3層 スキルと魔法と
俺の天性スキルに、【忠魔創造】というものがある。これはその名の通り、自分に忠実な魔物を創り出すことができるスキルなのだが、ひとつだけ欠点があった。それは、自分が直接殺した魔物しかカタログに掲載されないという事である。
スキルの使い方はつい先ほど焼きついたばかりなので、パッと発動してみたのだが、目の前に白黒表示の魔物が羅列されたのウィンドウが表示されて軽く絶望した。そのイメージ一つひとつに『この魔物はまだ撃破していません』と書かれていたからだ。
俺はそこで一旦気を持ち直して、今度はオリジナルのウィンドウを開いたのだが、圧倒的にEPが足りずこちらも諦めた。
ボーナスかなんかは知らないが、申し訳程度に1,000EP程がEP貯蓄のスキルに溜まっていたのだが、オリジナルの魔物は最低でも20,000EPが必要だった。うん、そんなもん、ない。
そんなわけで、俺は取り敢えず、魔物を作る前にダンジョンを拡張することにした。軽く確かめた感じ、俺が目覚めたこのワンルームよりも少し大きいかなという部屋と、数十メートルほどの細い道だけの超シンプルダンジョンだった。こんなほぼ洞窟みたいなダンジョンじゃすぐに攻略されてしまうのは目に見えているので、なけなしの1,000EPで、もう少し奥の方にひろげよう。
広げること自体は、そこまでEP消費はなく、50メートルほどの通路を作っても17EPで済んだ。ついでにと、その通路の奥に部屋を作ってみた。広さとしては、俺が目覚めたところよりも少し広めだ。壁と床、天井は木で作ってみたからか、少し嵩んでしまったが、それでも36EPなので、問題はない。
「しかし、こんなウィンドウひとつで洞窟の奥にポンと部屋ができるとはなぁ」
【魔窟創造】のスキルも、【忠魔創造】のスキルと同様、半透明の画面が表示され、そこにダンジョンの全体像が映し出される。感覚的には、本当にシミュレーションゲームとおんなじ容量で操作が可能なスキルだった。
慣れたものに似通った操作でできるんだから、異世界のダンジョン初心者の俺でもさらっと拡張なんかができたのだ。
「よし、じゃあ、この部屋の快適性でもあげるか。万物創造とやらも試してみたいし」
万物創造は魔法に分類されていたので、消費するのはEPではなく魔力となっている。自分の魔力がどれほどあるかは知らないが、大きさによって消費量が変わるみたいなので、まずは前世愛用していたマグカップから。
「万物創造!」
魔法の使い方は、作り出したいものを強くイメージしながら、詠唱するだけ。イメージが欠けていれば唱えても何も起きないし、逆に、イメージできていたとしても詠唱しなければ生み出すことはできない。ちなみに、詠唱は、厨二心満載なものではなくただ『万物創造』と唱えるだけでいい親切設計である。
と、そうこうしているうちに、空中に光が集まって、マグカップが形作られていく。その過程で、何やら温かいものが俺の中から抜けていっているが…これが魔力か。ただ、全く減った気がしないが。
バリンッ!
俺の足元で、何かが砕ける音がした。目線を落とすと、作り出したばかりのマグカップが粉々に砕け散っていた。
空中に何もなしに作り出したらそりゃそうなるわな…先に机つくろ。
俺はその後、ソファーやらベッドやら、俺が快適に過ごすための家具一式を作り出した。キッチンは魔力をガスの代わりに用いるコンロを作り出してみた。便利なもので、魔力はどうやら色々なエネルギーに変換できるらしかった。熱エネルギー然り、光にも転用ができた。
俺はそこで改めて、異世界を感じたのだった。
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