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17層 あっち側

久しぶりの投稿です

待っていた方がいたらお待たせしました。

「なんで…こいつらが……くっ!」

「…まぁ…薄々そうだろうとは思ったが…こりゃあ……」


 ミソラが始末した冒険者の遺体を、魔窟と街の間くらいに棄て、コソコソと気配を消して、探しにきた連中から情報を盗んでいた。危機探知能力が欠如してる奴らだ。楽なもんである。


「自己責任とはいえ…見ろよ、これ。ひでえぜ」


 指し示された遺体は、臍あたりから下が消えていた。でろんと、はらわたが地面に飛び出している。


「まあ、しゃあねえ。魔族がいるって忠告聞かずに森入ったこいつらの責任だ。可哀想だとは思うが、俺らにゃどうしようもできねえよ」

「だな。よし、燃やすぞ」

「ああ」


 どうも、冒険の途中や狩で死んだ冒険者たちは、その場で燃やされるらしい。燃やす前に何かしたいから剥いでいたから、それが身分証のような役割を果たすものなのだろう。ドッグタグ的な?

 その後、完全に燃え切ったのを確認して、冒険者のおっさんどもは街へ帰っていった。


「まぁ…位置報告は免れたか…当初の予定とは違うけど…いいかな」


 なるべく音を立てないよう、俺は腰をそっと上げる。結構な間しゃがみ込んでいたからか、ポキポキと骨が音を立てた。

 やはり、この森に俺が住み着いていることは、街では共有されているらしい。人類の大敵らしいからな、魔族は。自分たちが生きるために必死なんだろう。


「それはともかくとして、まいったよなぁ…街に行けないとなると、結構不便が出てくるんじゃないか?」


 ぽりぽりと、頭を掻く。実際、街に行けないことで発生する不便はそこまで多くはないだろうが、確実に発生するだろう。特に情報面において。

 ただでさえ入手元が限られるというのに、そこに行く頻度まで減らされると、元が少ない上に一つひとつがかなり重要であろう情報がいくつも漏れてしまうことになる。

 最悪、ミソラを使うか…?いや、それはダメだ。わざわざミソラに危険な目に合わせる必要はない。


「んぁー、どうすんべ、これ」


 そうこうしているうちに、俺は魔窟の前に辿り着いていた。

 まだ日は高く、木々も柔い風に靡いて気持ちのいい葉擦れを鳴らしている。


「…どうにかなるか。あ゛ぁ゛ーっ!つかれたあああああ!」


 俺は力の限りにそう叫び、走って魔窟の闇に突っ走った。

 魔窟の最奥、その一室で、ミソラは静かに寝息を立てていた。あれだけのことをやってのけたんだ。疲れていて当然だ。俺はそっと、ミソラの頬を撫でる。


「お父さん…んへへ」


 小さく、寝言をつぶやいた。もぞりと寝返りをうち、気持ちよさそうに口元をゆがめた。こんな日々が、続けばいいのに…まあ、むりだろうな。




◇◇◇




 アリーシャ・ベルトナグル。エルシェーン王国に代々続く由緒正しき、武で鳴らした伯爵家ベルトナグル家の長女である。そして、エルシェーン王国の王太子、メルベインの婚約者でもあった。

 それはともかくとして、彼女は、王国随一の実力者である。携える片手剣からくり出される実戦向けの剣術は、シンプルながらどんなに華美なそれよりも人を引きつける魅力がある。また、細腕から繰り出されるとは到底思えないほど素早い斬撃は、いともたやすく鋼鉄を切り裂く。

 戦で挙げた功績は数知れないが、その中でも特に、はぐれ魔族を討伐したのが最も大きいだろう。下手すれば、国が滅ぶほど強力だったという。それは間接的に『彼女一人で国を滅ぼせる』と言うことなのだが、この国の王族は王太子の婚約者に祭り上げることで国に縛り付けられていると、本当にそう信じていた。


「お嬢様」

「む?なんだ?」

「お嬢様宛に王都から書簡が届いております」


 彼女は素振りを止め、手ぬぐいで汗を拭き、使用人に近づく。すっと差し出された書簡には、王家を示す鑞封が押されていた。内心で、鬱陶しがりつつも、彼女は封を切り、中身を取り出して視線を走らせる。


「ふむ…鍛錬にはちょうどいい…か?」


 彼女は意味も無く持っていた木剣をくるくると回しはじめた。苛立ちを感じたときに出る仕草だ。


「王太子がひっついてくるのか…はぁ…戦いながら彼奴のお守りなんて私はできんぞ。仮にも魔族・・が敵であるというのに、王太子が死ぬ可能性については考えなかったのか?」


 彼女は武人である前に貴族令嬢だ。国家の危機に対しては特に敏感に反応する。それが当たり前であったし、貴族である以上絶対的に優先すべき事柄であるからだった。

 そんな貴族以上に気を回さなければいけないはずの王家がこの体たらくをさらしている。苛立つのも無理ないことだといえた。


「まあ、仕方ない」


 彼女は、眼前にあった岩をたたき割った。

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