晩夏 -あの夏の物語-
これは、とある少年と少女が、何でもない夏の日に繰り広げる、特別な逃避行の物語だ。
(注意:
この文章は中国人が書いていますので、日本生活の常識に合わないところがあるかもしれませんが、ご了承ください。
この小説は中国語で書かれたもので、後に日本語に翻訳されました。もし文法に合わないところがありましたら、ご了承ください。)
“7月14日 土曜日 天気:大雨
人を殺した。”
晩夏 -あの夏の物語-
1.
6月12日 火曜日 天気:快晴!
前の日記帳を使い切ったから、今日この新しいのを買ってきた。
この表紙は濃い緑色で、学校の黒板みたいな色だ。それにちょっとした古びた感じの模様とかがついていて、前の真っ赤なやつよりずっといい。
まあ、とにかく、この日をお祝いしないとね。新しいのに取り替えだ。
最近ようやく夏らしくなってきた。いつもなら五月の終わりにはこんな気温になるんだけど、今年はなぜか全然上がらなくて、何だっけ……全国的な冷菓のせいなんだとか。
まあ、いいや。とにかく夏は好きだ。
ただ、今年の夏は、ちょっと来るのが遅すぎたね。
2.
6月16日 土曜日 天気:曇り
気温がじわじわ上がってきた。毎朝の天気予報で数字がどんどん増えていく。
長袖のシャツはもう気持ち悪い。半袖の季節だ。
明日はまた大阪の病院で検査。だからまたあのGiGOにも寄れるし、あの店でグッズも買える。そう思うとワクワクする。
明日はどのTシャツにしようかな……。
すごく楽しみだ。
3.
6月19日 火曜日 天気:曇り
今日も友達ゼロの一日だった。
野球をやってる連中を見るたびに、いつも羨ましくなる。
学校に戻ってきて一年半くらいになるけど、まだ友達ができていない。
「太田君、もっと外向的になれよ!」って自分に言い聞かせて、勇気を振り絞ろうとするんだけど、結局いつも失敗する。
今の俺は、ただ教室の隅っこに黙って座って、ほとんど誰とも話せない。
たぶん、あの病気のせいだろう。高校一年の第三学期の終わりにかかったやつ。
俺も昔はあいつらと同じで、スポーツが好きな明るい人間だった。
あの長い病気で一年近く家に引きこもって、オタクになったせいで、それからは友達が一人もできなくなった。
だって、こんな田舎町に、俺みたいなオタクがそうそういるわけないし。
病気になる前の日々が懐かしい。あいつらがやっぱり羨ましい。
4.
6月22日 金曜日 天気:雨が降りそうで降らなかった
またAとSにいじめられた。
あの二人は毎日取り巻きどもを連れて俺をちょっかい出してくる。毎日「お宅くん、お宅くん」って呼んでくる。
今日は俺の宿題のプリントを破いて丸めて、教室中で投げ合ってた。最後に取り返したら、そこには丁寧に汚い言葉がびっしり書かれてた。
よくあんなことを思いつくな。
先生に言うか? 言ったよ。無駄だった。今の担任は心の底から俺を見下してるのがわかる。
俺の成績がまあまあいいから表向きは何も言わないだけで、相談に行ってもいつも適当にあしらわれる。
母さんもあてにならない。それに友達すらほとんどいないから、助けてくれる人なんてなおさらだ。
困ったな……どうしよう。
5.
6月25日 月曜日 天気:不明
ああ……またか。
今朝起きたら耳鳴りがして、それから頭がすごく痛くなった。
あの病気をしてから、不定期にこんな症状が出るようになった。
でも薬もないから、ただ耐えるしかない。
母さんは今日の仕事を休んで、家で一緒にいてくれた。
今も頭痛がちょっとマシになったからこれを書いてるだけだ。
あとでまたベッドに戻らないと。本当に痛い。
ごめんね、母さん。迷惑かけて。
6.
6月28日 木曜日 天気:晴れ
今日は文化祭だった。すごく楽しかった。
一つ目は、AとSが今日はどっか別の場所に行ってて、誰もちょっかい出してこなかったこと。
二つ目は、なんと学校に同じ趣味の人がいるのを発見したこと。
文化祭をぶらついていたら、ずっと空き部室だったドアに「アニメ部」って貼ってあるのを見つけた。
「前からあったっけ?」と思って、ドアを開けた。
中には女の子が一人だけいて、アニメを観ていた。
誰かが入ってきたのに気づいたとき、彼女の目がキラッと輝いた。
彼女は高校一年の三組で、白石永愛っていう。麻花弁で、そばかすがあって、丸いメガネをかけていた。すごく美人ってわけじゃないけど、可愛かった。
話してみると、共通点がめっちゃ多かった。好きなアニメもゲームも一緒、音ゲーも好き、全体的に観たやつややったやつもめちゃくちゃかぶってた。
あともう一つ……喜んでいいのかわからないけど、二人ともいわゆる陰キャだった。学校で目立たないタイプで、内向的なところも似ていた。
彼女によると、これは新しくできた部で、だから今まで気づかなかったのも無理はないとのこと。
その日、俺は入部した。今は部員が二人だけだから、当然のように俺が副部長になった(笑)。学校に戻ってきてから初めての友達ができた。
「よし、じゃあ明日から毎日放課後ここに来よう!」ってことになった。
7.
7月1日 日曜日 天気:晴れのち曇り
二週間に一度の大阪での検査の日だ。でも今日はいつもと違う。
永愛は家族がいつも外市で働いていて一緒に住んでいないから、週末はけっこう自由な時間がある。だから彼女を大阪に誘ってみた。
すぐにOKしてくれた。
というわけで、今回大阪行きの電車には、俺と母さんに加えて、永愛も乗っていた。
道中ずっと楽しく話していた。母さんは「空気読んで」って感じで横で黙って、にこにこしてた。
もう、そういう関係じゃないんだから。「おせっかい」って笑わないでよ……。でも永愛は気にしてなかったみたいでよかった。
大阪で検査が終わったあと、永愛を連れてグッズを買いに行ったり、GiGOに行ったり、聖地巡礼したり……よく行くラーメン屋にも連れて行った。いろいろやった。
帰りの電車の中では、二人ともクタクタだった。
でも彼女は、こんなに満足して楽しかったのは初めてだと言った。
実は俺もそうだった。今までは遊びに行っても帰りは、いつもなんとなく心が空っぽだった。こんなに充実して楽しかったのは、初めてだった。
グッズ屋で彼女が欲しいものを見つけたとき、なんだか自分が見つけたときよりも嬉しかった。
ああ、これが友達っていうものなのか。誰かと喜びを分かち合える感じ、すごく好きだ。
ずっとこんなふうに続けばいいのに。
8.
