛い。
それに、此処で彼が死んで話が終わると……このページをわざわざ開いて下さった読者様に申し訳ない。
「分かったわ。生かしてあげるから話を戻しましょう」
「助かった……!! えっと、軍人バトンの話だっけ?」
こんな調子で、斎藤さん(仮)はいつも死亡フラグを乗り越える。
確か「本格的なケイドロの夢」の時もそうだった気がするのだが。
「そうそう、"バトンって小説化に出来るんだ!!"、いわゆる"軍人バトン"だけど。今、見直したら……あれ、ジャンルが"文学"だったわ」
「あんな稚拙な作品が文学なんて、他の文学作品に申し訳ないな」
その発言にムッとしつつも、彼の発言も最もだと思う私。
「だからこそ。敢えて、この"江角さん、バレンタインに小話が読みたいんですけど。"も"文学"にしたわ」
「成る程な……え!? "だからこそ"の意味、分かってるのか?」
肯定されたかと思えば、聞き返された。
これは否定と捉えるべきなのだろうか。
では、此処で一つ議題を提案してみる。
「んー、じゃあ全ジャンルで検討してみてよ。この作品が、何処に入るのか」
「そうだな……では、"文学"の次のジャンルは、"恋愛"だと」
相手が乗ってきたので、しばらくこの議題が続きそうだ。
「有り得ないでしょ。斎藤さん(仮)も私も、そんな感情で接していないし」
「そりゃそうだ。次、行こうか」
何ともサクサクした進みである。
尺の問題は大丈夫なのか?
「次は、"歴史"」
「ない。この話に、歴史的価値はない」
これもまた、ばっさりと切り落とされた。
二人のサバサバした性格が、言動に顕著に現れている。
ある意味、現代を示すこの文章は、未来から見たら歴史的文章かもしれない。
「くだらない地の文はほっといて」
「ちょっと、地の文も私が書いてるんですけど!?」
江角の喚きも虚しく、彼にスルーされた。
「"推理"……は、どうだ?」
「推理は本編、"twilight world"でして下さい」
これまた、あっさりとした回答。
しかも宣伝も挟むとは、ちゃっかりしている作者だ。
「と言うか、"twilight world"って推理するのか? ジャンルは"文学"だけど」
「まぁ、先の見えない結末を推理しても良いよね。粗筋でも分かる通り、"必要最低限"の情報しか決めていない作品だからね」
確かに設定が自由な分、文章は書きやすい。
だが難点もあった。
「だから100%シリアスで行こうとしたのに、キャラが濃すぎてコメディも混ざったのか」
「えっと……まぁ、作者自身にとっても、想定外なことが増えるよね」
自由気ままな内容と更新速度で有名であること、この上なし。
気まずい間を乗り切るため、作者は口を開いた。
「……さぁ、気にせず次のジャンルを見ましょう!! 次は、"ファンタジー"?」
「"ファンタジー"とは、幻想的な文学作品のこと。むしろ俺は、この作品にリアリティを感じるが」
"ファンタジー"も却下され、次のジャンルは"SF"だが……。
「"SF"とは、(空想)科学小説のことである。だって」
「今の所、俺は科学らしさを微塵も感じねぇな」
だそうです。
「次。"ホラー"」
「でもない」
「次。"コメディー"」
「でもない」
「次。……いやいや、コメディ違うの?」
「よく見ろ、作者。ジャンルは"コメディ"ではなく"コメディー"だ」
「細かいよ、斎藤さん(仮)……」
と言う訳で。
流れるように続きます。
「次、"冒険"……をした覚えはありません」
「作者の発言は冒険的だな」
「暴言よりはマシでしょ」
「妄言は多いが」
「……誰も"上手いことを言え"と言った覚えはないけれど」
鋭い目線が飛んでくる。
「……まぁ、良いじゃないか。次は"学園"だと」
「"学園"か。今度、本編で学園祭にでも潜入してみる?」
「え、もしかして今閃いた?」
「……うん(実話)」
もし時間があれば、いずれ書くかもしれません。
「仕方ないなぁ……それは保留にして。次は"戦記"だが」
「むしろ"本格的なケイドロの夢"や"バトンって小説化に出来るんだ!!"の方が"戦記"に近い気がする。斎藤さん(仮)、今から戦ってみようか?」
「いや、気に食わないと地の文で抹殺されそうだから止めておく」
「つまんないの。そう言えば、勇者シリーズって"戦記"に入らないかな?」
「あぁ、ザイルとカイルの話か。もう"文学"のままで良いと思う」
勇者シリーズは本編4つと番外編2つの計6つです。
