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93.食堂での騒ぎ

 食堂は、昼にはまだまだ早い時間にも拘わらず、多くの生徒がいた。この魔法学院では、生徒がくつろぐところが、食堂と自分の部屋だけになっているようだ。そのため、多くの生徒が食堂に集まっている。まあ、無料のドリンクやクッキーも食べ放題なので、集まるよね。


 「テラ、ここ空いているよ。」


 「レイカ、ありがとう。」


 「さあ、食べようか。スピアも食べてね。」


 皆で、食べ始めると、食堂の入り口が騒がしくなってきた。どこかのオジサンが叫んでいるようだ。


 「誰かな?騒いでるよ。」


 「本当ね。でも、テラって言ってない?」


 「ここにオジサンの知り合いは、居ないよ。」

 

 「そうかな。確かに聞こえたんだけど。」


 いつの間にか、そのオジサンは、私達の所にやってきていた。私は、スープに夢中で、きが着かなかった。


 「テラ、やっと、見つけた。」


 振り返ると、オーガネッチが立っていた。


 「あっ、オーガネッチさん。何か、用ですか?」


 「何度も、連絡を取ろうと思っていたんだが、全く捕まらなかった。」


 「何故、私を捕まえるの?」


 「今日が、何の日か覚えているか?」


 「今日は、私の初めての魔法の授業の日です。」


 「テラ、何故、授業に出るのだ。」


 「なぜって、私は、この魔法学院の生徒ですよ。生徒が授業に出るのは当たり前でしょ。」


 「そんなことより、今日は、マテーダ王女と夕食を取る日だ。それで、場所を連絡するために、此処に来たのだ。」


 「夕食ですか。私は、どこでもいいですよ。」


 「テラ、そんな希望を聞きに来たのでは、ないのだよ。場所は、もう、決まっている。一流の店を貸し切りにしている。」


 「はい。分かりました。それで、場所は、どこですか?」


 「それは、言えぬ。マテーダ王女の安全が優先されるからな。」


 「では、私は、どうしたらいいのですか?」


 「テラは、この魔法学院の部屋で待っていてくれ。迎えを寄越すから。」


 「はい、分かりました。」


 「本当に、待っていてくれよ。お願いだから。」


 「はい、大丈夫です。」


 「それじゃ、夕方に。失礼した。」


 マテーダ王女に会う日だった。忘れていた。


 「テラ、マテーダ王女って、知り合い?」


 レイカが聞いてきた。先ほどの話を聞かれていたようだ。


 「マテーダ王女って、知らないよ。」


 「テラ、何故、嘘をつくのよ。私、友達でしょ。」


 「そうだよ。レイカは、私の可愛い友達だよ。」


 「だったら、本当の事を教えてよ。」


 「本当の事って、今日初めて会うんだよ。さっき、来た人がマテーダ王女に会えって、うるさいんだ。」


 「そうなの。マテーダ王女に会いたいのじゃないのね。」


 「本当だよ。私は、レイカと一緒に夕食も食べたいよ。」


 「本当。嬉しい。でも、マテーダ王女の誘いでは、断れないね。」


 「ごめんね。残念だけど、行って来るよ。レイカとは、その後でも会えるね。」


 「そうね。ここは、全寮制だものね。そうだ。夕食後、私の部屋に来てよ。」


 「でも、レイカは、相部屋じゃないの?」


 「いいえ、部屋が空いているから、成績上位10位までの生徒は、一人部屋になったのよ。だから、私の部屋は、私一人よ。」


 「そうか。それなら、気兼ねしなくていいね。」


 「そうよ。遠慮はいらないわ。」


 皆で、食事を終えた後、レイカの部屋に案内された。これで、夕食後も、迷わずにレイカの部屋に行ける。レイカは、次の講座も出席するようだ。私達は、レイカの部屋の前で分れた。


 私は、思念伝達で、ガーベラに連絡を取った。

 

 「ガーベラ、テラだけど、少し聞きたいことがあるんだ。」


 「何?聞きたいことって。」


 「今日の夕方に、マテーダ王女と夕食を取るのだけど、何か注意しないといけないことってある?」


 「どうして、マテーダ王女と夕食を取ることになったの?マテーダ王女とは、会ったことなかったよね。」


 「はい。今日初めて会うよ。」


 「それじゃ、誰かの紹介で会うことになったのね。」


 「オーガネッチの紹介なの。断れなくて、会うことになってしまったの。」


 「断っておけば、良かったのに。仕方がないね。」


 「だから、これ以上、巻き込まれないようにしたいんだ。」


 「テラ、もう、手遅れよ。」


 「そんなこと言わないでよ。何か、アドバイスは、無いの?」


 「そうね。ひとつだけ、あるよ。それは、何も約束しないこと。何を言われても、考えておくと答えなさいね。」

 

 「はい、わかった。考えておくだね。」


 だんだん、憂鬱になって来た。仕方がないから、魔法学院の自分の部屋に行って、迎えが来るのを待つことにした。


 「いつ来るのか、聞いていたら良かったね。」


 「テラ、寝る?」


 「今からは、少し早いよ。」


 時間があるので、以前考えていた、魔導書の事を考えることにした。


 「ねえ、スピア、魔導書のこと、覚えている?」


 「うん。覚えている。」


 「その時に、『本、消える。でも、残る。』と言ったよね。覚えている?」


 「うん。覚えている。」


 「あれは、どういう意味。」


 「うん。本、本じゃない。」


 「本の様に見えるけど、本ではないということ。」


 「うん。本、本違う。別の物。」


 「そうか、わかった。本に見せているから、スキル鑑定では、分からないのね。」


 私のスキル鑑定のレベルが低いので、知らない物の鑑定に問題がある。特に、生物に対しては、顕著だ。だから、あの本のような生物の鑑定を失敗したのだった。


 スピアは、動物の感で、最初から、本でないことを知っていたというわけね。


 考え事をしていると、時間が過ぎるのが早い。部屋をノックする音で、考え事を中断されてしまった。


 「テラ殿、お迎えに上がりました。」


 「はい、今、行きます。」


 ついに、憂鬱な時間の始まりだ。仕方がない。我慢、我慢だ。

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