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64.ヤガータ国へ

 私は、以前行ったフラン連合国について、ある噂を聞いた。それは、連合国の中で、一番貧しく、特別な特産品もないヤガータ国についてだ。どうも、ヤガータ国は、借金だらけで、国王は国を捨てて逃げるのじゃないかって、信じられないような噂だ。


 しかも、この噂は、どうも、ヤガータ国の国王自ら広めているって、噂まで、流れている。


 私は、俄かには、信じられないが、面白そうなので、行ってみることにした。ヤガータ国は、フラン連合国の中でも、辺鄙な所にある国で、最も東北の位置にある。面積も、街一つだけのとても小さな国だ。その唯一の街の名は、都市デンロンだ。


 私は、転移魔法で、イーデン王国の都市ロンデンに移動した。

 

 そこから、フークシ国の都市モカオリを経由して、 ミーヤ国の都市イキシに入り、北に行った所にあるヤガータ国の都市デンロンに入れる。


 今回は、ロンデンの街には、用事がないので、そのまま、フークシ国に入った。この国は、工業が発展している国で、都市モカオリは、工場が立ち並んでいる。


 工場での生産には興味があるが、今は、ヤガータ国へ行きたいので、素通りすることにした。


 次は、ミーヤ国だが、ここは、大きな港があり、貿易船が行き来している。船に乗り、他の大陸に行ったり、他の国の港との交易が盛んに行われている。他の大陸の話など、非常に興味があるが、今は、我慢だ。


 私は、やっと、ヤガータ国に入国した。この国は、特に目立った産業もなく、観光場所も目立たない、何もない国だ。街も、デンロンという名ばかりの街しかない。


 本当に、これが街か、と疑いたくなるような街で、村と呼んだ方がぴったりする。


 私は、無駄と思いつつ、商業ギルドに向かった。商業ギルドは、小さな建物で、普通の民家と間違いそうな外観だった。


 「すみません。誰か、居ませんか?」


 商業ギルドの建物の中に入ったが、誰もいない。小さなカウンターがあるだけだ。客も店員も、誰もいない。


 私は、もう一度大きな声で、叫んだ。


 「誰か、居ませんか。」


 「おぉ、少し、待ってくれんかのぉ。」


 奥の方から、老人の声がした。ゆっくりと、歩いてくるようだ。


 「これは、これは、珍しい。お主は、客か?」


 「お爺さん、他に誰か、居ませんか?」


 私は、また、大きな声で、叫んだ。


 「わしだけじゃよ。何か、用か?」


 「この街で、店を開きたいの。」


 「止めとけ、この国は、もうすぐ、無くなる。」


 「国が潰れる事ってあるの?」


 「そりゃ、あるよ。借金が返せなくなったらな。」


 「なぜ、国王は借金したの?」


 「仕方がなかったんだ。国民を救うためにはな。」


 「何があったの?」


 「お主は、暇なのか?」


 「はい、暇です。」


 「そうか、なら、ゆっくりと、話そうかな。」


 お爺さんは、商業ギルドと冒険者ギルドの両方のギルド長で、唯一の商人兼冒険者だ、と本人が言っている。でも、かなり、痴呆が入っているので、本当かどうか、わからない。


 でも、ギルド長って言うことは本当みたいだ。IDを見せて貰ったので、多分、大丈夫だ。


 お爺さんの話では、この国は災害に見舞われ、国民の大半が生活苦に陥ったらしい。


 そこで、国王が、他国から、多額の借金をして、食べ物や生活必需品を買って、国民に無償で配ったそうだ。その後、国民が頑張って、国を立て直して貰えると思っていたが、国民の大半が他国に移住してしまった。そのため、借金だけが残ってしまったそうだ。しかも、国民は、その後も減る一方で、国の再建どころでは、無くなってしまった。


 現在は、国民が約2万人にまで、減ってしまったらしい。その国民も、いつ他国に移住するかわからないそうだ。


 私は、王宮に行って、話を聞くことにした。王宮への門の前には、兵士も、誰もいなかった。


 勝手に中に入れる状態だった。そこで、私も、何も気にせずに中に入っていった。


 暫く、歩いていると、謁見の間があった。中に入ると、王座に誰か、座っていた。


 「すみません。少し、話をしてもいいですか?」


 「もっと、近くに寄れ。聞こえにくい。」


 「はい、ただいま。

 これで、いいですか?」


 「あぁ、いいよ。それで、どのような話だね。」


 「王様ですか?」


 「そうだよ。私が、王のウェーリィだ。」


 「これは、お初にお目にかかります。私は、商人のテラと言います。」


 「そうか、テラか。どこから来たのだ。」


 「私は、ヘノイ王国の商業都市ブューラナからやってきました。」


 「ほう、遠路はるばる、ここまで、来たのだな。」


 「はい、ヤガータ国が困っていると聞いて、やってきました。」


 「確かに、ヤガータ国は、困っている。」


 「どれほど、困っているのですか?」


 「そうじゃな、この国を捨てて、逃げたいほどじゃ。」


 「国王が逃げるとどうなるのですか?この国は。」


 「さて、わしにも分からん。どうなるのかな?」


 「どうすれは、逃げずに済むのですか?」


 「まあ、無理な話だが、借金を返せたら、逃げずにすむかな?」


 「どこに、どれほどの、借金を作ったのですか。それから、支払期限は、何時ですか?」


 「やけに、詳しく聞くな。まあ、話のついでか。話してやろう。」


 ウェーリィ王の話では、元々は、この国には、10万人もの国民が居たそうだ。それが、今は、老人や子供が中心で、2万人にまで、減ってしまったそうだ。


 借金は、災害の時に他国から借りたそうだが、国民1人が半年暮らせるだけの金額をフラン連合国

の6つの国から、借りたそうだ。1人が1月生活するのに、金貨10枚あれば、ギリギリ生活できる。

 

 したがって、金貨10枚×6×10万人=金貨600万枚借りたことになる。しかし、金利が月10%と高利のため、今では、金貨約1億枚の借金になってしまったらしい。


 いくつかの国は、もう暫く待ってくれると言っているが、ミヤーコ王国だけが、待てないと言っているらしい。来月には、全額返納するように通達を送って来たという。


 ミヤーコ王国は、金貨300万枚と、もっとも、多額の金貨を融通して 貰っている。従って、約5000万枚の金貨を来月までに返納しなければならない。


 もし、返せなかったら、国ごとミヤーコ王国の属国となってしまう。国民は、すべて、奴隷となるという。


 私は、今、いくら持っているのか分からないので、思念伝達で、リンダに聞いてみた。


 「テラです。リンダに聞きたいことがあるんだけど、今、いい?」


 「はい、リンダです。テラ、どんなこと?」


 「今すぐに、使える金貨って、何枚あるの?」


 「今すぐですか。それなら、金貨1億枚ぐらいですね。もう少し、時間があれば、もっと使えますよ。」


 「ありがとう。取り敢えず、その金貨1億枚を用意しておいてくれる。」


 「はい、わかりました。明日、テラの商業IDに入れておきます。」


 「ありがとう。また、連絡します。」


 私は、ウェーリィ王に、お金を用立てできると伝えた。


 「テラよ。本当に良いのじゃな。」


 「はい、いいですよ。ミヤーコ王国に、全額返納すると、伝えてください。」


 「感謝する。早速、伝えるよ。」


 私は、暫く王宮に寝泊りすることになった。お陰で、ウェーリィ王の話し相手を数日する羽目になった。

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