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こもれ日屋さん

風船のお散歩

掲載日:2026/10/28

公園で紙芝居屋さんから貰った、赤い風船。

しっかりと持っていたはずだったのに、ぴゅう、と吹いた風にさらわれていった、赤い風船。

空高く飛んで行って、見えなくなった。


べそをかいている私に、母が言った。


「風船さん、お散歩に行っちゃったのね」


私は泣き止んで、母の顔を見上げた。


「じゃあ、また帰ってくる?」


「そうね。いつかね。いい子にしてたらね」

そう言って、母は笑った。


翌日も、その次の日も、風船は帰って来なかった。

がっかりした。


来る日も、来る日も、風船の帰りを待ってみたけれど、風船は帰って来なかった。

いつしか、私は風船のことを忘れた。


忙しない毎日。

繰り返される日々。

私の心は、少しばかりしぼんでいた。


そんなある日。

ふと立ち寄った店で買った、ガラス瓶。

木漏れ日が入っている、という。

瓶の蓋を開けた瞬間、私は、あの公園に佇んでいた。


どれぐらい、そうしていただろうか。


エプロン姿の、ひょろっと背の高い男性が私の方へゆっくり歩いて来た。


「これ、どうぞ」


男性は手に持った赤い風船を私に差し出した。

私がおずおずと受け取ると、男性は静かにお辞儀をして、向こうへ去って行った。


赤い風船。

来る日も、来る日も、帰りを待っていた、赤い風船。


帰ってきたのね。


「おかえり。長いお散歩だったわね」


私は、風船の紐をしっかりと握って、

木漏れ日の中、木々の匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。



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― 新着の感想 ―
ツバキアキラさま こんにちは。感想失礼致します。 「木漏れ日の入っている瓶」どんな色なのでしょう。暖かい金色のガラス瓶なのでしょうか。 想像が膨らみました。 どの場面も、絵が浮かんで来るような素敵なお…
さっそくの二作目をありがとうございます! 前回の切なさが、ほんわかしたあったかさに変わり、私の心もほんわかしました。 お兄さんは自由自在に動けるのですね……素敵です。 シリーズ楽しみにしていますね♪
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