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6.賢者の道 【世界地図付き】

挿絵(By みてみん)


 ついに、賢者サビオの魂を地下牢から出すことが出来た。


 賢者サビオは、新しい身体を土魔法で創った。一見すると、12才の少年のようだ。

 出来栄えは、私とは比べ物にならない。細部にわたって、本当の人間のようだ。

 次に、賢者サビオは、闇魔法を使って、土人形ゴーレム全体をバリアで囲み、敵からの攻撃に対処できるように、結界を張った。また、触られたときに違和感がないように、結界の上から、スライムを薄く伸ばしたような物を作り、身体全体を覆っていった。最後に、魔法陣で刻印をして、この新しい、少年の身体に入り込んだ。


 「よし、これで完成だ」


 賢者サビオは、本当の少年のように、喜び、走り回った。


 暫くすると、今の身体を確認するかのように、飛び跳ねる、転がる、ダッシュ、宙返り、・・・。


 またもや、私は、賢者サビオが納得するまで、数時間待たされてしまった。まあ、1000年ぶりだからね。仕方ないか。


 ようやく、落ち着いたのか、賢者サビオは、私の所にやって来た。

 

 「待たせたな。望みを言ってみろ。出来ることなら、何でも望みは叶える」


 「これも、何かの縁です。この世界で生きてみたいです」


 「誰かの身体に転生するか?」


 私は、賢者サビオに聞かれて、考えてしまった。元の世界では、私は、死んでいる。もともと、この世界での生はない。それなのに、誰かの生を奪うような転生は、嫌だな。でも、消えてなくなるのも、嫌だな。


 「賢者サビオのようになりたいです」


 「なんと、私の様になりたいと。だが、私はバカだよ。簡単に騙されて、1000年もの間地下牢に閉じ込められた。そんな、大馬鹿だよ。いいのか?」


 「えぇっ、バカになりたいって言っていませんよ」


 「私の様になりたいと、言ったではないか。わしの聞き間違いか?」


 「確かに、「賢者サビオのようになりたいです」と言いましたよ。でも、それは、バカになりたいということではないのです。賢者になりたいだけです」


 「そうか、賢者になりたいか。でも、大変じゃよ」


 「頑張ります」


 「賢者は、貴様自身の努力でなるものだ。わしが与えるものではない。しかし、貴様が賢者に成れる様に導くことはできる。なにせ、わし自身が賢者だからな。わしのように、生きていけばいいだけだ」


 「はい、お願いいたします。指導してください」


 「それで、身体は、どうする。誰かの身体を奪うか?」


 「いいえ、それは嫌です。賢者サビオのような身体が欲しいです」


 「なんと、わしの身体が欲しいと、うーん。どうしようかぁ」


 「賢者サビオ、何を考えているのですか?何か、違うような・・・」


 「わしの身体が欲しいのじゃないのか?貴様になら、あげてもいいが」


 「賢者サビオのような精巧な本当の人間のような身体が欲しいのです。決して、今の賢者サビオの身体そのものではありません。新しく、作って欲しいのです」


 「何じゃ、そんなことか、いいぞ、すぐに始めよう」


 私は、色々と賢者サビオに要望を出して、10才ぐらいの人間族の少女の身体を作ってもらった。


 「これで、どうじゃ」


 「目は、ブルーにしてください。それから、髪の毛はちょっとウェーブを掛けて、シルバーがいいです」


 「注文が多いな。よし、よし、何でも聞いてやろう」


 ついに、完成した。私が、異世界で憧れていた少女の身体だ。フィギュアを作っているようで、本当に楽しい。


 「ありがとうございました」


 「希望通りになったかな。それで、これからどうする?」


 「賢者サビオは、どうするのですか?」


 「わしか?わしは、この新しい世界を見て回るつもりだよ。1000年も経ったので、全くの異世界じゃよ。思念伝達はいつでもできるぞ。困ったら、いつでも、頼れ」


 「分かりました。私は、賢者に成れるように、努力していきたいです」


 「そうか、達者でな。いつでも、頼れよ」


 「はい、ありがとうございました」


 「いいや、こちらこそ、ありがとう」


 私は、賢者サビオと別れて、賢者の道を歩むことにした。


★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


 まず、名前を決めないといけないね。そうだ、「テラ ハツネ」にしよう。せっかく作った工房なので、利用することにした。転移魔法で、地下牢の前に移動した。

 