7月4日 水曜日 天気:小雨
母さんが倒れた。
前触れもなく突然倒れた。高熱を出して、たまにうわごとを言うこともある。
診療所の先生に診てもらったら、一週間くらいは寝たきりだろうと言われた。過労が原因かもしれない、「これからはあんなにハードに働かせちゃダメだ」と。
なんでだよ!……
わかってる。全部俺のせいだ。全部この家のせいだ。
八年前に父さんが交通事故で死んでから、家のことはほとんど母さん一人でやってきた。
昼は働いて金を稼ぎ、夜は帰ってきてご飯を作って家事をする。残業を頼まれることもある。
母さんはもう本当に疲れていた。本当に休むべきだった。
おとといご飯を食べているとき、ふと母さんの髪がずいぶん白くなっていることに気づいた。しわも前よりずっと増えていた。母さんは冗談で「五十路のおばあちゃんみたい」って言った。
でもまだ四十三歳なのに……
ごめん、母さん。俺もっと自立できたはずなのに。もっと心配かけないようにできたはずなのに。ごめん、ごめん……
9.
7月6日 金曜日 天気:不明
今日家で倒れた。
朝から頭が痛くて仕方なかったけど、母さんの世話をしなきゃって頑張った。
昼ご飯を食べたあとも痛みはひどくなる一方で、寝室に向かおうとしたらそのままリビングで倒れて意識を失った。
あとで来た永愛に聞いた話だけど、彼女が来たときに誰も出てこなくて、結局母さんがドアを開けて、そこで倒れている俺を見つけたらしい。
倒れてる俺と、乾きかけの鼻血を見て、彼女はすごく驚いたって。
「無理しちゃダメだよ」と永愛は心配そうに言った。
俺は無理やり笑って「うん」とだけ言った。
……俺は本当にクズだ。本当に、何一つできない。
母さんの世話さえもできない。こんな、やるべきことさえできないのに、じゃあ俺は
生きてて何になるか。生きてて何の役に立つか。
でも、死ねない。死んじゃいけない。
痛いよ。
10.
7月10日 火曜日 天気:ますます曇る、雨が降りそう
母さんはだいぶ良くなって、今日から少しだけ家事もできるようになった。
だから、無理だけはしないように言い聞かせて、学校に戻った。
でも、変だ。
今日はAとSがちょっかいを出してこなかった。でも、何度も二人がこっちをチラッと見ながら何かひそひそ話しているのに気づいた。
それに、部室に行くときも、近くの廊下にあの二人が立っていて、でも俺が見ると何事もなかったように歩いていった。
何を企んでるんだ? またどこを狙われてるんだ?……わからない。
今日、永愛がまた新作ゲームを手に入れた。なんとあの文字を読んで進めるタイプのやつで、恋愛ものっぽかった?でも確かに面白かった。
彼女、ゲーム中にこっそり俺を見てた気がする……? 気のせいか。
今日はとても楽しかった。でもあの二人は
まあいい、考えてもわからないし。
何もなければいいけど。
11.
7月13 _曜日
こんな はずでは いや あいつが そんなことをするはずがない なぜなら俺はそんな
やつの 芝居に 決まってる 俺があいつに そんなことが できるはずがない
でも なぜ ? なぜあいつが ?
なぜ俺なんだ?なぜ私たち二人なんだ?なぜ
俺がそんな なんて ありえない ありえない!!
いや 信じない 俺は いや ありえない 絶対にありえない ただ 殴り殺した そんなの 俺は してない! 絶対にしてない!!
いやいやいやいや あいつらが 俺に そうさせたんだ! あいつらが先に !
いや そんなはずはない あるはずがない !
こんなことになるなんて ありえない ……
どうすればいい どうすればいいんだ ……
(注:第11節は事件の衝撃による極度の混乱の中で書かれたもので、塗りつぶされた不明瞭な筆跡は削除し、残りの判読可能な部分は残してあります。)
12.
7月14日 土曜日 天気:大雨
人を殺した。
それが現実だと理解できるようになるまで、一日経ってようやく冷静になれた。本当に人を殺したんだ。
人を殺した。Aを殺した。昨日の話だ。
苦しい 苦しい 落ち着いた。
昨日の出来事をすべて書き留める。
昨日の朝はまだ普通だった。頭痛もしなかったから普通に登校した。
でも昼休みが終わる頃、突然また頭が痛み出して、どんどんひどくなった。こんなことは初めてだったけど、我慢して学校にいた。
でも、本当に運が悪かった。
AとSは、俺と永愛がよく一緒にいることをどこかで知ったらしい。その日、放課後に帰ろうとしたら、教室に閉じ込められた。
それから、取り巻きの二人が永愛を引きずってきた。
彼らは俺を笑い、永愛をからかい始めた。
あの時、頭がすごく痛くて、しかも腹が立って、めまいがひどくて、「離せ、離せ」と叫ぶのがやっとだった。
俺が叫べば叫ぶほど、奴らは調子に乗った。ますます俺を笑い、罵る。永愛への仕打ちもどんどんエスカレートして、中には手を出そうとするやつまでいた。
焦れば焦るほど頭は痛くなるし、耳鳴りもひどくなって、最後には何を言っているのかさえ聞こえなくなった。ただ頭を抱えて苦しそうにうめくだけだった。
Aは俺が無視したことに腹を立てて、さんざん罵ったあげく、取り巻きどもに「永愛は好きにしろ」と言い放ち、俺の襟首をつかんで殴ろうとした。
あいつらが永愛に手を出したのを見て、俺は正気を失った。あの時は確かに頭がおかしくなっていた。
どこからか力が湧いてきて、Aの手をかわした。
そして、Sが置いていたバットを手に取り、思い切り振り抜いた。
……その後のことは、まったく覚えていない。
気がついたときには、AとSが二人とも床に倒れていた。周りの取り巻きたちは、荒い息を吐き、血のついたバットを持った俺をぼうっと見つめていた。
Sはまだ息があり、うめいていた。Aはもう絶命していた。
何が起きたか理解すると、俺は永愛の服を掴んで一目散に校舎を飛び出し、遠くまで走ってやっと止まった。
それから、二人はぎゅっと抱きしめ合って、声をあげて泣いた。
永愛が後で話してくれたところによると、あの時の俺は突然狂ったようにバットを振り回し、AとSが二人とも倒れるまで止まらなかったらしい。
Aは数回殴られて後ろに倒れ、その時に取り巻きの一人に足を取られて机の角に頭をぶつけ、すぐに絶命した。
それが昨日の出来事の全てだ。
昨夜、永愛は俺の家に泊まった。二人とも何事もなかったかのように振る舞って、母さんを騙した。
そして、逃げる準備をした。ここにはもういられない。
今日の明け方、母さんがまだ起きていないうちに、必要なものだけをバッグに詰めて、永愛とこっそり家を出た。幸運なのかどうかわからないが、それまでに警察が来ることはなかった。
永愛も家に戻って自分の荷物をまとめてから、駅へ向かい、大阪行きの始発電車に乗った。
今、この電車の中でこの日記を書いている。
昼間に日記を書くのは初めてだ。
出る前に、母さんに手紙を残した。
真実を伝える勇気はなかった。本当に無理だった。
「しばらく外を歩いてくる、落ち着きたいんだ」と嘘をついた。
「心配しないで、すぐに戻るから」と書いた。
でも、すぐに彼女はこのことを知るだろう。どうしたって知ってしまう。
ただ、俺は……俺……
ごめん ごめん ごめん ごめん ごめん ごめん
ごめん、母さん。
ごめん、永愛。こんな俺に付き合わせて、いっしょに苦労をかけて。
君は何も悪くないのに、家に帰ればよかったのに、普通に生きていけたのに、それなのに俺と一緒にいてくれて……
ごめん、永愛。 これからどうやって生きていけばいいんだ。
13.
