1日目 カメレオンはどんな味?
僕と先輩による日常系の物語?
誤解される方がいるので書きますが、先輩は美人という設定です。
ただし握力はゴリラ並。
……っていうか改めて読むと、どう考えてもゴリラ顔としか思えない表現でしたね。すみません。
「ねえ、カメレオンって美味しいのかな?」
「……いや、知らないですけど」
僕は手元の本から視線を動かさずに返事をした。
向かいの席には、性別的にはギリギリ女子に分類される先輩が座っている。
顔がいくら可愛かろうと、握力が100kgを超える人に男女の区別が必要だろうか?
僕としては、男女というより人類と超人という区分の方がしっくり来た。
先輩の前には蓋が閉じられたカップラーメン。
3分間で食べられる素敵に手軽な食べ物だが、
3分間は待たねばならない面倒臭さもある。
「色が変わるわよね。色が変わる物ってマズそうに思えない?」
「タコとかカニとかは美味しいじゃないですか」
僕の指摘? に対し、う~んと唸る先輩。
唸っているだけで、大して何も考えてはいないだろう。
つまりは、これは彼女の暇つぶしに過ぎない会話だ。
カップラーメンを待つ3分間。先輩は、デタラメな会話をするのだ。
「爬虫類って不味そうよね?」
「カメレオンって爬虫類なんですか?」
「爬虫類だろ! 知らねーのオメエ!? バーカバーカ!
……え? あれ? 爬虫類だよね、カメレオンって。何か急に自信無くなってきた」
「バーカバーカ(棒)」
「うっわ、ムカつくわー。感情が無い新世代がムカつくわー」
「ちなみに、カメレオンってわりと美味しかったですよ」
「え? なに? 食べた事あるの? マジっすか?」
「嘘に決まってるじゃ無いですか。カーバカーバ(棒)」
「うっわ、寒いわー。ちょっと欲を出してボケた所が寒いわー」
先輩のツッコミに、やや図星を突かれた僕は赤面した。
カーバカーバは無かったな。小学生の返しかよ、と自己反省する。
反撃が成功したのが嬉しかったのか、先輩はさらに僕をからかってきた。
「でもね、あなたのそういう所、嫌いじゃないよ……?」
「じゃあそのラーメン下さい」
「ヤだ」
そんなこんなで3分経ち、先輩は幸せそうな顔をしてラーメンを啜り始めた。