一話
「ねえ、山ちゃん。」
生徒会室で会長の金澤聡介が後輩に声をかけた。
「なんですか?」
山ちゃんこと後山美咲が返事をした。聡介は口を開いた。
ここは、公立高校である。とある県の田舎とも都会とも言えない絶妙なラインに位置する高校だ。そんな高校の生徒会は一言で言うと頭がおかしい。厳密には生徒会長が頭がおかしいのだ。生徒会員は巻き添えを食らって偏見受けてしまう。頭がおかしいと。
「ねえ、蓮。」
聡介は椅子に座り、机に腕を伸ばしてが親友の水瀬蓮に声をかける。
「なんだ?」
「俺って何で彼女できないの?」
「え、知らん。」
「はあ?真面目に考えろ。」
そういうと聡介はノートをパラパラと開く。年季の入っているコクヨのノートで五、六年は使っているように思える。
「お前ってさ、名前ミスってね?」
「人の名前いじちゃダメってお母さんに言われなかった?」
「俺は先生に言われたぞ。ま、いいや。お前のどこに聡明が入るん?」
「全国模試上位なめんな。」
「まあ確かに頭いいけどお前って聡明って感じじゃないだろ。一般的な秀才とは違うだろ。」
「は?」
「は?」
「せんぱーい!」
教室のドアが思いっきり開けられた。クラスメイトの視線がドアから入ってきた人物に釘付けになる。
「あ、山ちゃんじゃんどったの?」
気怠そうに聡介が言う。
「歩いてる最中に先輩のクラスメイトから五回告白されたんですよ。五回ですよ。取り締まってくれません?」
山ちゃんが笑顔で聡介の机をたたく。
「それではこれから処女と生娘以外禁止しますね。」
「結構です。それよりナンパ禁止令にしてくれません?」
「はいはい。」
聡介は立ち上がる。そのまま廊下へ出ていった。
「待ってください。」
「ごめんごめん。俺いまから可愛い彼女とデートの予定があるんだよね。すぐ暴れるから大変で。逆ナンはその後にしてくれない?」
「先輩のノートに「童貞卒業する!」っていう項目あるの知ってますよ。」
廊下を歩く聡介が固まる。
「くっくっく。全てお見通しってわけか。だがな!我々はそんなことで負けはしない!この封印されし右腕を解ける時、貴様は震えて眠るがいい!さらばだ!」
廊下にいる人々が聡介を凝視する。聡介が歩き出す。
「逃げれとでも?」
山ちゃんが聡介の肩を掴む。
「あ、はーい。」