7月18日 水曜日 天気:曇り
大阪に来て五日目。
この五日間、俺たちはネカフェ暮らしだ。
二人とも外に出られなくて、食事の時間になると交代で階下のコンビニに食べ物を買いに行くだけ。
部屋はすごく狭い。金があまりないからずっと一部屋しか借りていない。
中にはベッドが一つ、パソコンが一台、それに洗面道具と脂ぎったメニュー表が一枚あるだけ。それ以外は何もない。
俺たちは交代で休む。ベッドが小さすぎて一人分しかないから、一人が寝て、もう一人がベッドの端っこに腰かけてネットをしている。
この数日間、永愛は何度も悪夢にうなされて目を覚ました。でも何を見たのか聞いても絶対に教えてくれない。ただ俺の服を掴んで泣き続ける。俺は慰めの言葉をかけるくらいしかできない。
実は、俺も悪夢を見ている。
警察がドアを蹴破って入ってきて、手錠をかけられて無理やり連れて行かれる夢。AとSが現れて、延々と俺を苦しめるのに体がびくとも動かない夢。
一度、目が覚めたら枕が濡れていた。
ただ、彼女の前では泣けない。泣いているところを見せたくないんだ。
もう五日経った。
毎日できるだけ節約しているのに、それでもお金はどんどん減っていく。このままじゃ、飢え死にするかもしれない。
どうすればいいんだ。
14.
7月21日 土曜日 天気:晴れ
今日は絶対に俺と永愛のラッキーデーだ。絶対にそうだ。
ようやく金を稼ぐ方法を見つけた。
宿の下のセブン-イレブンが昨日、バイトの募集広告を貼り出した。そこで時給をもらって働こうと思いついた。
ネットで調べてみたら、あの事件のニュースはまだ出ていないようだった。それで永愛にその話をした。彼女も賛成して、一緒に行くと言った。
だから今日、勇気を振り絞って永愛と一緒に階下へ行き、店長にバイトさせてほしいと頼んだ。
まさか本当にOKが出るとは!
店長は神崎さんという、優しそうなお姉さんだった。「あら、あなたたち学生でしょ」と一言言って、二つ返事で笑顔で承諾してくれた。実は、毎日のように来ていたから、彼女はもう私たちの顔を覚えていたらしい。
店長曰く、この辺りは人通りは多いけど、バイトを応募する人はほとんどいなくて、何度も広告を貼っても誰も来なかったから、一人でいつも手が回らなかったんだそうだ。今回試しに貼ってみたら、まさか本当に誰か来るとは思わなかったと言っていた。
そして、できるだけたくさん手伝ってほしいと言われた。もちろん喜んで、だって働けば働くほどお金が入るからね。
とにかく、今日は本当に嬉しかった。明日に少しだけ希望が見えた気がした。
毎日午後四時から閉店の十一時まで働いて、週六日なら、時給換算で八十四時間分。一週間の食費と宿泊費を差し引いてもかなり残るはずだ。下手したら週に一回は外に遊びに行けるくらいかも。
自分と永愛の未来にちょっとだけ期待が持てるようになった。
来週の日曜日にはちょっと美味しいものが食べたいなあ。何日間コンビニ飯ばかりかわからない。
15.
7月24日 火曜日 天気:晴れ
昨日、この地域は午前中から午後二時まで停電するという回覧板が回ってきたので、今日はコンビニは一日休業になった。
だから神崎店長が遊びに連れて行ってくれると言い出した!
彼女は私たちを、いつも行くのとは別の難波のショッピングモールに連れて行って、ほぼ一日中ショッピングをし、お昼にはすき焼きの食べ放題をご馳走してくれた!
大阪に来てから二週間、こんなに美味しいものを食べるのは初めてで、一口目を食べたとき、泣きそうになった。
本当に疲れた。大阪に来てから、毎日びくびくしながら生きてきた。本当に疲れた。
今日は店長に付き合って洋服を二着と化粧品を何点か買った。彼女は「ずっとお金を貯めてやっと買えた」と言っていた。本当にリア充だなあ……
モールをぶらついていたら、すごく大きなグッズ屋も見つけた。俺と永愛は興奮して駆け込み、それぞれ欲しかったグッズを何個か買った(笑)。けっこうお金を使ったから痛いけど。
買っている間、店長はずっと横で見ていた。「よくわからないけど、あなたたちが楽しそうだから私も嬉しい」と言ってくれた。彼女は天使だ……
今日は大阪に来てから一番楽しい日だった。本当に、今日はとても楽しかった。
ただ、こんな日々が少しでも長く続きますように。
あの事件のニュースは、もうすぐ出るだろう。
その時どうなるんだろう……
どうか、あと数日だけでも俺と永愛を楽しませてほしい。もうこれ以上望むものはない。
ただ、彼女と離れたくないだけだ。彼女もそうだ。
16.
