12層 ならず者どものやらかし
久しぶりの投稿!
前世での趣味として、俺には旅行があった。そしてそれは今でも変わらずに好きのまま。
俺とミソラは、レヴァテンの街中をゆったりと散歩していた。今日初めてここに来たときに見かけた露店が営業を始めており、日のある内よりも賑やかな様子である。その分鼻をつく肉の匂いも強くなっているようで、ミソラのお腹が小さく、くぅ、となった。
「飯、食うか」
「うんっ!おなかすいた!」
花が開いたような笑みを浮かべ、ミソラがぴょんぴょんと跳ねてはしゃぐ。その姿を見てほっこりしながら、俺とミソラは露店にならんだ。
「おう、ケバブふたつだなっ!」
露店おっちゃんが元気いっぱいにそう言った。そして、くるくる回る香ばしい肉塊から、一部を切り取り、串へと刺していく。そして、その串を、露店の下に下げて、次に目の前に出てきたときには、とてもおいしそうな匂いを放つタレをまとっていた。
世間一般で言うところの、『秘伝のタレ』と言うやつだろう。
「ありがとな、おっちゃん。あ、タレ以外にも味とかってある?」
俺は、おっちゃんに代金を支払いつつ、そんなことを聞いた。
「おう、あるぜ。塩とハーブだ」
塩は言わずもがな、ハーブは俗に言うハーブソルトのことらしい。せっかくなので、その両方もいただくことにした。
「お父さん、お塩もハーブも美味しいよ!」
買ったケバブを両手でパタパタさせながら、ミソラが大喜びで俺にそう報告をする。俺もタレを食べきった後、塩とハーブを一口ずつパクリ。うん、確かに美味しい。塩は素材本来の味が活きてるし、ハーブも塩とは違う風味があってとても楽しめる。
「あのお店はあたりだったな」
「そうだね」
そう言って俺とミソラは、次の店に目標を定めた…そのときだった。
「え?きゃっ!」
ミソラの悲鳴が、上がった。咄嗟に横を振り返るがそこにミソラはおらず、少し離れたところで、屈強な男がミソラを抱え、その仲間とおぼしき男が、こちらを下卑た目つきで見つめていた。瞬間、俺の中で堪えがたい何かが湧き上がるのを感じた。
「おい、兄ちゃん、この子を返して欲しいんなら、金を寄越しな!」
ミソラを抱えていない方の男が、そんなことを口に出した。どうやら、俺は今ミソラを人質に、金を要求されているらしい。
…単なる事実確認にしかならなかったが、それでも落ち着きを取り戻すための手段としては十分だった。幾分かは冷静になれた。
…人間、こんな奴らばっかりなのかなぁ…
「おいっ!どうした!聞こえてんのかぁ!?」
周りの目も出てきて、ちょっと目立ってきた。けど、あぁ、気にならないな。
「その汚い手でミソラに触んなや」
俺は、ミソラを瞬間的に取り返し、ミソラを捕まえていた男の顔面を殴り飛ばした。そこまでする必要性をあまり感じなかったが、殺しはしていない。ミソラと一緒にこの街で食べ歩きが出来なくなるのがつらい、それぐらいが理由としての関の山だろうか。
まあ、なんだっていい。こいつらは、やってはいけないことをしたのだ。強請るために、俺の娘を人質に取るということを。
「人様に手を出すなら、やり替えされる覚悟は、必要だよねぇ?」
俺は、もう一人の男の側まで移動し、金的を蹴り上げる。俺の動きに対応できなかった男は、この世のモノとは思えない痛みにさいなまれながら、意識を手放した。
糸が切れたように倒れ込んだ男の顔は、悪魔に力を借りて悪魔と戦う漫画に出てきたヤクザの若頭みたいに歪んで、びっしりと脂汗をかいていたのだった。
「よし。いこっか、ミソラ」
「…うん!」
ミソラがちょっと引いていた。
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