9層 広がるダンジョンとダンジョン権限
本日2層目!
今日も今日とて、俺とノワは、ダンジョンから繰り出して魔物を狩っていた。もちろん、EPを蓄えるためである。魔法でものは作れても、ダンジョンの拡張や魔物を作ったりするのは、どうしてもEPが必要になってくる。なので、ここ最近は、狩りを繰り返していた。
ちなみに、ミソラはお留守番だ。あの子はまだまだ弱い。いずれは強くなってもらうつもりではいるが、それは今じゃない。今は、もっと愛情を注いで育てる段階である。…多分。
まあ、そんなことは置いておいて、休み無く魔物を毎日狩り続けた結果、エグい量のEPが手に入った。あと、知らない間に、EP貯蓄のスキルのレベルもカンストしたらしく、貯蓄量が無限になっていたりする。
「GYAAAAA……」
俗に言う赤鬼みたいな見た目をした魔物、オーガの首を落とし、俺は作り出した刀を鞘に収める。
「コンッ!」
ノワの鳴き声が聞こえた後、ドサッと俺の目の前に何かが投げ込まれた。見ると、腕が六本ある熊のような魔物で、その名をタイラントベアが無惨に倒れ伏していた。体中の毛は焼け焦げており、かすかに煙が上がっている。
「やっぱノワ強いわ…」
そうつぶやくと同時、ノワがタイラントベアの上に着地し、どやぁという雰囲気で座り込む。
「はいはい、よく出来ました」
これはなでてアピールなので、俺はわしゃわしゃとノワの頬を両手ではさんでなでる。ノワは気持ちよさそうに喉をゴロゴロと鳴らせた。
…そういえば、狐って、猫か犬かどっちの仲間に分類されるのだろうか。
「ま、さすがに今日はこれで打ち止めかな」
そんなどうでもいいことを頭から追い出し、俺は死体を処理して、ダンジョンへと戻った。
ダンジョンの中の部屋では、ミソラがせっせと掃除をしていた。最初の頃はなれていなかった文明の利器も今では使いこなしている。
「あ、お父さん、お帰り!」
「ただいま、ミソラ」
俺が部屋に入ると、ミソラが掃除を切りやめて俺の方に駆けてきて、ぎゅっと抱きついてくる。ああ、これが帰ってきて娘に迎えられる父親の気持ちか…いいな。
さて、親子のふれあいもそこそこに、俺とノワは、ミソラと一緒にダイニングに戻った。ミソラの掃除の腕は一級品で、すでに埃の一つも落ちていない。けれども、ミソラ自身は納得していないらしく、まだまだ掃除する気満々だった。
「ほどほどにな」
「うんっ!」
少し軽食をとってから、ミソラはまた掃除に戻って、俺はダンジョンの拡張をしようと、スキルをウィンドウで表示したが…何やら見慣れないものが出来ていた。
「【権限付与】?んだこれ?」
俺のステータスに、見慣れない4文字が追加されていた。
名前から推察するに、何かしらの力を分け与えるものなのだろうが…権限か。
不思議に思いつつ、俺はその表示に触れた。例によって、画面が切り替わり、そのスキルの説明と操作画面が現れる。
「ダンジョンの管理権を任意の相手に段階的に分け与えられるのか…」
要は、ある程度自由に物事を決められる役員を任命するような感じか。
「…ものは試しだ」
どういう判断基準なのか分からないが、現段階で付与が可能なのが、ミソラだけなので、とりあえず【管理者権限①】を付けてみた。
「ふぇっ!」
掃除をしているミソラから、変な声が上がる。
「お、おと、おとおと、お父さん!私に何かした!?」
辿々しい言葉で、俺に詰め寄ってくるミソラ。どうやら付与したら不思議な感覚に襲われるらしく、もじもじと体を捩っている。
「えっとな、このダンジョンの管理者権限ってやつをミソラに付けてみたんだ。書いてある通りだと、【魔窟改変】と【忠魔召喚】ってのが使えるようになってると思うんだけど、そこんとこどんな感じ?」
「え、えぇっと…使い方わかんないです」
しゅんとした様子で答えるミソラに、俺はごめんと謝りつつ、使い方を教える。教えるのは、ウィンドウの出し方とその操作方法だ。
「あ、使える!忠魔召喚は、ノワちゃんだけみたい…」
まあ、どの能力も、大元で俺が持つ物の下位互換のようなものだ。魔窟改変も、俺が作ったダンジョンしかいじれないし、忠魔召喚も、【忠魔創造】で前もって作っていた魔物しか呼び出せない。それでも、能力の質としては極めて高いが。
だって、魔窟改変は置いておいて、忠魔召喚は、リスクなしで強力な戦力を呼び出せるから。わかりやすく言えば、召喚に必要なコストはなく、召喚した魔物が死んでも召喚前にいた場所で蘇るとか。
他にも条件なんかはある物の、それが全部吹き飛ぶくらい強力だ。
「わぁ…なんだか、お父さんが私の中にいると思うと凄くうれしぃ…」
「……」
なんか割と危ない目な思考を展開するミソラは放っておくことにして、俺はダンジョンな拡張をするとしよう。
前にミソラを寝かせるための寝室を作ってから久しく拡張していなかったので、まずは軽くウォームアップで、ダンジョンの最奥の部屋の前を拡張して、罠なんかを盛り込んでいこうと思う。
今は、洞窟に入って少し歩けば俺達の居室に繋がるため、防御面が心許ないからだ。まあ、ちょっとやそっとじゃ微動だにしないノワがいるから大丈夫かも知れんが、気持ち的には不安なのである。
「ま、とりあえず何回か分岐してる道でいいかな」
即席で迷路を作るのもめんどいしね。俺は、12回分岐がある道を作り、そして、分岐のハズレの方に即死トラップを仕掛けた。かなり凶悪で、発動した瞬間に四方から矢の雨&退路を塞ぐ転がる大岩5連チャン。生かして返す気など毛頭ない。
「あ、あと、ダンジョン勢限定のワープゲートも作っとこ~」
その後も、拡張作業が続いた。前世やっていたシミュレーションゲームのようだったことが原因か、すっかり楽しくなってしまった俺が拡張を終えたのは、始めてから大体10時間後だった。
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