7月27日 金曜日 天気:曇り
木曜日の夜、ネットでテレビを見ていたら、あの事件のニュースが流れた。
あの時、俺と永愛は二人とも起きていて、一緒に見た。
実は、もうずっと前からこの日が来ることは予想していたから、いざニュースを見ても、心は意外と平静だった。
報道によると、何人かの親切な同級生が警察に事情を話してくれたらしく、ニュースの経過はあの日俺が日記に書いたのとほぼ同じだった。
あとで、いじめ問題に関する簡単な分析も少し流れた。
でも、その後、容疑者の家族へのインタビューの場面が出たとき、本当に我慢できなかった。
画面に映っていたのは母さんと永愛の母親だった。目元はぼかし処理されていたけど、それでも母さんの目の下のくまがすごく濃くなっているのがわかった。
彼女は話しながら何度も声を詰まらせ、背中を向けて手で涙を拭っていた。
その姿を見たとき、鼻の奥がツーンとして、すぐに涙がこぼれた。
ティッシュを取ろうとしたら、永愛も泣いているのが見えた。
理由は同じだとわかった。
その夜、二人で長い間泣いた。
本当に、俺は母さんに対してとても申し訳ないことをしたと思う。
俺が町から消えたとき、母さんがどんな気持ちだったか想像するだけで怖い。自分の息子が人殺しになったと知ったとき、母さんはどう思うだろう。
きっと失望するだろう。そう思うに違いない。
でもわかるんだ、彼女は今でも俺を心配しているって。眠れないほどに思い続けて、もしかしたらまだ俺を探しているかもしれない……
どうやってこんなに借りを作ったものを返せばいいんだ……どうやって彼女に報いればいいんだ……
本当に苦しい。とても苦しい。
あの日、使い捨てマスクを二パック買った。ごく普通のやつ。これから外出するときに顔を隠して、バレないようにするためだ。今日のバイトでさっそく使った。
でも、こんなニュースを気にする人なんて、ほとんどいないだろうな。
……笑える話だ。それでも俺は戻れない。
実は、戻ったほうがみんなのためにいいんだ。母さんも安心するし、永愛も普通の生活に戻れるし、俺も本当の意味で解放されるだろう。
でも、怖いんだ。
永愛もそうしたくない。彼女は言わないけど、わかる。
もうとっくに、お互いから離れられなくなっているのかもしれない。
いつまでこんなふうに隠れ続けられるかわからない。でも、もしこの日々が終わってしまったら、永愛と俺はどうすればいいんだ……
17.
7月30日 月曜日 天気:大雨
ああ、今日はもうすべてを台無しにした。
午後四時ごろ、二人の客が来た。その時はあまり気にしていなかったので、自分の仕事を続けていて、彼らに気づかなかった。
会計のときに初めて、彼らが警察の制服を着ているのに気づいた。
頭の中が「ドン」とした。ゆっくり顔を上げると、彼らはじっと俺を見つめていて、表情はとても厳しかった。
何週間も痛んでいなかった頭が、一瞬でまた痛み出した。めまいに耐えながら何とか会計を済ませたけど、その後も彼らは俺を見ていた。
自分の顔色がどれほど青白かったか想像もつかない。
「何か他にご用はありますか」と聞いて、ようやく「人違いだったみたいだ」と言って去っていった。「こんなところにいるわけないか」とぼそぼそ言いながら。
彼らが去った後、吐き気がひどくなって、すぐに街角へ走って壁にもたれてえずいた。
しばらくえずいても何も吐き出せなかった。めまいと脱力感で壁に寄りかかって地面にへたり込んだ。大雨で全身ずぶ濡れだった。
後で店長と永愛が一緒に傘をさして俺を店の中に連れ戻してくれた。
その後、宿に戻って休んだ。十時ごろまで横になっていたら、頭痛はまあまあ治まった。
永愛も俺を心配して、九時過ぎには早めに帰ってきていた。
俺は本当にクズだ。なんて役立たずなんだ。
18.
8月1日 水曜日 天気:わからない、たぶん雨
八月になった。あの日からもう半月か。
昨日から熱が出た。雨に濡れたせいだろう。
昨日の昼から熱が出始めた。薬を買って飲んだけど、あまり効かない。
薬って高いんだな。 でも頭も痛い。
もう宿に二日間寝ている。永愛は今、俺の世話のため、一日五時間しか働けていない。
せっかく貯めたお金が全部無駄になった。辛い。
まったく、罰当たりなことだ。
本当に役立たずだ。
もう書けない。
19.
8月3
四日目。熱が下がらない。
この狭い部屋に四日間寝ている。何もしていない。
本当に役立たずのクズだハハ
頭がぼんやりする。何を書いているんだろう。
疲れた。泣きたいけど泣けない。
お金はどんどん減っていく。毎日薬を飲んでも良くならない。薬って本当に効くのか。
頭も痛い。割れそうに痛い。
申し訳なさでいっぱいだ。何もできていない。何もできない。
永愛に頼るしかない。彼女に本当に悪い。
ずっと俺が足を引っ張ってきただけだ。
ずっと俺がお荷物だっただけだ。
そうだ お前はお荷物だ
宿で何もしないで寝ているお荷物
彼女に申し訳ないと思わないのか
どうしてまだ死なないんだ
どうしてまだ死なないのか。そうだ。
笑いたい。
また泣きたい。
どうしてまだ死んでいないんだ。
20.
8月5日 日曜日 天気:小雨
今日が最後の日記になるかもしれない。
今は午前四時。永愛はまだ寝ている。
俺は決めた。近くのあの建設中の廃ビルへ行く。あの屋上から飛び降りる。
俺は人殺しだ。元々死ぬべき人間だ。
このまま死んだら、それも悪くない。
命で償うことになる。永愛は普通の生活に戻れる。母さんはもう俺のことを気にしなくて済む。世界からは一人の犯罪者と一人のお荷物がいなくなる。
素晴らしいじゃないか! 完璧だ!
だから、そのまま死のうと思う。
そうすれば、みんなきっと喜ぶ。きっとそうだ。
今のうちに行く。永愛がまだ起きていないうちに、こっそり抜け出す。
そうすれば、誰にも計画がバレない。
ああ、この日記帳も持って行って、抱えたまま飛び降りるつもりだ。
そうすれば、きっと美しいだろう。こんな小雨の中で、屋上から舞い降りるなんて。
じゃあな、この世界。
さようなら。
どうして彼女に見つかったんだ?! どうして彼女がここに来たんだ?!
何も残さなかったはずだ 何も痕跡を残さなかったはずだ
どうして彼女がどこにいるのか、何をしようとしているのか知ってるんだ?!
なぜ俺を死なせてくれないんだ? どうして?
俺の死はみんなのためになるんじゃなかったのか 良いことなんじゃなかったのか
彼女はなぜ俺を屋上から無理やり引きずり下ろしたんだ なぜそんなことをしたんだ?
彼女もいい暮らしをしたいとは思わないのか こんな苦労を続けたいなんて思うはずがない
確かに俺が死ねば彼女は家に帰って学校に戻れる もうこんな怖い思いや苦労をしなくていいのに
彼女は自分の将来を台無しにしているんだ
もう駄目だ すべて無駄になった きっと彼女は俺を監禁して見張るだろう 死ぬことはもうできない 理想はすべて崩れ去った
いったい彼女はなぜこんなことをしたんだ 誰か教えてくれ 俺はどうすればいいんだ
俺はどうすればいいんだ……
やっと落ち着いたか。
さっきまできっと頭がおかしかったんだ。
実は、全部わかってる。全部理解してる。ただ、わかろうとしなかっただけなんだ。
まるで夢から覚めたような気分だ。めちゃくちゃな夢だった。
そうだ、永愛が俺に死んでほしいわけがない。そんなのありえない。
彼女が屋上から俺を引きずり下ろした後、あんなに悲しそうに抱きしめて大泣きしたじゃないか。
あの時の彼女の姿は、なんて可哀想だったんだ。
彼女こそこの世界で一番俺に死んでほしくない人間なのに、なんで俺は「死んだほうが彼女のためになる」なんて断言してたんだ。
ずっと自分を騙していたんだ。ずっと自分に暗示をかけていたんだ。
自分こそが一番死ぬべきじゃない人間なのに。
絶対にもう死のうなんて思わない。絶対に。自殺も絶対にしない。
ごめん、永愛。
ごめん。ごめん。
もう二度と君を一人ぼっちにしない。
信じてくれ。
21.
