6日目 文明の夜明け
「インダス文明って何なのかしら?」
「はあ……」
自作の弁当を摘みながら、先輩は唐突に聞いてきた。
唐突と言っても、先輩がワケの分らない事を言い出すのはいつもの事。
なので僕は何時も通り無感動に答えた。
「世界4大文明でしょう?」
「文明って何なのかしら……」
意外と深い疑問を投げかけてくる先輩。
しかし性質が悪いことに、先輩は特に何も考えていないのだ。
「あれじゃないですか。忍冬唐草文様とか」
「え~。あれって日本っぽいじゃない。異文化の香りがしないわ」
いや知らんがな。心の中でそう呟いた時だった。
ガラッと音がして部屋の扉が開けられる。
僕と先輩は、同時に扉の方を見た。
「失礼するわよ」
「あれっ?」
「なぬっ!?」
そこに立っていたのは、金髪ツインテールの少女だった。
というか僕のクラスメートだった。
碧眼のせいか、その表情にはどこか冷たい印象がある。
白いし冷たそうなんで、心の中で冷蔵子さんと呼んでいることは秘密だ。
「今日はどうしたの?」
「私もここでサボる事にしたのよ。外、嫌いだし」
「ふーん」
うなずいて、僕は視線を先輩に戻した。
先輩は奇妙なポーズで固まっていた。
「何やってるんですか?」
「驚いてんの」
僕の質問に、先輩はあっさり答えた。
どうやら驚きを表すポーズだったらしい。
先輩の生態系には疑問が尽きないが、さほど興味も無い。
僕はいつも通り自分で持ってきた雑誌を読む事にした。
「何を読んでるのかしら?」
冷蔵庫のような冷たい目で問いかけられた。
僕は黙々と雑誌を読みながら答える。
「『残念、無念。発売されなかったコンセプトカー集』」
「残念な本を読んでいるのね……」
冷たい返事だ。心の中がひんやりとしてくる。
ふと、先輩の方を見てみる。ポーズが変わっていた。
「……先輩、今度は何のポーズですか?」
「上手い事言ったつもりか、って思ってんの」
先輩は「やれやれダゼ」と言った表情を無理矢理作りながら、
肩をすくめながら両手のひとさし指を冷蔵子さんに向かって突き出していた。
冷蔵子さんは、そんな先輩を冷たく見ていた。
何この状況。
「やれやれダゼ」
僕はそう呟くと、肩をすくめたのだった。




