伝説の姉との初対面
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空を見上げると、透き通るような青空が広がり、木々の緑が風に揺れていた。そのずっと先には、漆黒の宇宙が広がっている。どこまでも続く空の向こうに、俺の知らない世界がある――。
「冒険者になりたい……」
思わず、そんな言葉が口をついて出た。
「それは良いけど、早く家に帰りましょう。今日は初めて会うんでしょ? エクスのお姉様に」
隣で微笑むのは、俺の専属メイドであり幼馴染のミューケイ・ミロ。彼女の銀色の髪と狐耳が陽に照らされ、ふわりとした尻尾がゆったりと揺れている。
……そうだ、今日は初めて会うんだ。
俺――エクス・ハイ・エルドラの姉。
姉の名前はセンカ・キャリー。俺が生まれるずっと前に冒険者になり、その後、結婚してギルドで活躍しているらしい。でも、俺はまだ一度も会ったことがない。
そもそも、姉が実家に帰ってこなかったのには理由がある。ずっと忙しかったんだろう。でも、長男の国王、ドラシエル兄さんは違った。
『いつまでも帰ってこない! アホかあいつは!』
兄さんが怒鳴る声が王城の奥から響き渡っていたのを、俺は今でも覚えている。
ついにドラシエル兄さんがブチ切れて、姉を呼び出した――。
今日、俺はその姉と初めて顔を合わせる。
どんな人なんだろう……? 強いのかな? 怖いのかな? それとも、優しい人なのか――。
「話でしか聞いたことないけど、すごい人だって話だろ? 写真データを見たときは『美人な姉だな』くらいにしか思ってなかったけど……」
俺は苦笑しながら、腕を組んで考え込む。
強い冒険者。国でも有名なギルドの中でも有数なクランリーダー。異星の怪物を倒し、戦場を駆ける女戦士――。
そんな話を聞かされるたびに、姉ってどんな人なんだろうと想像していた。だけど、俺にとっては存在しないも同然の姉だったから、ピンとこなかったんだ。
でも、今日からは違う。
今日、俺はその「伝説の姉」と直接会う。
……なんだか、緊張してきた。
「私は、エクスの方が心配よ。何か粗相するんじゃないかと思うと……制裁準備を整えておかないと」
ミューケイの狐耳がピクッと動き、尻尾が軽く跳ねる。
「いや、なんでだよ! ミケ!」
俺は慌ててツッコミを入れるが、ミューケイは呆れたようにため息をついた。尻尾がゆっくりと左右に揺れ、どこか冷めた視線を向けてくる。
「当然でしょ! 学校を卒業したのに、いつまでたっても子供なんだから!」
「いや、子供だが?」
一応俺もミケも高校は卒業してるんだが、どうしても種族的にはまだ子供の部類だ。
身長だって百二十センチに届くか届かないかだし、精神的にも子供だぜ? 仕方ないじゃん、ハイ・エルフなんだから。
「子供でも、もう高校生は終わってるの!」
「でも、ハイ・エルフの成人は千五百歳だよ? ってことは、ミケもまだ子供じゃん!」
そう言って、ニヤリと笑いながらミューケイを見た。
「大人ならこう、胸が出て、あがっ――!!!」
言いかけた瞬間、視界の端にミューケイの足が見えた。
次の瞬間――
俺の頭にハイキックが炸裂した。
「いったぁぁぁぁ!!!」
「あんた、デリカシーってものがないの!?」
ミューケイの狐耳がピクピクと震え、怒りの感情がはっきりと伝わってくる。
俺は悶絶しながらも、何とか立ち上がり、反撃の一言を絞り出した。
「……子供パンツの癖に」
瞬間、ミューケイの狐耳がピンと立ち、ピクリと揺れた。
――やばい、今のは完全にアウトだった。
ミューケイの尻尾がふわりと膨らんだかと思うと、先端がビクンッと痙攣し、そのまま左右に大きく揺れ始める。
俺の本能が警鐘を鳴らした。
このままでは死ぬ。
すぐに俺は、次の制裁が来る前に逃げるべきと判断した。
ハイキックを防ごうと両手で顔をガード――したつもりだった。
しかし、ミューケイの尻尾がゆっくりと揺れ――次の瞬間、彼女の身体がスッと沈んだ。
その動きはまるで、獲物を狩る直前の獣。
彼女の狐耳がピクリと動き、目が鋭く細められる。
「は?」
次の瞬間、拳が突き出された。
ゴッ!!
「ぶげぇっ!!」
鳩尾に強烈な拳の一撃が突き刺さる。俺の身体が一瞬でくの字に折れ、呼吸が完全に止まった。
酸素が、ない。声が、出ない。
「うるさい! バカ! 変態! おたんこなす!!」
その間も、ミューケイの尻尾はしなやかに揺れ、次の攻撃を今にも放たんとしていた。
もうやめてくれ……これ以上は……!
俺は膝から崩れ落ち、意識が遠のく中、最後のトドメが見えた。
ミューケイの尻尾が、怒りを表すようにブンッと大きく振られる。
そして――
彼女が軽やかに回転すると、しなやかな尻尾が空を裂くように振り抜かれた。
バチィィィンッ!!!
衝撃が脳天まで響き、視界が一瞬で真っ白になる。
次の瞬間、俺の意識は闇の彼方へと飛んでいった。
2025/02/22
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