8月8日 水曜日 天気:曇り
今日はどこから書き始めればいいのか、ちょっとわからない。頭が混乱している。
今日はいろんなことがあった気がする。でも、実際は何もなかったような気もする。
いったいどこから書こう……
……まあいい、本題に入ろう。
今日、永愛に告白された。
実は、これはいつか起こることだったんだ。永愛が俺のことを好きだって、ずっとわかっていた。
でも、俺が想像していたのは、もっと素敵なシーンで、彼女がすごく楽しそうに笑っているはずだった。
でも今日、彼女がその言葉を言ったとき、彼女は笑いながら泣いていた。
今日の午後、バイト先で神崎さんが外に出ているとき、ここ数日ずっと黙っていた永愛が突然俺を呼んだ。返事をすると、彼女は近づいてきてその言葉を言った。
「先輩のことが好きです」 言い終えると、彼女は安心したように笑った。
ここ数日で初めて彼女の笑顔を見た。
その後、彼女はたくさん話した。でも、話しているうちに、また泣き出した。
この言葉を言うべきかどうか、ずっと悩んでいたらしい。実は一ヶ月前、俺に助けられたあの日から、もう好きになっていたのだと。
悪夢を見るとき、一番怖いのは俺と別れる夢だと言った。自分がどれだけ俺と離れたくないかわからないと。
そして、あの日俺がいなくなったことに気づいたとき、どれほど怖かったか、永遠に失ってしまうのではないかと。最後に俺を見つけたとき、どれほどほっとしたか。
そして、もう二度と自殺しようとしないでほしいと、今や俺がほとんど彼女の唯一の支えなのだと……って。
俺は……今、永愛にどう向き合えばいいのかわからない。
今になってようやく、俺が死のうとしたことが、どれだけ彼女を傷つけたか、どれだけ怖がらせて悲しませたか、本当に理解した。
彼女を逃亡生活に巻き込んだのは俺だ。彼女に苦しみと傷を与えたのは俺なのに。
それなのに彼女は、そんなに強く俺を好きでいてくれる。
……実は、俺も永愛が好きだ。
ここ二日くらいでようやく、永愛に対する感情が何だったのか、本当にわかったんだ。
そうか、俺も本当に彼女を好きだったんだ。
でも、俺は永愛を好きになる資格なんてないし、彼女も俺を好きになるべきじゃない。
本当に迷ってる。矛盾してる。
彼女の気持ちにどう応えればいいのか、自分の彼女への気持ちにどう向き合えばいいのか……
今日の最後まで、永愛に返事はしなかった。
もう自殺しないと約束した。彼女から離れないと約束した。
でも、告白にはまだ返事をしていない。
少し時間がほしいと伝えた。でも、その時間がどれくらいになるのか、自分でもわからない……
俺は彼女を好きになるべきなのか。どうやって答えを出せばいいのか。
22.
8月12日 日曜日 天気:晴れ
今日は日曜日。
三週間前のあの願いを初めて叶えた日でもある。
俺の事件のニュースはまだネット上にあるけど、減り始めている。警察はいったい何をしているのか、もう一ヶ月も経つのにまだ捕まらない。
だから今日は思い切って、マスクと前に買ったサングラスをかけて、永愛を連れて出かけた。
主に、ここ数日間ちょっと気まずくなっていた空気を和らげたかったからだ。
彼女に告白されてから、この何日間、まともに話せていなかった気がする。
だから今日、彼女に「前にあの場所に行かない?」と誘った。
彼女は頷いた。
というわけで、また一ヶ月半前に一緒に行ったあのショッピングモールに連れて行った。
またグッズ屋に行った。前に行った時と比べて、中身はずいぶん変わっていた。
また一週間以上働いて貯めたお金が、ようやく役に立った。
気に入ったグッズを何個か買って、永愛もいくつか買って、楽しく会計を済ませた。
彼女が欲しいグッズを見つけるのを手伝うとき、やっぱり自分が見つけるよりもずっと嬉しかった。あの時と同じだ。
お昼は前に食べたラーメン屋に行った。やっぱり美味しかった。
午後もGiGOに連れて行った。彼女と長いこと音ゲーをした。
音ゲーはやっぱりリラックスできる。この間のネガティブな感情が全部、この数時間の間に吹き飛んで、ゲームに没頭できた。
終わった後は全身汗まみれだったけど、すごく軽くなった気がした。
彼女が楽しそうに笑うのを見て、俺も楽しく笑った。久しぶりにこんなに楽しかった気がする。
宿に帰る地下鉄の中で、ずっと悩んでいた問題の答えがわかった気がした。
俺はただ人に苦しみと傷を与えるだけの人間じゃなかったんだ。
彼女を、一番大切に思っている彼女を、あんなに楽しく笑顔にすることもできるんだ。
じゃあ、何を悩む必要があるんだ。俺は自分が思っているほどダメな人間じゃない。
それに、ふと思ったんだ。好きになる資格とか、好きになるべきかどうかなんて、本当はどうでもいいんじゃないかって。
彼女が俺を好きで、俺も彼女を好きで、二人で一緒にいるときに楽しくいられるなら、それで十分じゃないか。
ふさわしいかどうか、そうあるべきかどうか、それが何だっていうんだ。
ただ二人で楽しくいられれば、それでいい。
だから、宿に戻ってから、俺も彼女にその言葉を言った。
「俺もずっと永愛のことが好きだ」
そのあとも、いろいろ話した。
でも、こうやって言葉にすることで、俺の心のわだかまりも解けた気がする。
永愛は嬉しさのあまりまた泣きそうになっていた。
彼女は、この数日間ずっと怖かったと言った。実は俺は彼女を好きじゃなくて、告白したことで友人関係すら壊れてしまうんじゃないかって。
そんなわけないだろ、バカ。
でもこれで、二人の心の重荷も降りたかな。
でも今日から、俺たちは正式に恋人同士になったわけで……
ありがとう、永愛。
これからもよろしく。
23.
