覚醒の兆しと鱗の変化
主人公はもう少しお待ちください
着替える前に、ミケのチェックが入った。――恥ずかしい!
「エクス、背中の鱗が増えてるわよ!」
ミケが真剣な顔で言う。
「しかも、スカイ様と同じ鱗になってるわ!」
え!?俺の鱗ってそんなになってるのか!?元は純白だったはずなのに――鏡越しに確認すると、そこには光の当たり方で色が変わる、オーロラのような鱗が広がっていた。
「……なんだこれ?」
見る角度によって、銀、青、紫と美しく輝いている。まるで、父さんの鱗と同じように――
「触ってみてくれない?」
「いいの?」
ミケが少し驚いたように目を瞬かせる。
「ミケなら大丈夫」
そう言うと、ミケがそっと手を伸ばした。ミケの手の温もりが、鱗越しに伝わる。なんだろう、この感覚。他人に触られると気持ち悪いのに、ミケや家族ならむしろ心地いい。ミケが指先でゆっくりと鱗をなぞる。
「前よりすべすべしてるわね。それに……温かい」
その後、着替えを済ませ、ミケに髪をとかしてもらう。……気持ちいいな。髪を優しくとかされる感触に、つい目を閉じてしまう。
「ハイ、終わり。さぁ、戻りましょう」
ミケが軽く手を叩きながら言う。
「そうだな」
少し名残惜しいが、今はそれどころじゃない。心臓のことを聞かなきゃいけない。気を引き締め、俺はミケと一緒に部屋を出た。
――そして、戻ってみると。
めちゃくちゃニヤニヤしてる。兄さんも、姉さんも。なんだ、その顔!?
「……ひどいよ、兄さん、姉さん!」
「いや、それは父さんだろ。俺も封印をすぐに解くとは思わなかったし」
ドラシエル兄さんが、ため息交じりに言う。
「私とゼンは知らなかったしね」
センカも腕を組みながら、じとっと父さんを見つめる。そんな視線をものともせず、父さんはさらりと答えた。
「こういうのは一気にやってしまった方が理解も早いだろ。いちいち説明するのは面倒だし、見た方が早い」
「あなた……そうね。でも」
母さんがふっと微笑みながら、静かに続ける。
「一言ほしかったわ。座布団を守るのに精いっぱいだったわよ」
――そこ!?
「お義父さん、説明をお願いしませんか?」
おおっ、ゼン義兄さん!さすが、俺を見ても冷静……いや、待て。表情が変わってないどころか、口角上がってないか?
「ゼン。貴方も口角が上がってるわよ」
センカ姉さんが指摘すると、ゼン義兄さんが軽く咳払いをした。
「……それは仕方ない。心配からの全裸だ」
やめろおおおお!!そんなこと言うな!!
頼む、フレン兄さん!何とか言ってくれ!
「みんな、少し落ち着こうか。エクスの顔が真っ赤だよ」
もう限界です!!
「エクス、座れ。何か変化があったか?」
クッソ~。みんなして俺をイジり倒したくせに、こういう時だけ真面目な顔になるんだよな……!
俺は渋々座りながら、ミケの方を見る。すると、ミケがスカイ様に向き直り、落ち着いた口調で報告を始めた。
「スカイ様。エクスの背中の鱗に変化がありました」
部屋の空気がピリッと引き締まる。
「鱗の数が増え、色もスカイ様と同じ、オーロラのような輝きを持っていました」
その言葉に、父さんがわずかに目を細める。
ミケ――進めるんだ。
「……なんで?」
俺が思わず聞き返すと、父さんが淡々と答えた。
「また燃えるかもしれんだろ」
「…………ハイ」
俺は無言で上着を脱いだ。もう何も言えねぇ……
俺は静かに上着を脱ぎ、右手を差し出した。魔法とは違う感覚か……?意識を集中すると、胸の奥で何かが燃え上がるような感覚が広がる。これは……これなのか?そう思った瞬間――
右手の中で、眩い白いオーラが膨れ上がった。まるで生きているかのように、ゆっくりと揺らめきながら、俺の手を包み込む。
「……間違いない」
父さんがオーラを見つめ、静かに呟く。
「俺と同じオーラの色だ。しかも、封印してこの量か」
その目がわずかに鋭くなる。
「エクス、感覚はどうだ?」
俺はしばらくオーラを見つめたまま、手のひらを握りしめてみる。
「魔法とあまり変わった感覚はないような気がするけど……」
そして――
「心音が二つ、確かに確認できる」