10層 降誕祭①
調子に乗ってダンジョンを拡張しすぎた、ショウゴです。前に行ったかと思うが、気がノってしまったおれは、超鬼畜トラップてんこ盛りダンジョンを作ってしまった。具体的には、全ての罠が即死罠かつ地下5層の構造で、正確にはわからないものの、総面積が多分東京23区と同じくらいとだけいっておく。
いやー、やりすぎたね、まじで。1層目は分岐だけだが、2層から5層が、エグい迷路だ。前世で見た巨大迷路を参考にしたが、終わりみたいな雰囲気だ。
ちなみに、魔物は徘徊させていない。ダンジョンを拡張するのに比べると、【忠魔創造】は圧倒的にコスパが悪いからだ。
「それに、この作りだと確実に魔物いらんしな」
罠だけで済むなら、魔物は作るだけ無駄という感覚があるのも、魔物を創っていない一因である。
「あ、お父さん終わった?」
「終わったぞ。悪いな、待たせて」
「いいよ。それがお父さんの仕事なんでしょ?」
そういってにっこりと微笑むミソラ。思わず心がほっこりした。無垢な子供の笑顔って癒されるねぇ。
「あ、そうだ、お父さん、お願いがあるんだけど…」
「なんだ?ミソラの頼みならなんでも叶えるよ」
俺がだらしなく顔をふやけさせているところで、何かを思い出したかのようにミソラがそう言った。無論ミソラのお願いを俺が断るわけはない。
「えっとね、私が森に逃げてくる時よりちょっと前に聞いたんだけど、その時から2月くらいで『降誕祭』が開かれるんだって。今まで行ったことないから、行ってみたいんだけど…ダメかな?」
なわけ。んなわけあるかい。祭りなんて楽しいイベントに参加させないとか、そんなのがいたら飛んだ毒親だよ(主観)。
「全然いいよ。なぁ、それ、お父さんも行っていいか?」
「お父さんも来るのっ!?嬉しい!あっ…でも、お父さん魔族だし……」
弾けた笑顔から一転して、凄く寂しそうな顔でこちらを見つめてくるミソラ。娘にこんな顔させるとか、父親失格だよ…
「だ、大丈夫だ、ミソラ…お父さんほどにもなれば、人間に化けることなんて朝飯前だ…!」
「本当?無理してない?」
ミソラの優しさ…心配そうな顔がぐさっと俺の心に刺さった。もう、行かないなんて選択肢はないわけだ。…初めから行かないつもりはなかったが、ここに来てその選択肢も潰えた。
その日のうちに粗方の準備を済ませ、俺は降誕祭がミソラから降誕祭のことについて、聞いた。
降誕祭は、このダンジョンが存在する国の初代勇者王の誕生祭らしく、降誕祭の時期になると、国中の街で『勇閃教』の指揮のもと祭典が執り行われたのち、飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎが三日三晩続く、そんな祭りらしい。
よくそんなこと知ってたなとミソラを褒めると、『納屋の中だったとしても、10年以上毎年聞かされてたら、ね』と返された。なんと返せばいいかわからず、困惑。ともあれ、祭典から後はまあ、控えめに言って楽しそうだ。
それに、街に、ダンジョンの外での活動拠点を作っておきたい。まぁ、これ自体は結構前から結構前から練っていた案なのだが。魔窟創造を駆使すれば、ハ◯ルの城みたいにできるかもしれないし。
「ま、悪いけど、ノワは留守番かな…」
「!!!???」
雷バッチバチの黒い狐連れてって問題にならないわけがない。ここは涙を飲んでお留守番を頼む。
「もちろん、お土産は買ってくるからな」
「くぅー…」
それでもなお不機嫌そうではあったが、お土産は絶対買って帰るという約束の下、お留守番してくれることになった。
「よし、準備できたな」
「うん!」
「じゃあ、行くか!」
満を持して、俺とミソラはダンジョンの外へと飛び出した。
◇◇◇
勢いよく飛び出したはいいものの、街の方角がわからない。ミソラも、長い納屋生活のせいで、街の方角など知らないといった。
俺はミソラが知っているという前提で行動していたことを反省する。結構降誕祭について知っていたから、街もてっきり知っていると思っていた。
「…飛んで見るか」
最終手段『俺が飛び上がって周りを確認する作戦』を決行するか…できるかは分からんが、魔族フィジカルに物を言わせてやれば多分できる。ここまでこの世界で生きてきて分かったことだが、この体の身体能力ははっきり言ってバケモンなのだ。
膂力も敏捷性も桁が違うし、おまけに自然治癒に関して言っても、切り傷程度なら、すぐに塞がってしまう。この調子だと、骨折も数日あったら完全に治るだろう。と、こんな感じだ。
「?お父さん、何してるの?」
俺がしゃがんだことに疑問を持ったのか、ミソラが首をかしげながらそう聞いてくる。
「ちょっと上から見るだけだよ」
「?」
まだ完全に疑問が消えきっていないミソラをよそに、俺は膝を一気に伸ばして飛び上がる。森の木々を軽々超え、俺は雲の下すれすれにまで跳躍した。それに合わせて、俺はぐるりとあたりを見渡す。すると、方角は分からないが、明らかに自然物ではないものが目に入った。四角く象られているのを見るに、あそこが街なのは間違いないか。
「てか、よく見りゃ壁に囲われてない村は結構あるんんだな」
その中に、何個か廃墟と化しているのがあった。どれかがミソラのいた村なのだろう。
「あ、おちはじめた」
魔法で飛行しているわけではないので、当然落下する。
まあ、街の方角は把握できたし、後はそこにいくだけだ。着地した後、俺はミソラに街を見つけたことを伝える。
「じゃあ、行こっか」
「うん!」
俺はミソラを抱え上げ、街の見えた方に進み始めた。
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