8月14日 火曜日 天気:ますます曇る
昨日、俺たちは二人で正式に付き合い始めたことを神崎さんに伝えた。
すると今日、彼女は羨ましさと嫉妬と、ちょっとした見下しを込めた目で俺たちを睨んでいた。
もう、リア充め、そういうのやめてくれよ。
冗談はさておき、その後は普通になって、お祝いもしてくれた。「あなたたちが来たときからカップルだと思ってたよ、今頃なったんだ」って。
母さんがこのことを知ったら、どう思うだろう。
きっと喜んでお祝いしてくれるだろうな。
また母さんのことを思い出した。
今ごろ彼女はどうしているだろう。もう長い間、彼女の情報は見ていない。
きっと、ずっとうまくいっていないんだろうな。
きっと、毎日俺のことを心配しているんだろう。
たとえ匿名のアカウントで「元気です」と一文字送るだけでも、彼女はだいぶ安心するだろう。
でも、やっぱりそれができない。
警察はもうネット上の情報で居場所を特定できると聞いた。たとえ一通のメッセージでも、それを送ればすぐに場所を特定されて連れて行かれるだろう。
……でも、もしかしたらもっと怖いのは、メッセージを送るという行為そのものかもしれない。
前にメッセージを送ろうと思って、新しいメールアドレスを登録し、母さんのアドレスを入力した。何か書こうとした。
でも、空白の入力欄に向かって、何も書けなかった。
言いたいことはたくさんあるのに、キーボードに手を置くと、何も打ち込めなくなった。
どう切り出しても怖くて、でも何が怖いのか自分でもわからなかった。
三十分ほど格闘したけど、結局ウィンドウを閉じた。
実は、書けたとしても、いざ送信する段階になれば、やっぱり尻込みするだろう。
でも、このことを考えると、いつも苦しくなる。
やっぱり罪悪感のせいだ。
母さんに負っている借りがあまりにも多すぎる。
自分が臆病者であることが憎い。どうして一言も言えないんだ。
どうして、たった一通のメッセージすら送れないんだ。
24.
8月17日 金曜日 天気:曇り
八月も半分過ぎたね。でもまだまだ暑い。
また一週間働き終えた。毎日増えていくお金を見ると、いつも強い達成感がある。
でも、あと二週間で学校が始まる。そうしたらこんなふうに働けなくなる。一日七時間も働いていたら、怪しまれるだろう。
でも、こんなに頑張って働かないと、食費や宿泊費が足りなくなる。
もしぎりぎりの生活しかできなくなったら、とても辛いはずだ。
それは大阪に来たばかりの数日と変わらない。食べるのに困る日々だ。
もし本当にそんなふうになるなら、いっそ自首したほうがマシかもしれない。
自首。
そんな考えが、時々頭に浮かぶ。大阪に逃げてきた日から、「いっそ自首したらどうだろう?」という思いはずっとあった。でも、まだその決断はできていない。
いや、もう死のうとは思わない。あんなことは絶対にしない。
もう二度とそんなことはしない。
でも、自首はどうだろう。それは本当に良い解決方法かもしれない。
そうすれば、永愛の生活は本当に元に戻る。母さんにも少なくとも何度か会えるし、今よりは安心できる。もうこんなふうに心配しなくていい。俺も警察から逃げて生活する必要がなくなる。
さっきのとは違う。上のやつは、本当に良い結果をもたらす。
……でも、刑務所に入るだろう? 実際に人を殺してしまったんだから。
殺人は絶対に刑務所に入るだろう。そこで何年も閉じ込められて、出所しても前科がついて、何もできなくなるだろう。
刑務所には入りたくない。すごく怖い。
それに、永愛もきっと同意しないだろう。
恋人になったばかりで、誰が別れたいと思うだろう。
それに、まだ彼女から離れたくない。
でも、こんな日々はいつか終わる。今のところ警察に捕まっていないのは奇跡みたいなものだ。この先どうなるかなんて誰にもわからない。
新学期が始まったら、別の方法を見つけなければ、本当に食べるのに困るかもしれない。
今のうちに宝くじを買って一億円当たらない限り……
そんなの完全に妄想だ。
でも、どうしよう。最後にお腹を空かせたくないなら、自首するしかないのか。
すごく悩む。どうすればいいんだ。
25.
8月19日 日曜日 天気:小雨
この二日間、母さんの夢を見た。
念ずれば夢に出るってやつか。
でも普段は、夢を見ても起きたらすぐに内容を忘れてしまう。
でもこの二日間の夢は、今でもはっきり覚えている。
いつも彼女が憔悴して家の食卓に座っている姿が浮かぶ。前よりずっと老けて見え、髪もずっと白くなっていた。おそらく仕事をしていたのだろう、ノートパソコンに向かってタイピングをしていた。
食卓の脇には何種類もの薬がばらまかれていて、見たこともないようなものもたくさんあった。
彼女はタイピングを数分するたびに咳き込み、とても苦しそうだった。体は間違いなく前よりずっと悪くなっている。
周りの環境は前とほとんど変わっていなかった。彼女は相変わらず家をきちんと整えていた。でもベランダの花、彼女が一番好きだったはずの花は、たくさん枯れていた。忘れるはずがないのに。
彼女はしばらく作業をして、深いため息をついてパソコンを閉じた。
そして、向かいの壁に貼ってあるあの写真を、長い間ぼんやりと見つめていた。
それは母さんと一緒に沖縄に旅行に行ったときに撮った写真で、写真の中の二人はとても楽しそうに笑っている。
でも、見つめているうちに、彼女は泣き出した。
彼女はすすり泣きながら、慌てて机の上のトイレットペーパーを引き寄せ、ごしごしと乱暴に涙を拭った。誰かに見られるのを恐れるように。それから顔を洗って、また戻ってきてパソコンに向かった。彼女の目はまだ赤かった。
夢の中で、母さんに話しかけようとしたけど、どんなに大きな声で話しても聞こえないことに気づいた。
ただ彼女を見つめることしかできなかった。心臓を鈍器で殴られているような痛みが、何度も何度も襲ってきた。
目が覚めたとき、枕が濡れていることに気づいた。
そして、時間が経っても、心はいつまでもずっとむかむかと痛み、頭も少しずつ痛み出した。
今日は気分転換に永愛とGiGOに行ってみた。
でもゲームをしていても、頭の中ではいつもあの夢のことを考えてしまい、どうしても振り払えなかった。
ゲーム中は上の空で、今日はひどいスコアだった。
永愛はそんな俺の異変に気づいたのか、「どうしたの、何かあったの?」と聞いてきた。俺は作り笑顔で首を振った。
こういうことは、永愛にさえなかなか言えない。
「母さんに会いたい」なんて言葉を言ったら笑われるだろうか?
でも、本当に会いたい。母さんに本当に会いたい。
実は、永愛も同じような気持ちかもしれない。彼女ももう長い間両親と連絡を取っていないから。
母さんに会いに行きたい。母さんの前に立って、ただ俺の顔を見せるだけでもいい。一言も話さなくてもいいから。
でも、できない。
できない。
自首するのが、本当にいいことかもしれないか。
26.
