2日目 ウユニ湖
「ウユニ湖に行きたい」
「ユニ子?」
読んでいる本から目を離し、僕は先輩に聞き返した。
「あれ? もしかして君、ウユニ湖知らないの? うぷぷ」
心底偉そうな態度で、先輩は僕を小バカにしている。
女子としてギリギリのくせに! 別名マウンテンゴリラのくせに!
先輩の前には蓋が閉じられたカップラーメン。
3分間で食べられる素敵に手軽な食べ物だが、
3分間は待たねばならない面倒臭さもある。
「ウユニ湖はね、塩が取れる綺麗な湖だよ。知っとけよバーカバーカ」
先輩の手元に置かれたカップラーメンを見ると、SIO味だった。
だから塩湖の話とか振ってきやがったのか。
つまりは、これは彼女の暇つぶしに過ぎない会話だ。
カップラーメンを待つ3分間。先輩は、デタラメな会話をするのだ。
「無知ですいませんね。それで、その何とか湖ってどこにあるんですか?」
僕の質問に、先輩はしばし思案顔となった。
「えっと……世界のどこか」
「……場所が分かんないのに、どうやって行く気だったんですか」
「てへっ(ペロ)」
先輩は何かを誤魔化すように舌を出した。
左手で軽く、自分の頭を叩くポーズ付を取りながら。
うわぁ。うわぁ。なんて言うかうわぁ。引くわ。
僕はふぅーと一つ溜息を吐くと、意を決して切り込んだ。
「うわー先輩可愛いなぁ(棒)」
「おいテメエ。今のは本当に可愛かっただろ? ちょっと自信あったんですけど」
「先輩。ウユニ湖ってどんな所なんですか?」
「ねえ、本当はドキドキしてるんでしょ? 正直に言いなよ」
「綺麗な所なんだろうな……。いつか行ってみたいですね」
「もっと綺麗なものが目の前にあるだろう? やだ、何言わせるのよ///」
噛み合わないまま会話は続く。いや、あえて噛み合わせないのだ。
ここは食卓。会話の主導権を巡って、僕と先輩は争う。
『暇を潰せ』それが、先輩が課した唯一の口戦規定だ。……多分。