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妖力と可愛さの二重奏

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ジジさんは満足げにカリバーン用の武装解説を締めくくると、ぷかぷかと無重力の中を漂いながら、次のコンテナへと俺たちを誘導した。


「さぁて、次は~……お待ちかね、タマモ用の武装だよぉ~!」


コンテナがゆっくりと開かれると、中には艶やかな黒と白の金属が混ざり合うような、洗練された刀身が二本、並んでいた。


「まずはこれ~。妖力刀が二本~。これはねぇ、妖力を流し込むことで刀身の長さが変化する特殊武装だよぉ~。だけどおすすめは短刀サイズ! 振りやすさも、制御の効率も段違いだねぇ~」


「はい。ありがとうございます」


ミケが、無重力の中でくるりと一回転しながら、丁寧にお辞儀をしてみせる。


器用すぎて、ちょっとシュールだ。


「ちなみにねぇ~。刀には魔力刃も展開できるからねぇ~。状況によって妖力と魔力を切り替えながら戦うのもいいと思うよぉ~」


確かにミケには、そういう繊細な操作が合ってる気がする。


ジジさんはくるりと身をひるがえし、次のコンテナへと移動する。そこに入っていたのは――どう見ても尻尾。それも、タマモモードの時とそっくりな銀色の尻尾が、二本。


「……えっ、と。これは?」


ミケがきょとんとしながら尋ねた。狐耳が微妙に揺れている。


「デザインだけだよぉ~。ほら、タマモ形態って可愛いじゃない? だから尻尾も、増やしたらもっと可愛くなるかなって~!」


……ああ、なるほど。


……いや、なるほどじゃねぇよ。


なんでそんなノリで武装をデザインしてんだよ。


(いや待て、それを本気で言ってるのがこの人なんだ……)


ジジさんが「可愛い」とか言ってる姿に、猛烈な違和感しかなかった。


しかもその顔がいつも通りに飄々としてるから、逆にタチが悪い。


「可愛いのはいいですが……これは、何の装備ですか?」


ミケが冷静に問いかける。


表情は一応平静を保っているけど、狐耳がぴくぴく動いていて、内心ちょっと混乱しているのがわかる。


「まず一つは~、ナノマシン散布装置なんだよぉ~」


ジジさんは指をぱちんと鳴らすと、ホロディスプレイに尻尾の内部構造を表示させる。


中には細かいスプレッダーノズルのような機構がびっしりと収まっていた。


「この尻尾からねぇ~、特殊調整されたナノマシンを周囲に散布できるのさぁ~。一応自動増殖するけど、頻繁に使うと生成が追いつかなくなるから、使いどころには注意してねぇ~?」


「……ナノマシンを散布して、どうするんです?」


ミケの目が少し鋭くなる。真剣に技術を理解しようとしている顔だ。


「いい質問だねぇ~。このナノマシンはねぇ~、妖術の発動ができるように、特別に調整されてるんだよぉ~」


ジジさんがホロディスプレイをなぞると、空間に妖力陣がいくつも展開されていく様子が映し出された。


光の軌跡が空中を描き、瞬く間に複雑な術式が形を取っていく。


「まずねぇ~、このナノマシンが空間に拡がると、術式の構築速度が劇的に上がるのさ~


たとえば霧や音の幻術なら、持続時間が伸びるし、魔法みたいに雷や炎を直接“具現化”することもできるんだよぉ~」


ホロでは、雷が空間に浮かぶ陣から迸り、炎が渦を巻いて展開される。


「つまり~、空間そのものに妖術の“下地”を貼るようなもので、


その“場”の支配権を握るってわけさ~」


そこまででも十分とんでもないのに、ジジさんはさらに言葉を重ねる。


「そしてそしてぇ~、このナノマシンはねぇ~、妖力を通して物理的にも成形できるんだよぉ~」


ホロに、細く尖ったナノマシンの束が映し出され、次の瞬間――まるで針のように鋭く射出される。


「たとえば針みたいにして突き刺す“物理攻撃”にもなるし、厚く固めればシールドとしても展開できる!


形も流動的だから、戦場の状況に応じて自在に使い分けられるんだよぉ~」


幻術から雷撃、そして実体化まで――


魔術と物理の間を自在に渡る応用性。まさに“自在変化の術域”。


「いやぁ~、繊細で柔軟な発想があってこそ扱える機能だねぇ~


ほんと、タマモモードにぴったりの武装だよぉ~」


浮かぶ尻尾のパーツが、ふわりと揺れている。


見た目は可愛らしい意匠――しかしその中身には、戦場を制圧するための高度なロジックと設計思想が詰め込まれていた。


「さて~、もう一本の尻尾はねぇ~。魔力式バスターキャノンだよぉ~」


ジジさんがホロディスプレイを操作すると、尻尾ユニットが変形し、長大な砲身がせり出す映像が映し出される。


「遠距離用の重火力武装でねぇ~、魔力を収束・圧縮して一気に解放する方式なんだよぉ~


一撃で戦艦を大破させることも可能だし、短時間なら薙ぎ払うように連続射撃することもできるよぉ~」


映像の中、光の奔流が扇状に走り、空間そのものを焼き払っていく。


その威力に、俺も思わず息をのんだ。


「それはすごいですが……発射の操作はどうするんですか?」


ミケが真面目に問いかけると、ジジさんはにこにこしながら即答する。


「だいじょ~ぶだよぉ~。トリガーは思考連動式!


必要になったら勝手に“出てくる”ようになってるからねぇ~


意識と照準を一致させれば、機体が自動で補正してくれるのさ~」


「なるほど……ありがとうございます」


ミケがこくりと頷く。狐耳が小さく動き、理解のしるしを示していた。


「んで、残りは~……シンプルにビームマシンガンが二丁!」


ジジさんがホロに切り替えると、腰部ユニットからスライド展開される、細身のマシンガンが二本、立体映像で浮かび上がった。


「軽量だけどねぇ~、発射速度はかなり高いよぉ~


中距離の制圧や迎撃にぴったりなんだよぉ~」


ホロ映像の中では、タマモが高速で動きながら両手にマシンガンを構え、正確に弾幕を張っている。


「しかも~、接続して一丁の重型ライフルとしても使える仕様!


状況に応じて使い分けできるんだよぉ~


射線を集中したい時には合体させて“ズドン”ってねぇ~!」


なるほど、牽制だけじゃなく、追撃にも使えるってわけか。


「でねぇ~、もちろん魔力弾モードにも対応済み!


エネルギー粒子の代わりに魔力を収束して撃つから、威力も跳ね上がるのさ~!」


ビームの形状が一瞬だけ変化し、魔力の煌めきを帯びた弾が射出される映像が流れる。


「“可愛くて強い”をねぇ~、ちゃんと両立させてるのさぁ~! ふふふ~!」


ジジさんが胸を張ってそう言いきるその姿は――妙に誇らしげだった。


俺は……もう、何も言わないでおくことにした。


多分、そこに突っ込んだら負けた気がする。

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