8月21日 火曜日 天気:曇りのち晴れ
新学期まであと一週間あまり。俺と永愛がこうしてバイトで稼げる日も、あと一週間あまりだ。
そのことを考えるたびに心が痛む。でもどうすることもできず、ただ無念に思うだけだ。
この二日間はあの夢を見ていない。でもやっぱりあの光景が思い浮かび、思い出すたびにまた少し苦しくなる。
今日も午後からコンビニでバイトをしていた。
バイトをしているうちに、またあの夢が頭の中に飛び込んできて、また苦しくなった。でもバイト中だったから、俺は向かいの壁をじっと見つめて、何も考えずに頭を空っぽにしようとした。
そこでぼんやりしていたら、神崎さんに見つかってしまった。
彼女は俺を何度か見て、反応がないのに気づくと、二度ほど呼びかけ、軽く肩を叩いた。
それでようやく我に返った。
彼女は「何かあったの?」と聞いた。俺は笑って首を振り、「いいえ」と言った。
彼女も笑って、何も言わずに、フードコートの椅子を一つ引っ張ってきて、俺の隣に座った。
「その顔じゃ絶対に何かあるよ」と彼女は言った。「でも話したくなければいいよ。ただ、今お客さんもいないし、ちょっと話さない?」
断る理由もなかったので、うなずいた。
その時、永愛は買い物に出かけていたので、二人でそんなふうに話し始めた。
最近の流行りの話とか、最近流行っている音楽やドラマの話とか。でもしばらく話すと話題が尽きて、また黙り込んだ。
俺はまた向かいの壁をぼんやり見つめていた。神崎さんは頬杖をついて、何を考えているのかわからない様子だった。
突然、彼女が再び口を開いた。「もしよかったら、ちょっと私が勝手に話してもいい?」
俺は「うん」とだけ言って、彼女が何を言いたいのかわからなかった。
彼女は少し間を置いて、また話し始めた。
「実はね、私、高校のとき、二ヶ月くらい家出したことがあるんだ」と彼女は言った。
その言葉に、俺は少し驚いて彼女を見た。彼女は気づいていないようで、そのまま話し続けた。
「その頃高校二年生だったかな。まあとにかく親とちょっとした揉め事があってね。今思えば大したことじゃないんだけど、当時はすごく腹が立って、こっそり家を飛び出しちゃったの。
「大阪から電車に乗って東京まで行ったんだ。一月のことだったから、外はいつも寒くて、雪も降ってた。
「東京に着いた最初の数日は、本当に嬉しかった。親の束縛から逃れられて、やりたいことが全部できるって思ってたから。昼間は銀座のショッピングモールをぶらついて、夜は良いホテルに泊まって、毎日が本当に楽しかった。
「でもそんなふうに何日か過ごしたら、残金が少なくなっているのに気づいた。すごく慌てて、あの手この手で節約した。安いネットカフェに泊まって、食事もコンビニで済ませた。
「運よく、その後高校生でも働けるカフェを見つけて、そこでバイトを始めた。
「あの二ヶ月間は本当に疲れた。バイトで稼いだ金は食べるので精一杯で、やりたいこともできず、ただそんな三点を往復するだけだった。
「本当に苦しかった。カフェの仕事も疲れた。でも揉め事への意地があって、何とか我慢して家に帰らなかった。でも、一日働くごとに、もっと家が恋しくなり、家の良さを思い知り、あの揉め事がちっぽけに思えてきた。
「そしていつしか、店長がなぜか私をひどく叱って、我慢の限界を超えた。すごく落ち込んでカフェを飛び出し、ネカフェに戻って大泣きした。その日のうちに大阪に帰るチケットを買って、大阪に戻った。その時初めて、カッとなって家出した決断がどれほど愚かだったかを思い知った。
「それで明け方に家に着いたんだ。玄関に立ったとき、母に会うのがすごく恥ずかしくて、でも意を決してドアをノックした。
「ドアを開けたのは母だった。私を見ると、最初はしばらく呆然として、それから我に返って、玄関でこんなに抱きしめて大泣きした。私がいない二ヶ月で、彼女はすごく老け込んでいた。私がいない間、毎日心配で仕方なかった、やっと安心したと泣きながら言った。
「あの時わかったんだ。親はどんなことがあっても子供を愛しているし、あなたが何をしても同じように愛してくれるんだって。」
それから、彼女は突然こちらを向いて、笑いながら言った。
「だから、あなたに何があったのかは知らないけど、絶対にあなたを一番愛している人を裏切らないでね。いい?」
俺はしばらく立ち尽くし、なかなか返事ができなかった。
永愛の姿が入り口に現れた。買い物を終えて戻ってきたところだった。
神崎さんは立ち上がって、椅子を元の場所に戻した。「今日はちょっと話しすぎたね。この話、誰にもしたことなかったんだけど、今日はなぜか急に話したくなっちゃった。」そう言って、また笑いながら俺の方を向いた。「でも、この話があなたの背中を押せたらいいな!」それから、彼女は自分の仕事に戻っていった。永愛が戻ってきたのを見て、俺も仕事に戻った。
まさに目から鱗、まさに一語、一瞬で目を覚まされた気分だった。
今までなかなか乗り越えられなかった何かを、突然理解できた気がした。
そうだ、なぜ今までそんなに悩んでいたんだ。
もしやることが本当に良いことなら、もし本当に母さんに会いに行きたいなら、そんなに悩む必要なんてあるのか。考えたとおりにやればいいじゃないか。結果がどうであれ、それが何だっていうんだ。
刑務所に数年入ることになったって、それが何だっていうんだ。
母さんに申し訳ないことを、もうこれ以上はしたくない。
もう二度と、自分で後悔することはしたくない。
そうしよう。
でも、どうしても心配なこともある。
特に永愛のことだ。
他のことみたいに「まあいいや」と開き直るわけにはいかない。
自分がいなくなったら、彼女はどうなるのか。
確かに彼女は元の生活に戻れる。でもそれで本当に彼女は幸せなのか? そんなことは彼女の望みなのか。
彼女はきっと行ってほしくないと思っている。きっと寂しがるだろう。実は俺だって同じなのに。
でも、もう逃げられない。もう無理に耐え続けるのも無理だ。そうすれば、結局誰も幸せになれない。
結局、今と同じように悩むことになるんだろう。
このことをはっきりさせるのに、あと数日は必要かもしれない。
あと数日だけ時間をくれ。
27.
8月23日 木曜日 天気:曇り
だんだん涼しくなってきた。天気予報の数字も少しずつ減り始めた。
もうすぐ秋か。今年の夏は、終わるのが早いな。
この二日間、ずっと永愛のことを考えていた。
本当にこれでいいのか、完璧な解決方法を見つけたのか、まだわからない。
でも、もう迷っている時間はない。
わかってる。もしこのまま自首しても、本当に良いことばかりじゃない。
彼女はこんなの望んでいないって。こんなのは無責任だし、永愛にも悪いって。
でも、もうこれ以上逃げられない。
いつかは向き合わなければならない。それが早いか遅いかだけだ。
自分から向き合って、自分の責任を引き受けるほうが、むしろいい。
ただ、永愛には本当に申し訳ない。
彼女にわかってほしい。許してほしい。
もしまた彼女に会えるなら、彼女が何をしようとも、殴ろうが罵ろうが、受け止める。
もし彼女が許せないなら、もしもう二度と会いたくないなら、それでもいい。
もし彼女が俺を恨み尽くすなら、それも受け入れる。
ただ彼女に、これからはちゃんと生きていってほしい。たとえ俺のことを忘れたとしても、それでいい。
でも、今回は本当にさよならだ。
明日、彼女がまだ起きていないうちに、警察署へ行って自首する。
今回、いつまた会えるかわからない。永遠の別れになるかもしれない。それでもいい。
また会えることを願っている。
じゃあな、永愛。
さようなら。
28.
