60.農園からの反逆
私達は、農園に着いた。直ぐに、隠密魔法を起動して、姿を消した。
軍服を着た男たちが、話し始めた。
「お前達、準備は、出来ているか?」
「はい、出来ています。いつでも、出発できます」
農家の代表らしい男が、返事をした。
「よし、それでは行くぞ」
「おい、待ってくれよ。武器はどうした?」
「武器無しで、戦えというのか」
農家の男たちは、口々に不平を言い出した。本当は、行きたくないのだろう。出来る限り、ケチをつけている。
「それは、現場で配布する。ここには、持ってきていない」
「そんなこと、信用できるか。俺たちをだましたのか?」
「騙した。よく、そんな事が言えたな。俺たちが来なければ、死ぬだけだぞ」
「ここには、こんなに穀物があるというのに」
「おい、リーダー、何とか、ならないのか?」
「おい、皆、これまで、何度も話し合ったじゃないか。今更、ぶり返すのか?」
「私が、買ってあげようか?」
私は、隠密魔法を解除して、皆に声を掛けた。
「今のは、誰だ」
「私だよ。その穀物は、いくらするの?」
「何をしゃしゃり出ているんだ。子供は、帰って寝ろ」
「おー、子供と言ったか。誰だ、出てこい」
「俺だ、何が悪い」
「土壁」
「これでも、子供というか?」
声を上げた男は、土の壁に囲まれて、見えなくなってしまった。
「もう一度言うよ。その穀物はいくらするの?」
「金貨200万枚だ。そんな大金持っていないだろう」
「持っているよ。商業IDは、持ってる?今、ここで、支払うよ」
「おい、嘘じゃないよな。本当に買ってくれるのか?金貨だぞ、200万枚だぞ」
「大丈夫だよ。それじゃ、商業IDを貸してくれる?」
農家のリーダー格が商業IDをテラに渡した。テラは、それに、自分の商業IDを接触させて、金貨200万枚を移動した。
「確認してくれる?」
「本当だ、金貨200万枚が入っているぞ」
「おい、俺にも見せろ」
「俺にも、確認させろ」
周りの農家の男たちが、リーダー格の男を取り囲んで、声を掛けていた。
私達は、倉庫に入っていた穀物をすべて、工房の倉庫に転移魔法で移動した。
「さて、これで、反乱はしなくてよくなったね」
私は、リーダーに声を掛けた。
「ありがとうございます。これで、今年一年食べていけます」
「良かったら、来年も買ってあげようか?」
「本当ですか。私達から、買ってくれるんですか」
「本気よ。買うよ」
「是非とも、お願いします。私は、オースネと言います。今後とも、よろしくお願いいたします」
「一つ聞いてもいい?」
「はい、何でしょうか?」
「そこの軍服の男達は、もう必要ないよね」
「はい、もう必要ないです」
「それじゃ、私達が連れて行っても、問題ないわね」
「はい、問題ないです。というか、却って、連れて行って欲しいです」
「はい、わかりました。スピア、そこの軍服の男たちをここに集めて来て」
「うん。集めるよ」
スピアは、一瞬の内に、軍服の男たちを小突いて、気絶させて、連れて来た。
私は、土魔法で、腰から下を固めて、動けなくした。それから、スピアに倉庫の裏手に運んでもらってから、転移魔法で、洞窟まで移動した。
「戻って来たよ。少しは、話す気になった?」
私は、洞窟の5人の前に、土魔法で、動けなくなった軍服の男たちを置いた。
「この人たちが、農家の人を扇動して、反逆を起こそうとしていたの」
私は、軍服の男たちに水魔法で、冷たい水を浴びせかけた。すると、余りの冷たさに起きたみたいだ。
「さてと、これで、大体揃ったね。まずは、軍服の男たちに話して貰おうかな」
わたしは、土魔法で、軍服の男たちの中から、一人だけ離れた場所に移動させた。
「さて、あなた、何故移動したか、分かるかな?」
「そんなこと、知るか?」
「よく考えてから、話してね。私、短期なの」
「あなたに指示している人は誰?」
「そんなこと、言えるか」
「もう、私、短気だって言ったでしょ。火球」
移動された男は、炎に包まれていた。
「熱い、助けてくれ」
暫くして、声がやんだ。実は、私は、結界を事前に張っており、炎では、死なないようにしていた。暑さは、多少感じる様にしていたが。
「さあ、次は誰にしようかなぁ。そこのあなた、今、目を逸らしたでしょ。分かるんだからね」
次の一人を先ほどと同じように別の場所に移動した。
「さて、あなたに指示した人は誰?」
「そこの右端の男だ」
「はい、結構。そこで、待っていなさい」
私は、右端の男を移動させた。
「それでは、あなたに指示した人は誰?」
その男は、何もしゃべらない。
「結構よ。死んでね。火球」
今度は、結界無しだ。本当に燃やしてやった。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ、助けてくれ」
「遅いよ。別に私は、聞かなくてもいいんだから」
その男は、燃え続けていた。それを無視して、5人の洞窟に居た人たちに声を掛けた。
「メルーロだったかな。そろそろ、話をする?」
「俺は、何もしゃべらない。死んでも構わない」
「まあ、いいわ。あなたを殺すのは、私じゃないから」
「どういうことだ」
「どうも、こうも、ないよ。あなた達は、最初から、軍に連れて行くつもりだから。ここで話そうが、どうしようが、私には、興味がないの」
「軍だって、テラ、お前は、軍の依頼で、来たのか」
「そうよ、だから、元軍人かって、聞いたのよ。まあ、聞かなくても、私には、分かっていたけどね」
「それじゃ、何故、聞いていたのだ。聞くだけ、無駄だろう」
「そうでもないのね。面白い事がしたいだけなの。だから、軍の依頼でも、関係ないの。単に、面白そうだったから、ここまで、来ただけなの。でも、ダンマリは面白くないよね。だから、もう終わりよ」
「おい、待て、テラ、今から、面白い話をするから」
「もういいの。飽きちゃたから」
「なあ、テラ、軍に連れて行くのは、待ってくれ」
「もう、遅いのよ。話をするのも面倒だわ。スピア、黙らせてくれる」
「うん。黙らす」
スピアは、素早く5人の男達を眠らせた。
私は、洞窟の男たちを一人ずつ別の箱の中に閉じ込めた。一応、呼吸ができるようにしているが、外の音は聞こえないようにした。
それから、軍服の男達をリーダー格の男を覗いて、一カ所に集めて、一つの大きな箱の中に閉じ込めた。リーダー格の男は、1人別に閉じ込めた。
誰も、外の音や、外の様子が見えないようにしてから、転移魔法で基地まで移動した。