表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

清い世界で生きるなら

作者: 霧澄藍

 人は、死んだ瞬間の環境で、次の人生が決まるらしい。

 山登りが大好きだった爺ちゃんがそう言ってた。だから屋久島の生き物は屋久島にいるまま、ずっと神聖であり続けられるんだって。




 じゃあ、“前”の僕は、どんな死に方をしちゃったんだろう。





 気がついたときには学校を飛び出していて。5時間目開始のチャイムを背中で聞きながら、少しでも離れられるように、走って、走って、走っていた。

 一番近い駅で、一番遠くまでいける電車に乗って、はじめてこの学校の立地に感謝した。

 揺られ揺られて、ふと、5時間目はなんだったけと思う。確か、SDGsだかなんかの発表だ。僕が居なくても、滞りなく進むのだろう。それとも、僕を探して騒然としているだろうか。どっちだっていい。どうせ、僕が居なくても困る人はいないのだから。始めから発表の班にはまともに参加させてもらえてないし、先生が連絡しても、家に僕を心配する人は居ない。強いて言うなら犬のペロがいるが、もう今朝別れは告げてきた。今の僕を受け入れてくれる唯一の存在に。

 どのくらいの時間が経っただろう。トンネルを抜けると、海が見えてきた。学校には携帯も、時計も持っていけないから、今の僕には時間を知るすべがない。でも、別にいい。

 僕は今日、ここで死ぬから。

 電車から降りると、想像以上の潮の匂いが鼻を刺した。そんなに田舎に来たわけではない。身近にこんな場所があったのかと、自分の知見の狭さを今になって感じた。だからって、広い世界に出ようとか、そういう思考になれるわけではない。目指していた崖は思ったよりも目の前だった。

 僕は次の人生、もっと綺麗な世界で生きたい。例えるならそう、この碧くて美しい海みたいな。母なる海、美しい海。きっと前の僕はどぶ川みたいなところで死んじゃったんだろう。だから、こんな人生なんだ。

 天然の素晴らしさを噛みしめて、一歩踏み出した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