少々読みづらいかもしれませんが、根気良く探して下さいませ。
「次。"童話"ね」
「ど……俺達、そんな可愛いキャラしてないだろ」
「確かにね。せっかくだから、可愛いキャラやってみる?」
「……え!?」
「はーい、おさなんだお!」
「さ、斎藤さん(仮)だ……お?」
「恥を捨て切れてないぞ」
「止めてくれ、もう俺には限界だ……っ!!」
しばらくお待ち下さい。
「はい、気を取り直して。次は"詩"なんだけど……この文章の時点で"詩"じゃないよね、斎藤……さん(仮)?」
「え、あぁ、そう」
「まぁ……良いか。次、"エッセイ"も違うよね」
「え、あぁ、そう」
「はい、じゃあ"その他"も違うから終わりと。やっぱり"文学"ね」
「そんな訳ないだろ!!」
「はぁ? そこは"え、あぁ、そう"って流す所じゃないの?」
「あ……つい」
つい、で発言が変わってしまう男。
それが斎藤さん(仮)なのです。
「まぁ良いわ。とにかく、この作品のジャンルは"文学"ってことで一件落着──」
「してないから。むしろ"その他"の方が良いと思うのだが……」
たたみかけるような作者を止め、意見する斎藤さん(仮)。
だが、作者には疑問点が一つ。
「ちょっと見てみたんだけど、"その他"ってよく分からないジャンルなのよね」
「だから、こう言う訳の分からない作品を入れれば良いんじゃないか?」
彼の提案も虚しく、
「そうかもしれないね。けど……私、"その他"って扱いがあまり好きじゃないの」
「あ……そう」
最後は作者の好みによって切り捨てられましたとさ。
「で、やっとジャンルが"文学"に決まった"江角さん、バレンタインに小話が読みたいんですけど。"ですが──」
「あぁ、やっと小話が始まるんだな」
「以上をもって終了させて戴きます」
「……は!? いやいや、これから始まるんじゃないのか?」
慌てる斎藤さん(仮)に、私はたった一言。
「今の"ジャンル決め"が、小話の全てです」
「えー!!!」
斎藤さん(仮)、驚愕。
そりゃそうか。
読者の皆様に、こんなくだらない雑談だけを読ませて帰す訳にもいかない。
「第一、"バレンタインの小話"じゃないのかよ!?」
「私、一言も書いてないですよ。ほら、タイトルも"江角さん、バレンタインに小話が読みたいんですけど。"でしょ?」
つまり、「バレンタイン」に「小話」が読みたいのであって、「内容がバレンタインの小話」が読みたい訳ではないのである。
「そんなの屁理屈だー!!」
「仕方ないじゃない。今、江角は絶賛急筆中なの。チョコも作らなくちゃいけないのに、バレンタインに小話なんて書いてられないわ」
長々とまくし立てる江角に、斎藤さん(仮)はたじたじ。
それでも懸命に、言い返そうとする。
「え……でも去年は両立してたじゃねぇか」
「受験が終わって暇だったからでしょ。今年は踊るから忙しいの」
……撃沈。
彼は作者に「バレンタインの小話」を、書かせることが出来なかった。
が。
「あ、でも代わりに、長編の準備は少しずつ始めてるから。また暇が出来たら更新するから、待っててね!」
そう言って、笑顔で手を振る江角。
そう言えば、「えがお」と「えかと」って少し似ていますね。
「そんなことより……作者、何か忘れてない?」
斎藤さん(仮)は、期待をもって見下ろした。
「え、だから小話は終わりだって」
「違う! だから、その……14日って言ったら……」
言葉の歯切れが悪くなる。
そこで作者は、ようやく察することが出来た。
「あぁ、バレンタインのチョコレートね?」
「そうそれ!!」
もう忘れたかと思ってたぜ。
嬉しそうに笑う斎藤さん(仮)。
だが、
「今から作るから、待ってて。じゃあね」
「……え」
なんて置いてきぼりを食らう訳にもいかないので。
「……なんちって。ほら、ちゃんと用意してるわよ」
そう言って差し出されたのは、赤いラッピングの包み紙。
「おぉ……サンキュ!!」
そう言って包みを開け、チョコに噛み付く。
「ま、"友チョコ"ならぬ"相棒チョコ"ね。そんなに急いで食べなくても、チョコは逃げないのに……」
そう言うと、江角は小さく微笑んだ。
……何か、結果的に「バレンタインの小話」になっているので許して下さい。
以上、江角クオリティでした!!
こんなバレンタインシーズンに駄文を読むなんて、非リア充なのですか?
...って聞く前に、取り敢えず謝っておきます。
どうもすみません。