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ゴリラ先輩ラーメン子  作者: 彩女好き
いつもの三人編
23/213

23日目 今夜、月の見える校庭で



ほー。ほー。

謎の鳥の鳴き声が、夜のグラウンドに響く。

真っ暗な校舎を、月の明かりが(ほのか)かに照らす。

うん、すごい不気味だ。


「悪いわね、手伝わせちゃって」


「え、僕って手伝う事になってんの!?」


動きやすいようにだろう、黒のジャージを着た冷蔵子さん。

長い髪はポニーテールにまとめてあった。

対して僕は、寝るために来ていた甚平だ。

これはこれで必殺仕事人みたいな格好ではある。


「奴らは今夜動くわ。叩くなら今しか無い」


「奴らって誰だよ!? さっぱり分らないんだけど!?」


「ここまで来て弱音? 惰弱ね」


蔑むような冷たい瞳を真っ直ぐに向け、僕を睨む冷蔵子さん。

弱音も何も、僕は彼女に引っ張られてきただけだ。

覚悟は決まって無いし、事態も飲み込めて無い!


「とりあえず話をしようよ。僕らには会話が必要だと思うんだ」


「……! あなた、夜になると積極的になるのね」


「そういう意味じゃねーよ!」


冷蔵子さんがようやくまともな説明を始めてくれたのは、それから5分後の事だった。




「夜の図書室部?」


「そう。以前話した、私が作り上げた組織よ」


夜の図書室部。

かつて冷蔵子さんが創設した、秘密組織である。

その目的は、端的に言うと夜中に図書室に侵入することだ。

つまり不法侵入である。


大事に発展するのを恐れた冷蔵子さん自身の手により、組織は瓦解した。

しかし最近、組織が復活している事が判明したのである。

正直まったく興味は無いが、張本人である冷蔵子さんには関係ありありの話である。


「ああ、そう言えば復活したんだっけ? 何? もう1回入りたいの?」


「えい」


「ぐぇ!? 何でボディーブローしてきたの!?」


「あなたが不真面目だからよ」


どこか怒った表情で言う冷蔵子さん。

僕のどこが不真面目だと言うのか。

むしろ、寝巻きのまま謎の行動に付き合わされている身としては、

破格の真面目さだと思う。


「今度こそ潰すわ。完膚なきまでに」


そう言うと、彼女は校舎の方を睨むように眺めた。

恐らくは図書室を見ているのだろう。

かつて彼女が君臨した、懐かしい古巣を。


「う~ん、でも夜の校舎か~。普段と違う感じでドキドキするね」


僕も校舎を見つめて言った。

夜なんてまず来ないから、昼とのギャップが鮮烈だ。

まるで異世界のように佇む校舎を望遠し、僕は人知れず息を飲んだ。

そうしている内に、ふっと思い出した。学園7不思議の話を。


「そう言えば知ってる? 学園7不思議の話」


ぴくり、と冷蔵子さんが反応する。

視線はジッと校舎に向けられたままなので、その表情は見えない。

僕は彼女の肩を見ながら、話しを続けた。


「夜の校舎を走る人体模型とかあったよね」


「人体模型が走るわけ無いじゃない。非科学的だわ」


くるりと僕の方に向き直り、力強く断言する冷蔵子さん。

まあ確かに、筋構造の無い模型が走るわけが無い。

足にミニ四駆でも付けてれば別だろうが、そんな爆走兄弟はいないだろう。


「まあそうだね。模型が動いてるところって実際に見た人いないみたいだし」


「っ、それが当然よ。馬鹿馬鹿しい」


「実際あるのは、廊下を白い人影が動くってやつだよね。あれはマジで見た人多いらしい」


「やめて聞きたく無いそれ以上は無理」


息継ぎ無しに一息で言い切ると、彼女は両手で耳を塞いで座り込んでしまった。

あれ、こういう話し苦手だったのか……。

悪い事をしてしまった。


涙目で座り込んだ冷蔵子さん。

彼女と目線を合わせるために僕も座った。

か細く震える彼女……の背後には、異様な存在感の校舎が聳え立つ。

ヤバイ、何か僕も怖くなってきた。


「と、とりあえず帰ろうよ」


そう言うと、僕は彼女の手を無理やり取った。


「ちょ、ちょっと待って! 夜の図書室部はどうするの!?」


「きっと幽霊と戦って……全滅してるよ!」


「いやあ! 聞きたく無いムリムリ!」


そんなこんなで、夜は更けて行くのであった……。





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