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69.開港に向けて

 私達は、ミーヤ国の都市イキシで、港湾の経営について、研究するために、出店を1軒ずつ食べ歩いていた。本当に、食べ続けていた。


 「おい、テラ、この店を素通りするのか?」


 「今日は、もう、肉は十分だよ。ねえ、スピア?」


 「肉、まだ、食べる。」


 「ホラ、相棒が食べるって言ってるよ。食べて行きな。」


 「わかったよ。食べるよ。2本くれる?」


 「ほいよ。1本、お負けしとくよ。」


 「ありがとう。スピア、2本食べる?」


 「うん。2本、食べる。」


 スピアは、両手に串焼きを持って、嬉しそうだ。


 「テラ、こっちも、寄っていきなよ。」


 「また、明日ね。」


 「今日の魚は、特別なんだよ。明日あるとは、限らないよ。」


 「本当?」


 「テラに、嘘を言わないよ。だから、食べて行きな。それとも、持って帰るかい。」


 「持って帰るよ。今は、お腹一杯だから。」


 「ほら、包んであげたよ。」


 「ありがとう。この変わった魚は、何処の国の物なの?」


 「アストーリア大陸から、運ばれてきた魚だよ。大型船で、1週間かかるらしい。

 俺も、行ったことはない。」


 「そうなんだ。アストーリア大陸か。行ってみたいな。」


 「暇なら、行ってきな。それで、俺に、大陸の様子を話してくれ。」


 「そうね。行って来たら、いっぱい、話してあげるよ。」


 私達は、食後の運動がてら、港の方に歩いて行った。港に近づくにつれて、周りが倉庫だらけになって来た。倉庫の周りは、あまり、人が居ないみたい。ようやく、潮の匂いが漂ってきた。もうすぐ、海だ。


 港には、大きな船に、ほとんど、荷物を積めない様な小さな船まで、色んな種類の船があった。


 船の周りには、多くの人が荷物の積み下ろしをしていた。これは、相当な重労働だ。大きな男たちが汗を流しながら、荷物を運んでいた。


 港は、ヤガータ国の都市デンロンにあった入江とは、全く異なっていた。私は、船が止めやすいように、海岸を垂直にして、岸壁に様にしたが、曲線のままだった。それに対して、ここの岸壁は、櫛の様になっていて、より多くの船が停泊できるように、工夫されていた。


 それと、この櫛状の岸壁に行く途中に、門があり、そこで、荷物や人のチェックをしているようだ。係員が、書類を片手に確認をしている。どうも、冒険者IDでも、商業IDでもない、別のIDを使っているようだった。


 「スピア、見ているだけでは、よく分からないね。」


 「うん。中に入る?」


 「そうだね。中に入ろうか?」


 私達は、隠密魔法で、姿を消した。随分前から、この魔法は匂い消しも同時に行うようにしてある。


 私は、思念伝達で、スピアに連絡を取った。


 「スピア、私を負んぶしてね。」


 「うん。いいよ。」


 「この方が、動きやすいでしょ。」


 「うん。どこでも行けるよ。」


 私達は、荷物の積み下ろしをしていた男たちの近くに行った。今は、休憩時間のようだ。飲み物を飲みながら、談笑している。


 「俺は、今日は、この仕事で、上りだ。」


 「おぉ、いいな。一杯、やれるな。」


 「働いた後の酒は、格別だな。」


 「おまえ、ここ、長いんだろう。」


 「そうだな。そろそろ10年になるかな。あっという間だった。」


 「そうか、でも、お前ほど働いても、上の役には、付けないって、どういうことだ。」


 「仕方ないよ。役職は、最初から、決まっているからな。俺たちは、一生、今のままだ。」


 「いずれ、歳を取り働けなくなるぞ。それに、俺は、怪我が心配だ。ここで、怪我をしても、誰も相手をしてくらない。それどころか、放り出される。」


 「本当に、そうだな。ここでのケガや病気は、命とりだな。」


 「お前達は、まだ、若いから、別の仕事を考えた方がいいんじゃないか。」


 「俺たちも好きで、ここにいるんじゃないよ。俺は、字も読めないんだ。今から、勉強なんて、無理に決まっているさ。」


 私達は、荷下ろしの仕事をしている男達から離れて、書類を持っていた係員の近くに行った。


 ここも、今は、休憩時間の様だ。ここでも、何か食べながら、話をしている。


 「今日も、忙しいな。」


 「荷物が多すぎるんだよ。それに、最近、密輸があるって、俺たちを疑っている。」


 「おい、最近兵士が増えたと思わないか?」


 「そういえば、増えたようだな。どこを見ても、兵士がたっているよな。」

 

 「あれって、なんだ?」


 「どうも、アストーリア大陸からの密入国者がいるようだ。」


 「なぜ、密入国なんてするんだ?」


 「そりゃ、アストーリアでの暮らしが大変だからだよ。あいつらは、奴隷みたいな扱いを受けているらしい。」


 「あいつら、リザードマンだろ。どこも、雇ってくれないぜ。」


 「そうだな。あの見た目で、皆怖がっているからな。」


 「それじゃ、密入国しても、だめじゃないか。生活出来やしない。」


 「いや、そうでもないんだ。傭兵として、雇っている国があるらしい。」


 「それって、ソーロン帝国か?」


 「おい、バカなことを言うな。誰が、聞いているか、分からないぞ。俺は、お前の巻き添えはごめんだからな。」


 「俺も、いやだよ。あの国の名前を出すな。」


 「この国も関係しているって、噂だぜ。」


 「そうだろうな。ここらで、船をもっているのは、このミーヤ国ぐらいだからな。」


 「そうだな。船がなければ、大陸とは、貿易が出来ないからな。あの国も、まだ、持っていないしな。」


 「船を作るって、そんなに難しいのか?」


 「さあ、海に浮くだけなら、俺だった、小さな船ぐらい作れる。でも、アストーリア大陸に行くには、海に浮くだけだは駄目なようだ。」


 「へぇ、そんな話、初めてだよ。」


 「船を作ってたって男から聞いたんだよ。その内容は秘密で、話すと殺されるってさ。」


 私達は、商業ギルドに向かった。この国に支店を作るためだ。でも、食べ過ぎで、眠いから、宿屋にもどって、寝てしまった。仕事は、また、明日だ。

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