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13層 降誕祭②

久しぶりの投稿です。

物語が本格的に動きますよぉ

 男の玉を蹴った次の日。俺とミソラは、始まった降誕祭を思う存分楽しんでいた。街の賑わいは、ここへ来た時から比べて極めて大きくなり、人通りも明らかに多くなっている。先日は閉まっていた屋台も営業を始めており、それも人が増えた要因の一つだろう。

 国の始祖の誕生祭だ。盛り上がらない方がおかしい。


「美味しい!これ!お父さんもどーぞ!」

「お!ありがと~!」


 ミソラが、手に持っていたオークの串焼き(塩)を手渡してきた。肉汁が表面にあふれ、見るからに旨そうだ。焼きたてで、立ち上る湯気に乗って香ばしい肉の匂いが漂ってくるのも非常に食欲をかき立ててくる。

 俺はその串を受け取って、一口、口へと放り込んだ。途端、肉の旨みが口いっぱいに広がり、鼻腔を香ばしい香りが突き抜けていく。それはまさに、至極だった。


「たしかに、これ、美味いな…」

「でしょ!」


 ミソラの美味いモノセンサーには狂いなどは無いらしい。いいね。今後ともよろしくお願いします。


 その後、街の中を一通り見て回り、めぼしい料理をたらふく堪能した後、俺とミソラは街の広場の中心に位置する噴水の縁に腰掛けてのんびりしていた。周りは相変わらず騒がしいままだが、そんな喧騒もここの付近は幾分かましになっている。

 今の気温はかなり高く、かなり汗ばんでしまう事もあってか、涼をとれるこの噴水近辺には、熱中症目前と言った風体の人たちがかなりの数集まっていた。こんな中でも噴水から噴き出す水は冷たく、気持ちがいいのだ。


「お父さん…そろそろかえろー」


 ミソラも、暑さにやられたらしく、俺の膝に頭を乗せて、ぐでぇ、となっている。


「まぁ…そうだな。降誕祭楽しめたか?」


 帰るのは良い。それは良いが、ミソラはしっかりとこのお祭りを楽しめただろうか。俺は結構楽しかった。


「うん!まんぞく!」


 満面の笑みでそう言い切るミソラ。子供の笑顔は何でこんなにもかわいらしく思えてしまうのだろうか。誓って言うが、俺は別にロリコンじゃない。

 目一杯祭りも堪能して、これといった用事も無くなったので、魔窟(ダンジョン)に帰ろうと立ち上がったそのときだった。俺とミソラの後方から、一筋の光線が迫ってきたのだ。

 俺は咄嗟にミソラを庇い、横っ飛びをする。光線はギリギリの所で俺たちに掠ったが、直撃は避けることが出来た。

 俺はすぐに体勢を立て直し、ミソラを俺の後ろに下がらせた。そして、光線が飛んできた方をじっと見つめる。

 嫌な汗が、ぽたりと垂れた。


「なぜ魔族が街の中にいるのですか?」


 鈴の音のような声が静寂を破った。その後すぐに人混みの合間を縫って、絢爛な法衣に身を包んだ女が、姿を見せた。


「聖女…様だ」


 そんなつぶやき声が、やけに大きく響いた。


「もう一度問います。なぜ魔族が街中にいるのですか?」


 やべえええええええっ!

 俺の内心はもう心臓バックバク。あんな光線を不意打ちでぶっ放してくるようなやつがまともであるはずもなし。下手を打てば死ねると本能で悟ってしまった。


「…観光」


 ここは本音アタックに限る。正直、彼女の口ぶりからして、魔族さんは人間さんの不倶戴天の敵であることは確実だ。


「観…光……?偵察ですか?」


 そうなることはだいたい予想できてはいたが、やはり話は通じないらしい。そういえばミソラの話にもあったが、魔族は人を襲うしなぁ。

 ていうか、あれか。ミソラの村が襲われたからこの聖女がこの街に来たのか。そう考えれば時期的にも納得がいく。

 …聖女とかいう大それた肩書きの女が、わざわざ出向いているという事実は考慮に含まないものとする。


「何はともあれ、魔族は滅します…あら?」


 ふと聖女は、俺の後ろに目を向けて、言葉を止めた。


「女の子…っ!まさか、貴様っ!その子を誘拐しようというのですか!」

「?」

「そうはさせません!貴様のような邪悪は今ここで滅ぼします!」


 聖女、突然のヒートアップ。金色のオーラをこれでもかというほど放出し始めた。でも、やはり、何か少し迫力に欠ける気がする。

 気を抜けば死ぬのは変わらないが、それでも、たまに手合わせするノワに対して感じる危機感に比べれば、そこまで怖いとは思えないのだ。


「…お父さん……大丈夫だよね?」

「あぁ…多分」

「死になさい!滅魔祝福の慈雨(ブレスレイン)


 その直後、四方八方から、眩い光線が俺に向けて降り注いだ。

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