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武装転送母艦〈ホーム〉

2025/04/15 書き直しました

 すべての武装説明が終わったそのとき、ふと疑問が浮かんだ。


「確認したいんだけど……装備したまま、モードチェンジってできるの?」


 俺の問いに、ジジさんは即答した。


「できないよぉ~!」


 ――えっ!? あまりにあっさり、しかもきっぱりと否定された。


「それって……つまり、武装はモードごとに着脱……?」


「そういうことだよぉ~! でもでも、心配いらないからねぇ~!」


 ジジさんはホロディスプレイを操作しながら、得意げに続けた。


「そのために、カリバーン用とタマモ用、それぞれの専用武装換装ユニットを搭載した母機を用意してあるのさぁ~!」


 ホロに映し出されたのは、戦艦と比べればずっとコンパクトな、輸送機のような形状をした特殊艦だった。右側には武装を収納するための専用格納庫、左側には物資や装備類を積み込む補給エリア。中央には――まるで専用の“鞘”のように、カリバーンが収まる格納スペース。さらに上部には、ブリッジや居住区、トレーニングルームらしき施設も見えた。


 その艦の構造は、一目で“カリバーンとタマモのための拠点”だと理解できる。


「名前はまだないけどねぇ~、これはねぇ~……エクス君とミケ君の“家”ってとこかなぁ~」


 ジジさんがホロを回転させながら、軽い口調で言った。


「時空魔法は使えるんだよねぇ~? だからねぇ、専用の転送機構を使って、モードチェンジのたびに武装を“ぽんっ”と切り替えられるのさぁ~!」


 ホロ映像では、カリバーンが戦闘中に武器を置き、新しい武装を瞬時に転送受領する一連の流れが再現されていた。物理的な付け替えではなく、魔力座標に基づく“空間指定の置き換え”。これが、この艦に組み込まれた最先端システムだった。


「もちろん、ポイっと投げてもちゃんと収納されるけどぉ~……本番でそれはやらないでねぇ~?」


 冗談のように笑うジジさんだが、ホロに浮かぶマウント指定情報は非常に詳細だ。


「大事なのは、事前に“装備の転送位置”を決めておくこと!たとえばスケイルソードは腰の左、スケイルシールドは左腕用マウント。タマモの妖力刀は両腕ホルダー、ナノマシン散布装置と魔力式バスターキャノンは尻尾に取り付け。ビームマシンガンは腰の左右ラックに配置……って具合に、ねぇ~」


 転送システムとマウント指定が連携することで、モードごとの完全な戦術切り替えが可能になる。


「つまりは~、モードチェンジと同時に“武装構成も切り替わる”。これぞまさに! 一機でふたつの戦場に立つってことなんだよぉ~!」


 誇らしげにホロを閉じたジジさんが、ふとこちらを向いた。


「カリバーン、タマモ、そして……この補給艦。名前、どうしようか?」


 そう、まだ名前が決まっていない。この艦も、もう俺たちの一部――いや、戦場に出る“家”みたいなものだ。


「ミケ。なんか、いい名前思いつかない?」


 俺が振ると、ミケは少しだけ考える素振りを見せ、それからジジさんの方へ目を向けた。


「ジジさん。これって――私とエクスの“家”になるのよね?」


「そうだよ~。まさに、ふたりのための拠点だねぇ~!」


 ミケは、狐耳をぴくりと揺らしながら、ゆっくりと微笑んだ。


「なら――『ホーム』でいいわよ。そのまま、ど直球でいきましょう」


 その声には、淡々とした響きの中に、確かな決意がこもっていた。――“帰る場所”を選ぶという、静かだけれど強い意志。


「いいねぇ~! 『ホーム』! 名前が決まると、一気に愛着が湧くよねぇ~! これで宇宙をぐるぐる駆け巡ってねぇ~!」


 ジジさんはいつもの調子でケラケラと笑っていたが、次の言葉があまりにも衝撃的だった。


「ちなみに~、武装は無いからよろしくぅ~♪」


「……はっ!? 武装、ないの!?」


 思わず叫ぶと、ジジさんはまるで当たり前のことのように頷く。


「ないよぉ~。だってぇ~、予算がねぇ~。それに、このホームにはスカイ合金をたっぷり使ってあるから、防御力だけはその辺の戦艦にも引けを取らないよぉ~?」


 確かにそれは凄い。けど、スカイ合金で作られてるからって無防備でいいわけがない。とはいえ、“移動拠点”として割り切るなら、それも一つの在り方なのかもしれない。


(……いや、でもな)


 ふと、あることに気づいて、ジジさんへと問いを投げかけた。


「でもさ、そのスカイ合金の防御性能って、カリバーンと接続した状態の縮退炉と連結してるから出せるんじゃなかったっけ? 一般的な戦艦の動力って、融合炉だったような――」


 ジジさんは待ってましたとばかりに、眼鏡をキラリと光らせてきた。


「問題な~し! このホームにはねぇ~、改良前の“二連魔力式縮退炉”が積んであるんだよぉ~!」


「……えっ、それって」


 背筋に緊張が走った瞬間、ジジさんは楽しげに親指を立てながら続けた。


「そうそう~。エクス君がいるだけで、縮退炉の再始動が可能~! つまりぃ~、君さえいれば燃料いらず! ず~っと回せる! 便利でしょぉ~?」


 全力の満面スマイル。


 だが、内容はとんでもない。


「……頑張ってねぇ~、燃料役!」


「いやいやいや……燃料役って、なんだよ!?」


 突っ込まずにはいられなかった。なにその称号、絶対イヤだ!


 すると、俺の横で小さくため息が漏れる。


「その通りなんだから、いいじゃない。カリバーンもホームも、結局最初の起動にエクスが必要なんでしょ? 造ってもらっておいて、文句は言わないの」


 静かにそう言ったのは、ミケだった。その狐耳は落ち着いたままで、尻尾はふんわりと揺れていた。


 た、確かに何も言えないけども……っ!


 俺は口を開けたまま、無言で閉じるしかなかった。


(……なんか納得したくないけど、言い返せないのが一番悔しい)


 そこに、ふわりと揺れる足音のように――センカ姉さんが滑るように近づいてきた。無重力下、ブーツの磁気が格納庫の床にやさしく張り付いている。


「今、ゼンが機体の準備をしてるから――二人とも、カリバーンに乗って頂戴」


 重力のない空間での柔らかい声が、静かに響く。思わずミケと顔を見合わせると、彼女の狐耳が軽く揺れた。


「ホームには、カリバーンとタマモ、それぞれの武装をすべて搭載しておくわ」


 その一言が、まるで“出撃の号令”のように感じられた。体の奥で、ほんの少し緊張が走る。


「父さん、母さん、ジジ、そして私はホームに乗って発艦しておくから。二人は先に宇宙へ出て、動作確認を兼ねて、自由に動いてみて頂戴」


 センカ姉さんの姿が、無重力の中をゆったりと漂いながら、ホロディスプレイの操作を始める。その所作一つひとつが、凛として美しい。


「確認が終わったら――そのままゼンとの模擬戦に入ってもらうわ」


 ミケの狐耳がぴくりと動き、尻尾が緩やかに揺れた。静かで、それでいてどこか凛とした反応。


 俺も、無重力の浮遊感を全身に受け止めながら、ゆっくりと掌を握る。意識の奥が、ゆっくりと熱を帯びていくのが分かった。


 ――いよいよ、カリバーンとタマモが目を覚ます。


 静寂の中に、確かな鼓動が響いた気がした。

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