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79.テラの探検

 アストーリア大陸への定期便は、1日に1便出している。現在、船も4隻になっている。これも、シロッコス船長のおかげだ。後継者をしっかりと育ててくれている。それと、船の改善点を明確に指摘してくれる。


 今は、まだ、料金をとっていない。というのも、主な目的が移住だからだ。多くの人に移住して貰いたいので、無料にしている。


 「スピア、久しぶりに、アストーリア大陸へ、冒険に行かない?」


 「テラ、行くよ。冒険、好き。」


 「よし、今日の便に乗っていこうか。」


 「うん。いいよ。」


 私達、2人は、アストーリア大陸への船の旅に出かけた。これまでは、船の操縦や改良点を考えるとか、ゆっくりと景色を見ることもなかった。


 「海って、広いね。おっ、大きな魚がいる。」


 「テラ、クジラ、大きい。」


 「そうか、すごいな。この船ぐらいあるね。」


 「氷が見えて来たよ。」


 「テラ、寒い。」


 「そうか、部屋の窓で見ようか。」


 私達は、部屋に戻って、少し温まった。部屋の窓からでは、横の海しか見えない。ここにも、前方が見えるといいな。甲板では、寒い。部屋の装備や、広さも変えて、VIP用も作る必要があるかもね。


 「船が、氷を割っているよ。凄い音だね。」


 「音、響くね。」


 「そうか、客の部屋の中では、こんなに音が聞こえるのか。これも、改善しないといけない。」


 違った立場だと、見える物違っていた。船長として見たり、船の技術者として見たり、客として見たり、すべて、同じ物が違って見えた。


 「これまで、私は、本当は、何も見て居なかったかもしれないな。」


 「テラ、何、言っているの。」


 「落ち着いたら、スピアと今回みたいに、ゆっくりと旅行したいなって、言ったの。」


 「うん、いいね。テラ、いつも同じ、変わらない。」


 「ほんとだ、私、何時から、変わっていない。」


 「テラ、長生き。変わらない。」


 「ありがとう。忘れていたよ。どうしよう。急に変わるとおかしいね。」


 「テラ、旅行行こう。」


 「スピアの言うとおりね。旅行の間、知り合いに会わなければ、いいよね。」


 この旅が終わったら、長期に渡って、旅行をすることにした。その間に、次の身体を用意しよう。


 「もうすぐ、アストーリア大陸のキャメール村に着きます。下船の用意をしてください。」


 船長の声が聞こえて来た。周りの部屋も、ばたばたと忙しそうだ。私達は、手ぶらなので、何の用意もいらない。


 「それじゃ、行こうか。」


 「うん、行く。」


 最初に、キャメール村を見に行った。今回が、初めてだったので、色々と意外だった。まず、家が氷で作られている。氷の部屋は、動物の皮で覆われていた。これで、寝れるのだろうか?とても不思議だ。


 「色んな物が売っているね。」


 「うん、あれ、食べたい。」


 「いいよ。食べよう。」


 あまり見かけない魚や動物の肉を料理した物が売られていた。


 「おいしいね。」


 「テラ、これ、美味しい。スピア、気に入った。」


 スピアは、肉が気に入ったようだ。いつも食べている肉より、油が多いようだ。噛むと肉汁が溢れ出る。いつもは、赤身の肉で、しっかり、噛まないといけないが、この肉は、溶けるようだ。


 「魚もおいしいよ。」


 「魚、熱い。スピア、だめ。」


 「あっ、そうだった。魚は、スープになっていたね。」


 私は、風魔法で、スープを少し冷やしてあげた。


 「これでいいかな。少し、冷やしたよ。」


 「ありがとう。テラ。」


 スピアは、スープも飲み干した。スープも気に入ったようだ。


 私達は、キャメール村で、雪車を借りて、探検に出発した。特に目的もないので、周りを確認しながら、ゆっくりと移動した。


 「そうだ、南の港に行ってみよう。」


 「うん。いいよ。」


 私達は、ミーヤ国の港がある南に向かうことにした。港の近くまで、一気に移動した。そこで、雪車を隠して、隠密魔法で、姿を消した。


 港の船が停泊している所に近づいて行った。


 「おい、早く積み込め。グズグズするな。」

 

 「「はい。」」


 リザードマンの男達が大きな荷物を運んでいた。箱の中には、魚や肉などが入っているようだ。凍らせているので、重くなっているようだ。それとは、別に革を運んでいる。


 「噂を聞いたか?」


 「どんな噂だ?」


 「ただで、仕事を貰えるって、噂だよ。」


 「どういう意味だ?」


 「俺たちは、今、ミーヤ国に行くために働いているだろう。」


 「そうだ。船に乗せて貰うためだからな。」


 「そうだ。船に乗る料金分を働いているってわけだ。」


 「仕方ないだろう。これまで、何人もの仲間が、この方法で、ミーヤ国に渡っていったんだから。」


 「そこなんだ。働かないで、船に乗れるって、話さ。」


 「そんな美味しい話があるか?」


 「それって、騙されているんじゃないか。何か、裏があるんじゃないか。」


 「それが、ただで、乗って帰ってきているって、話さ。」


 「ただで、乗ったやつがいるのか。」


 「そうだ、それも一人や二人じゃないんだ。」


 「本当か?それ、何処の村のやつらだ。」


 「キャメール村だよ。」


 「おまえ、それ、騙されているよ。最近、あんな田舎から、この港に来たやつはいないよ。」


 「そうだよ。最近、何故か、キャメール村の奴らは、ここに来ていない。でも、船に乗ったって噂だよ。」


 「ここ以外に船があるのか。俺は、見たことがないぞ。」


 「この船は、まだ、出航しないから、一緒に見に行かないか?」


 「いいぜ、夕方の食事後で、どうだ。」


 「わかった。用意しておくよ。」


 どうも、キャメール村の事が話題になっているようだ。ミーヤ国では、荷役の仕事をさせる代わりに船に乗せているようだ。この大陸では、仕事がないのかもしれない。魚や動物を狩るだけでは、暮らせないのかもしれない。安く、買いたたかれているのだろう。


 ミーヤ国の船は、何隻もあった。すでに、荷物の積み込みが終わっている船もある。出航直前の船もある。見渡す限り、船だらけだ。20隻以上は、あるようだ。


 私達は、南の港を離れて、北に向かった。この大陸の中心に行ってみることにした。

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