8月24日
僕の最愛の永愛へ
これを見ているということは、ドアに貼ったメモを見てくれたんだね。
自殺しに行ったわけじゃないよ。本当だよ。約束は守るから、信じて。だから、慌てないで、座ってこれを最後まで読んでくれる?
もう気づいているかもしれないね。そう、自首しに行ったんだ。君が買い物のときに通りかかるあの交番に。
受け入れられないかもしれないけど、どうか最後まで聞いてほしい。
この決断をするまで、本当に長い間考えた。
でも、どうやっても両方にとって良い決断ができないことがわかった。
実はその前に、二、三日ほどずっと母さんの夢を見ていた。
夢に出てきた母さんは、とても老けて見えた。そしてすごくやつれていた。
今でもあの場面を思い出すと、やっぱり辛い。
母さんにたくさんの申し訳ないことをした。彼女は今でもきっと僕のことを案じているのに、僕はたった一通のメッセージすら送れない。
本当に、申し訳なくてたまらない。
君は絶対に僕が自首するのを望んでいないだろう。言わなくてもわかっている。
実は、僕だって君と別れたくない。
それでも自首すると決めたんだ。
理由はたくさんある。
もうすぐ新学期が始まる。その後は、今みたいにバイトはできない。そうなったら、食べることや寝ることもままならない。どうやって生きていける?
それに、母さんに対してこれ以上申し訳ないことをしたくない。もう僕のことで彼女を心配させたくない。そして、自分自身がまた後悔するのも嫌だ。
もっと大切なのは、君にちゃんと生きていってほしいからだ。
君に家に帰ってほしい。普通に学校に通ってほしい。僕のせいでこれ以上君の足を引っ張りたくない。
確かに、君が僕と一緒にいるときは楽しいかもしれない。でも君は僕のためにたくさん苦労し、たくさん辛い思いをしてきた。
わかっている。こんなふうに黙って去るのは、とても無責任だって。
でも、これ以上君に僕と一緒に苦労させるわけにはいかない。
だから、自首することにした。
君は今も悲しいかもしれない。
理解してほしいとは思わない。許してほしいとも思わない。
もし許してくれるなら、もし待っていてくれるなら、僕はとても嬉しい。
もし許せなくて、僕を忘れて、二度と会いたくない、あるいは僕を憎み尽くすなら、それでもいい。
君がちゃんと元気に生きていてくれるなら、それで十分だ。
君と過ごした一ヶ月あまり、僕は本当に楽しかった。満足していた。
でも、そろそろお別れの時だ。
誰にでもやるべきことがある。君は神崎さんに他のことを伝えたら、家に帰りなさい。町に帰るチケットを買って、学校に戻って。その頃、僕はおそらく法廷で判決を待っているだろう。
では、ここまでにしよう。もうすぐ夜が明ける。
さようなら、僕の最愛の永愛。
またすぐに会えるといいね。
さようなら。
愛してる。
君を一番愛している、
青嵐より
待っているから。
どんなに長くても。
たとえ一生でも。
1.
9月3日 月曜日 天気:晴れ
今日は初めて日記を書く。前はこんなことしたことなかったから、何を書いていいかちょっとわからない。
でも、これを見せたら彼もこの半年間の私の気持ちや出来事を知ってくれるかな。そう思うと、いいな。
だから、書き続けることにした。彼が残していったこの濃い緑色のノートに、ずっとずっと、彼が帰ってくるまで書き続ける。
書き続けるんだ。
どこから書こうかな。
今日から学校が正式に始まった。
なぜか、今学期は学年が上がっていないのに、クラスがごちゃ混ぜにされた。でもこのクラスには私を知っている人があまりいないから、対応は面倒じゃない。これはいいことかな。
近い将来の小さな願いは、アニメ部の部員が増えること! でも難しいだろうな。
でも確かに彼の言うとおり、生活が元通りになりつつある。
今、この件も本当に終わったんだな。
先週の火曜日、彼に関するニュースを見た。少年裁判所は彼を過剰防護と認定し、少年院で半年教育したら学校に戻ってこれるらしい。
これがここ数日で一番の朗報だった。そうすれば、もうすぐ彼に会えるかもしれない。
AとSの親もわざわざ来て真剣に謝ってくれた。でも、そんなことはもうどうでもいい。
今日、学校でいくつかの木の葉が黄色くなり始めているのを見た。ほとんどの生徒も長袖を着始めた。
これでようやく気づいた。この夏は、本当に終わったんだな。
ここ数年で一番短い夏だったそうだ。テレビでは「全国的な冷夏」のせいで、遅く始まって早く終わったと言っていた。
この夏は、本当に短かった。
でも、私にとって一番楽しい夏だった。
いろんなことがあって、その中には辛いこともたくさんあった。確かにたくさん苦労した。でも、すごく楽しかったよ。
だって青嵐がいてくれたから、ずっと楽しかったからね。
ねえ、青嵐、知ってる? 私は一度もあなたに申し訳ないと思ったことなんてないよ。
この夏、あなたは私のためにたくさんのことをしてくれた。
あなた自身は気づいていないかもしれない。
でも、本当に感謝している。
あなたがそばにいてくれて、私はずっと楽しかった。ずっと。
ねえ、青嵐、知ってる?
あなたがあの日黙って去ってしまったとき、私にはもう一言だけ、言っていない言葉があったんだ。
ありがとう、青嵐。素敵な夏をくれて。
青嵐、ずっと待ってるよ。
たとえ一生かかっても、待っている。
だって、
私も、あなたを愛しているよ。
完。
Hypnot.
2025.5~2025.7.4
-A tribute to カンザキイオリ 「あの夏が飽和する」-
こちらはHypnot.です!
中国人として、初めて日本の小説投稿サイトに自分で書いたライトノベルを投稿するとなると、やっぱりちょっと緊張しますね(笑)。
昔からライトノベルが大好きで、高校生になってから「自分も書いてみようかな?」と思うようになりました。そんなふうに考え始めた高校二年生の夏、この小説を書き始めたんです。
どうかこの、青嵐と永愛、ふたりだけの——あの晩夏にまつわる物語を、どうか皆さんに好きになっていただけますように。
コメント、たくさんをください!