 近くに転がっていた親指大の土人形ゴーレムに乗り移って、地下牢の中に入った。そして、床に転移魔法用の魔法陣を描いた。また、魔法陣を闇魔法のバリアで隠しておいた。

 

 作業を終えた私は、廊下に出てから、賢者サビオに貰った身体に移った。


 地下牢は、誰かに見られても困るので、土魔法で金属の壁を塞いだ。更に、闇魔法のバリアで、結界を張った。これで、少しは、見つかり難いだろう。


 更に、私は、工房の中にも転移魔法用の魔法陣を描き、工房の出入口も地下牢と同じように塞いだ。

 

 転移魔法で、廊下に出た私は、階段を上がり、地下牢と工房の間の廊下を土魔法で埋めつくした。

 更に、階段の部分も見つかり難いように、土魔法で整備した。


 階段以外は、一面薬草が生えている。何かの役に立つかも知れないので、すべて刈り取って、アイテムボックスの中に入れておいた。


 さて、これから、この異世界での冒険開始だ。取り敢えず、ステータスを確認しておこう。


【ステータス】


 種族:土人形ゴーレム

 職業:無職

 LVレベル:35

 HP(最大体力量):2000

 MP(最大魔力量):5000

 魔法:土魔法(LV16)、火魔法(LV10)、水魔法(LV12)、風魔法(LV10)、

    光魔法(LV13)、陰魔法(LV14)

 スキル:採取(LV14)、鑑定(LV15)、思念伝達(LV15)、探索(LV12)、格闘(LV12)、

     弓(LV30)

    :毒耐性(LV10)

 称号:小鬼英雄殺し


 「あぁ、失敗だ」


 私は、思わず、声を出してしまった。金貨はどこだ!前のIDに入れたままで、現金としては持っていなかった。

 

 「えぇっと、どこで、前の身体を捨てたんだった?ボケてんのか、俺は?私は?」


 何が、何かわからない。落ち着いて思い出そう。


 賢者サビオが、地下牢から抜け出して、今の私の身体を創った。すると、地上で新しい身体に入れ替わったわけだ。あれ?何か変だな。


 (慌てない、慌てない、ここは、少しスクロールさせればいいだけだ。内緒だよ。)


 思いだした!地下牢の前の廊下で、入れ替わったんだ。私は、せっかく作った階段のカモフラージュを取り除き、せっかく埋めた土を取り除き、地下牢の前の廊下を元に戻した。

 

 「あった!やった!」


 急いで、前の身体を抱えると、すぐに転移魔法で、工房の中に移動した。前の身体を工房の中に置き、地下牢の前の廊下と階段に、前と同じ処置をした。階段のカモフラージュも確認してから、工房の中に転移魔法で、移動した。


 私は、前の身体を抱えて、工房の隣の部屋に行き、ガラスのケースを2つ造った。縦1m×横1m×高さ2mのケースだ。


 以前の身体の汚れを取り除き、1つのケースの中に入れた。もう一つのケースの中に入ってから、私は、今の身体から、以前の身体へと魂を定着させた。


 もう一度、ステータスを確認したが、変化はなかった。ステータスは、当然だが、土人形ゴーレムの身体には影響しない。ステータスは、魂と連動していることが分かった。


 私は、以前の身体になっていることと、冒険者IDを持っていることを確認してから、転移魔法で冒険者ギルドの裏手に移動した。


 冒険者ギルドに入ると、空いている受付に向かった。


 「すみません。お願いします」


 大きな声で、受付の女性に声を掛けた。彼女は、リンダで、猫耳族の女性だった。


 「はい、お待たせ」


 「金貨を引き出したい」


 「それでは、冒険者IDを出してください」


 私は、冒険者IDをリンダに渡した。


 リンダは、渡された冒険者IDを暫く見てから、私に言った。


 「いくら出しますか?金貨で、213枚あります」


 「すべて、出します」


 「わかりました」


 リンダは、私の冒険者IDを持って、奥の部屋へ入っていった。暫くしてから、袋を持ったリンダが現れた。


 「はい、金貨213枚になります」


 「ありがとう」


 金貨の入った袋と、冒険者IDを持って、急いで、冒険者ギルドを後にした。人目を避けて、転移魔法で工房の中に移動した。

 あいているガラスのケースの中に入ると、隣の賢者サビオに作ってもらった土人形ゴーレムに移った。


 「やれやれ。これで、やっと新しい人生のスタートがきれる」


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