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81.会員証のメリット

 私達は、冒険者ギルドに向かった。この街の冒険者ギルドも豪華な建物だ。


 「すみません」


 「はい、何か、御用ですか?」


 「冒険者ギルドに登録したいのですが?」


 「えっ、登録ですか?」


 「はい、そうです」


 「登録して、何をするのですか?」


 「ダンジョンで、魔物を討伐しようと思っています」


 「何か、事情でもあるのでしょうか?相談に乗りましょうか」


 「うん、何の相談ですか?」


 「あの、申し訳ございませんが、金銭的な問題をお持ちでしょうか?」


 「別に、お金に困ってはいませんよ」


 「あの、失礼ですが、この国の会員証はお持ちですか?」


 「はい、持っていますよ。これです」


 「はい、確かに、この国の会員証です」


 「それで、どうして冒険者ギルドに登録するのですか?」


 「何か、おかしいのですか?」


 「この国の会員証で、すべて網羅しているのです。この会員証だけで、他の物はいらないのです」


 「どういうことですか?」


 「だから、先ほどから、申してるように、この国の会員証で、すべての証明になるのです。これひとつで、街の店の会員証でもあり、冒険者ギルドの会員証でもあり、商業ギルドの会員証でもあり、神殿に出入りするための会員証でもあるのです」


 「それでは、後は何もしなくていいということですか」


 「はい、そうです。実は、この国の会員証を取り上げられたのかと思いまして、先ほどは、失礼なことを申しました。誠に、申し訳ございません」


 「いえ、別にいいですよ。私達も今日来たばかりで、この国の事も、この街の事もよく分からないので、色々と教えて貰えるとありがたいです」


 「そうでしたか。私は、冒険者ギルドの受付をしているリリーと言います。今後とも、よろしくお願いします」


 「私の方が、年下なので、もっと、気楽に話してください」


 「はい、わかりました」


 「りりーは、この仕事長いの?」


 「もう、2年になります。たいていの事は、私一人で処理できます」


 「そうだ。この街の近くのダンジョンの事を教えてくれますか?」


 「ダンジョンですか?」


 「何か、変な顔をしてますね。どういうことですか?」


 「この街の人は、ダンジョンに行かないのですよ。危ないから」


 「それでは、冒険者ギルドの仕事は、何ですか?」


 「そこのボードに張っているように、依頼が中心です。魔物の討伐は、まず、ないです」


 私は、依頼用のボードを眺めてみた。確かに、魔物の討伐依頼は張っていない。どちらかというと、派遣社員みたいな仕事だ。これじゃ、冒険者ではなく、事務員ではないか。


 「あぁ、わかりました。それで、お金に困っていると思ったのですね。仕事を探しに来たと思ったのですね」


 「すみません。そう思いました」


 「私、お金には、困っていません。本当ですよ」


 「はい、わかっております。この国の会員証をお持ちで、貧乏な訳がありません。

 普通の人は、年会費金貨100枚など、払える訳がありません」


 「えぇ、会員にならなくても、店で買い物を出来たのですか?」


 「何とも言えませんが。会員でない方の入る店があります。その店は、この国に登録されていないのです。ですから、その店に関して、いかなることがあっても、国は感知しません」


 「なるほど、会員証が保険ということですね」


 「保険って、何ですか?」


 「あぁ、この国にはなかったのですね。何かトラブルがあれば、会員を助けてくれるということです」


 「そうですね。会員の方が困っていれば、兵士が飛んできますよ」


 「それは、安心ですね」


 「そのための、年会費ですから、商店も年会費を払っていますよ」


 「そうなんですか。ここで、聞くことではないのですが、少し、質問してもいいですか?」


 「何でも聞いてください。ここには、基本的に冒険者は来ませんので、仕事がないのですよ」


 「それじゃ、退屈しているの?」


 「そうですね。冒険者ギルド長は、めったにやってこないし、話し相手もいません」


 「それは、寂しいですね」


 「そうなんですよ。それをもう、2年もやっているのですよ」


 「お姉さんみたいに可愛い方が、こんなところで、一人でいるなんて、だめですよ」


 「そうでしょ。でも、結構貰っているので、なかなか、他の仕事にはつけません」


 「給料の事を聞いても、いいですか?」


 「いいですよ。月に金貨50枚、貰っていますよ」


 「それなら、十分ですね」


 「そうでしょ。だから、やめれないのよ」


 「ところで、この国が輸出している物って、何ですか?」


 「そうね。直ぐに思い浮かぶのは、金・銀ね。でも、これって、支払いに使っているだけみたい。輸出とは、言いにくいね」


 「それ以外に何があるのですか?どうも、農業も、漁業も、林業も、工業もやっていないようですけど」


 「その通りよ。この国には、普通の産業がないの」


 「それでは、何を売っているのですか?」


 「うーん、何だったかな。何か、井戸みたいなものが、立っているの」


 「井戸ですか」


 「いいえ、井戸ではないのよ。井戸みたいなものよ」


 「よく、分からない。場所を教えて貰っていいですか?」


 「誰も、入れないわよ。ここから、北に行ったところだけど、兵隊が守っているよ」


 「そうですか、厳重ですね」


 「そうね。金より、大切なものみたいよ」


 「リリー、ありがとう。また、来ます」


 「いつでも、歓迎よ」

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― 新着の感想 ―
[一言] 話の流れから大衆食堂に入ったように見えたためおかしく感じていました 貴族向けのお店なら平民の月収=1食分で特に違和感はなくちょっと贅沢を下の範疇に収まっていると思います
[気になる点] 食事1回に金貨150枚使う街で月収金貨50枚で十分と思える感覚が意味不明です
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